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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
反乱のエルフ

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女王の子供

 ブルームを抱えてルールは走る。

 エルフの里は代々女王をたてていた。

 男児は生まれてすぐに女王を護る為に

 修練に励む。

 蝶よ花よと愛でられる妹と違い、

 自分は鍛錬に明け暮れ、

 母の愛を感じる事も無かった。

 筋力アップなどに必要な薬膳を毎日食べ、

 夢を見る暇もないほど疲れはて、

 そんな日々を送り、15歳で暗殺の仕事を

 任される。

 里から逃げたエルフを暗殺する仕事だった。

 母と妹を憎む気持ちしかないと思っていたが、

 この仕事は母と妹の為になると言われ、

 成し遂げた時にえも言われぬ感情が生まれる。

 そして次々と手にかけてきた。

 

 ルールはブルームを抱えている手を見る。

 自分の手は血で汚れている。

 皆に愛されている妹を恨めしいと思い、

 もし会ったら暗殺してしまうかもしれないと

 思った。

 だが実際はどうだ。

 妹を抱え、上司に逆らい逃げている。

 何をしているんだ一体。

 俺は何なんだ。

 ルールは自分の行動に困惑していた。

 そしてさっきの発言。

 俺は憎んでいたんじゃないのか。

 いざとなったら、と決めていたのに。

 顔を見た瞬間そんな感情は微塵も無くなっていた。


 ブルームは兄と面と向かって逢った事は無い。

 ただ母と二人で心配になりこっそり見に行った時に

 兄であると教えられた。

 それから隙を見つけては兄の様子を見に来ていた。

 自分とは違う環境に身を置き、

 同い年なのにボロボロになって。

 何故なのか母に問うと、エルフの里の掟だからと

 言われる。

 ブルームの中に、こんな里無くなれば良いと

 言う感情が生まれていた。

 そして里を度々抜け出しては、

 知り合ったシーフに手解きを受けて、

 宝箱に関しては名が知られるほどになった。

 ここまでくれば、兄と母の三人で外で暮らせる

 のではないかと思った。

 そんな時に里に帰ると母が危篤だと伝えられたのだ。

 自分の力で解決したい。

 そう考え里を抜け出し洞窟に一人で潜り込む。

 罠にはまって身動きが取れない時に、

 不思議な人と出会う。

 何か神秘的な雰囲気のする年上の人間。

 初対面にも拘らず、自分を頼りにしてくれた。

 見捨てておけないと言われた。

 涙が出るほど嬉しかった。

 母の病を解決したら、この街に住んで

 兄と二人でこの人と冒険して生活したい。

 そんな夢のような事を描いていた。


「はっあーい♪」

 ルール達の目の前に、見た事も無い服装の娘が現れる。

「そこをどけ!」

「どけないしぃ。マジ抵抗とかウザいから止めてね」

 ルールはそのただならぬ雰囲気に、ブルームを下ろし

 ナイフを2本構える。

「何ソレ?マジウザいんだけど?アンタごときがアタシに勝てるわけないしぃ」

「何が目的だ!?」

「アンタ何かに話す必要無くない?まぁ黙ってそこに立ってればいいからさぁ。マジ手こずらせないでよね?ガキとかメンドイから相手にしたくないけどさぁ、あの里を地獄の釜にする為には準備が色々必要な訳だしぃ?」

 気だるそうにルールも見ずに、ポケットから取り出した紙を見ながら言う。


「チッ……あの小娘余計な事を」

 大樹の上から様子を窺っていた

 黒いファーコートに六芒星のピアス、

 頬の切り傷にペイントをしている子供は、

 舌打ちしながら眉間にしわを寄せた。

「父上……」

「仕方ない。ナルヴィ。あの娘を連れ戻せ。思ったよりダメだあれは」

「はっ」

「抵抗するなら気を失わせてでも引き摺ってこい。神の抑止力はまだ到着まで間がある。全ての駒が両方で揃わなければ、火蓋を切るのは早い」

「かしこ参りました」

 ナルヴィと呼ばれたブラウンの

 フルフェイス甲冑を纏った男は去る。

「なるほど。番犬も鎖があればこそ番犬になるのか。鎖が無い番犬はただの野犬だ。一つ学んだ。過大評価をし過ぎたのかな。ちょっと調教が必要だね」

 子供は顎をさすり遠くを見ていた。


「ブルーム、お前だけでも逃げろ」

「兄ちゃん!?」

「ここは俺が食い止める。だから行け。あの冒険者なら何とかしてくれる」

「兄ちゃんを置いてなんて行けないよ!」

「二人で共倒れになりたいのか!?」

 ルールに叱責されブルームは俯く。

「あのさぁ、マジ意味解ってなくない?アンタ達を逃がすとか絶対無いし?取り合えず黙ってそこで突っ立ってられないなら、いっぺん死んどく?」

「命は一つだ」

「……マジイラついてきたんだけど?やっぱやろうかな。どっちを先にしようか。その頭悪そうな女から殺そうか」

「頭が悪いのはお前だ」

「マジウケる!ならアンタが死になよ」

「待たれよ恵理殿」

「あ?ナルヴィ、例えアンタでも邪魔するならやっちゃうけど?良いの?」

「父上から支度がもうすぐ整うので、戻ってきてほしいとの事です」

「ロキっちが?」

「はっ。楽しみはこれ以上のモノとなりましょう。一番の御馳走の前に、この様なもので少しでも満たせば不味くなりませんか?」

「……そっかぁなら良いや。で、こいつらどうするの?」

「恵理殿のお陰で時間は丁度のようです」

「へぇラッキー♪ならアンタらに用は無いや。精々上手く生き残ってね?」

「では失礼させてもらう」

 ブラウンのフルフェイス甲冑と特殊な格好をした少女は消えた。

 暫く警戒を解かなかったものの、

 ルールは危険が去ったのを感じると、

 膝を着く。

「兄ちゃん!」

「危険な奴だった」

 殺意に殺気、悪意を纏った魔族より危険な奴だと

 ルールは感じた。

 あの冒険者とは正反対の奴だ。


「見つけたぞ!」

 ルールは気を抜く間も無いと思いながら、

 ブルームを再度担いで走る。

 瞬間転移は間隔を空けなければ使えない。

 切り札だからこそ、もっと厳しい場面で

 使わなければ。

 それまでは走るのみだ。

 しかしルールは甘く見ていた。

 恵理の悪意と殺気と殺意に当てられた

 精神的ダメージは大きく、

 肉体を鈍らせていた。

 そして次々と黒尽くめの男達に並ばれ、

 前方を塞がれる。

 ここまでか。

 ルールは自分の力がまだ戻らない事を

 確認すると、覚悟を決めて再度ブルームを下ろし

 ナイフを2本構える。

「無駄な足掻きはよすんだ」

「我ら相手に勝てるとでも?」

 6人か。

 なら不足は無い。

 元々女王と妹を護る為と言われ続けて来たんだ。

 それが暗殺も護衛も変わらない。

 役目を果たすのみだ。

 ただ一つ生まれてきてから与えられた役目を。

「王女は捕縛しルールは処刑だ」

「覚悟!」

 ルールとブルームに一斉に飛びかかる

 黒尽くめの男達。

 ルールは自分の身を盾にして妹を護る。


「神の息吹ゴッドブレス

 それは後方から放たれた。

 言葉は風を巻き起こし、6人すべてを

 遥か彼方へと吹き飛ばした。

「お待たせ。ナイスタイミングかな」

 そこに現れたのは年上の冴えない顔に

 見えた冒険者だった。

 だが今その顔は戦士の顔そのものだった。

 ルールは思う。

 さっきの奴のようにのべつ幕なしにまき散らすのと、

 この男のように必要な時に抜く剣と

 どちらが怖いのかと。

 



 

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