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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
反乱のエルフ

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アサシンとソードマン

「何だこの揺れは!?」

 俺達が神殿近くに辿り着くと、

 エルフの里が揺れ出した。

 地震にすれば震度6位の強さだ。

「キャアアアア!」

 悲鳴が後ろからして振り返ると、

 エルフの女性の体が光の粒になり、

 神殿に吸い込まれていった。

 そこから阿鼻叫喚の絵図が広がる。

 次々とエルフの人たちが光の粒になって

 神殿に吸収されていく。

「皆急ぐぞ!この感じならまだ間に合うかもしれない!」

「おう!」

 俺達は神殿へ走り出す。


「やっと来た。おそーい」

 俺達を神殿の中に入れまいと、

 立ちはだかる者が居た。

 明らかにそれはこの世界の人間の服装では無かった。

 俺が元居た世界の学生の恰好のようだ。

「アンタが英雄とか言われて調子に乗ってるオッサン?マジキモいんだけど」

 ケラケラと笑うその少女に、俺は以前なら立ち去っていたが、

 今はそれどころでは無い。

「なら良かった。俺もお前が気持ち悪い。お互い意見が一致した所で、そこをどいてもらおうか」

「んなワケないっしょ?アンタと私とじゃ格が違うわよ。アタシはマトモでオッサンは人生終わってるじゃん?それに言われてどくわけないっしょ?」

「二度言わすな。どけ」

「どかしてみなよ。キモいオッサン」

 少女は何処からか柄と刃の長い鎌を取りだした。

「これ良いっしょ?こいつでさぁ、間抜け面した奴らの首をスパッとやると、気分爽快な訳よ。オッサンキモいから気分爽快にはならなそうだけど、まぁ血が見れるなら仕方ないよね?」

「お前と解り合おうとは思わない。皆、先に行ってくれ。コイツは俺が引き留める」

 俺は黒隕剣と黒刻剣ダークルーンソードを引き抜く。

「馬っ鹿じゃないの?誰も行かせないに決まってるじゃん?」

「悪いがお前の相手は俺だ」

 避けて通ろうとするダンディスさん達に襲いかかる少女を、

 俺が2振りの剣で受けとめる。

「マジキモ」

「それは良かった」


 皆が通り過ぎて行くなかで、ファニーが俺の横に居る。

「ファニー早く」

「……悪いがそれは聞けん」

「キモーい!何何?アンタこのオッサンが好きな訳?マジキモいんですけど!ウケるー!」

 鎌で俺を振り払い、腹を押さえて笑う少女。

 それはさておき俺はファニーの顔を見る。

「ファニー」

 俺は窘めるように言うが、

 首を横に振って頑として動こうとしない。

「ただでさえ気分が悪いのに、この上馬糞のような言葉を吐くこのガキをお前に任せて行けと言われても聞く気にならん。丁度我慢も限界に来ていた所だ。我も混ぜよ」

「馬糞てどんなセンスよアンタ。マジキモ!お似合い過ぎ!」

 死神の鎌のような物を振りまわして

 襲いかかってくる少女。

 言葉通り使いなれている。

 この世界に来て自分の欲望の為に、

 誰かれ構わず命を奪ってきたのだろう。

 的確にこちらの致命傷になるような場所を

 狙って来ていた。

 だが不意打ちが殆どだったのだろう。

 面と向かい相対し、戦いを重ねてきた俺とは

 質が違いすぎた。

 最初は真面目にかわしたが、

 俺は徐々に小さく最小限の動きでかわし始める。


「何無駄な抵抗してんの!?さっさとやられろっての!」

「……」

 どうしたもんかなこれは。

 段々相手にするのも面倒になってきた。

「コウ、もう遊びは終わりだ」

 ファニーが俺にそう耳打ちすると、

 隙を突いてその少女の顔面に一撃加えた。

 バトルアニメで見るような、殴られた後の

 宙返りは現実感が薄かったが

「キャァアアアッ!痛いよぉ!」

 と宙返りが終わり地面にたたきつけられ、

 顔を押さえ泣き叫ぶ少女を見て我に帰る。

「ちょっ、ファニー」

「ああスッキリした。凄く爽快感がある。何せ今の今まで殴るという戦いを見せる事が無かったからな。どうだ?手加減出来ているであろう?」

「いや、俺も殴られてたよな?」

「あんなものは戦いでは無かろう?それとも同じのを食らいたいのか?」

 ファニーは口は笑っていたが、目が据わっていた。

 二日酔いの竜怖い。

「痛い痛い痛い!くそがぁ!!」

 鼻血に鼻水、涙を流しながら斬りつけてくる少女。

「おいもう止めろって!ホントに殴り殺されるから!落ち着いて!」

 俺は黒隕剣と黒刻剣ダークルーンソード

 交差させて鎌を止める。

 このまま続けていたら、ファニーは本気で顔を

 吹き飛ばすつもりだ。

 そんな惨状は見たくない。

 夢見が悪くなる。

「うるせぇうるせぇうるせぇ!オッサン息吹きかけるなキモいんだよ!」

 泣き叫びながら悪態を吐く。

 もう何でも良いから止めてくれないかな。

 ロキの奴なんてものを置いて行きやがったんだ。

 確かにこれはこれで凄い足止め効果があるな。


「もう良かろう。我はこのガキの吐く言葉がこの世界で一番嫌いだ。エルフの次にな」

「ちょっまっ!」

 俺に何も言わせずファニーは少女の顔面を捉えて

 殴り飛ばした。

 今回も回転したが、次は起き上がれなかった。

「おいおい死んでないだろうな」

「別にどうでも構わんだろう?それより神殿に行かねばならんのではないか?」

「良くないわ!寝覚めが悪すぎる!」

 俺が近寄り体を起こすと、鼻血の所為で鼻で息が出来ず、

 口で息をしていた。

 俺と同じでこの世界に来て身の丈以上の力を手に入れた。

 使い方を間違えればこうなるのか。

 俺はよくも恨みを晴らす方向で使わずにすんだものだと、

 自分のことながら感心した。

「全くもう……」

 俺は鼻を触るが、どうやら折れているらしい。

 激痛に顔が歪む。

 だが意識は戻らない。

 凄いな。これからはファニーをあまり怒らせないようにしよう。

 回復魔法ってどうやるんだろう。

 法術だっけか。

 あれも解らないしなぁ。

 俺は空を見上げて考えた挙句、

 取り合えず少女の顔に右手をかざす。

 そして

「痛いの痛いの飛んで行け!って治る訳無いかっておわっ!?」

 リムンの魔術のような感じで適当に言うと、

 俺の右手が光に溢れ見る見るうちに血が引いて行き、

 少女は安らかな寝顔に変わる。

 寝ている顔は可愛いのにね。


「コウ、そんなものをどうするつもりだ?」

「いやこのまま捨てて行けないだろう?」

「ならこちらで預からせてもらおう」

 俺達の目の前にブラウンのフルフェイス甲冑が現れる。

 瞬間移動か何かか?

「お前らこいつを使って何をするつもりだ?」

「さてな。だがここまで使いものにならないとは、我々も予想外だったよ」

「……お前なら足止め位出来るんじゃないのか?」

「そうは思うがな。日が悪い。取り合えずそれをこちらに貰えるかな?」

「断る」

「そんなものお前には必要あるまい?」

「必要か必要じゃないかなんて他人が言うもんじゃない。誰でも必要な者だ」

「……良かろう。我々の詫びとしてそれはやる。今度はこちらも本気で行かせてもらおう」

「楽しみに待ってるよ」

「期待に副わせてもらう」

 そう言うと、ブラウンのフルフェイス甲冑は霧のように消える。

 瞬間移動ってのは誰でも出来るのかな。

 などと思いながらそいつが居た所を見ていると

「コウ、お前はまたこんなものを」

「だからって捨てたり放っておいたらはた迷惑な事になるだけだろ?しょうがない」

「まったく……呆れた者だなお前と言う男は」

「俺も困ってる。ほいじゃ行こうか」

 俺は少女を担いで鎌を放置し、神殿へと向かう。

 これからがヤバそうなのになぁ。

 困ったと思いつつ、神殿へと足を向けるのだった。

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