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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
反乱のエルフ

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指揮棒は誰の手に

「エドベ様、どういう事ですか!?」

 木漏れ日の光が溢れる広場の真ん中で、

 黒尽くめの集団は、一人の少女を囲み、

 今裁きを下さんと、細身の剣を向けていた。

「どうもこうも無い。里の掟を破ったものを処罰するのみだ」

 一際小さい男が少女の前へ出てフードを取る。

 エルフ特有の横に長く尖った耳、

 金髪の長髪で目は釣り目、口はへの字になっており

 眉間にシワが常時寄っているような男だった。

「里の掟を破った場合は忌むべき姿にして放流が、長年の決まりではありませんか!」

「それは庶民共の場合だ。王族が掟を破ればその身分相応の処罰をせねば、示しがつくまい」

「ですがブルームは王女です!しかも皆に慕われております!一度下界に出ただけで処刑など!」

「ルールよ。逆らうつもりか?」

 ブルームの前に立ちはだかるルールに対して

 剣が向けられる。

「女王様も昏睡状態であり、後を継ぐ方が居りません」

「そんなものは必要ない」

「な!?」

「掟を守りエルフの格を護るものこそが、エルフの長たる者。血に縛られ掟を蔑ろにするというのか?」

「命より掟であると」

「そう。掟こそ絶対であり、我らエルフの全てだ。それを護れぬ者は死ぬしかない」

「……全てお前が仕組んだ事か……」

「何れこうなる定めだっただけの事だ」

 ルールはそれを聞き終わらぬ内に、

 エドベと呼んだ男に切りかかる。

 不意を突かれ半身で避けようとするも

 避けきれずエドベは頬に傷を負う。

「エドベ様!」

「この反逆者共を、裏切り者を今すぐ殺せ!」

 怒りに震えるエドベの命を受け、

 囲んでいた者たちが斬りかかるも、

 ルールはブルームを抱え飛び上がる。

「逃がすか!」

 エドベは掌をルール達へ向ける。

 六芒星の陣がルールを捉えたが、

 霧のようにルール達は消える。

「くっ!腐っても王族の親族か」

「エドベ様傷の手当を」

「そんな者はどうでも良い!さっさとあいつらを私の前に連れて来い!私が直々に八つ裂きにしてやる!」

 怒り狂うエドベに対して部下たちは一歩下がり

 うろたえるも、返事をして散開する。

「……どうせもう何処にも逃げられん。必ず地獄に落としてやるぞ!ひゃははははは!」

 両手を広げ空に向かい叫ぶエドベ。

 その姿をエルフの里の象徴と言っても良い

 大樹の陰から見つめる者があった。


「ねぇロキきゅん。あれ使えるの?」

 ブレザーにYシャツとネクタイ、チェックのスカートに

 スニーカーを履いたヘアバンドをした

 ショートカットの少女は見下すように言う。

「さぁどうだろうね。折角あげた剣をビビッて洞窟へ投げ捨てるようなチキンに最後までピエロが務まるのかどうか」

「ホントだよネェ。あんなキモいオヤジ使える気がしないっしょ?」

「でも良いさ。波風立てることだけは出来たんだから。後は更なる混乱を呼んでくれれば問題ナッシングっしょ」

 そう少女に言う子供は、ファーのついた黒のコートに

 耳には六芒星のピアスを付け、両頬には切り傷と

 それが目立つように黒いペイントをし、

 目のクマが濃い異様な雰囲気を纏った子供だった。

「アタシはさぁ、もっとこうハメてガッツリ死んで欲しいんだけどなぁ」

「それも問題なしだよ恵理。この里はこれから死体の山を築くんだから」

「マジで!?」

「マジもマジ、大マジさ。僕の計画は蟻地獄のようなもの。誰も逃げる事は出来ない」

「たっのしみだなー!わんさか人が死んで惨めに命乞いをしてるとこがアタシ見たいんだよねー!そしてさそしてさ!アタシはそれを躊躇うことなく刺すわけよ!?ヤバくない!?」

「ヤバいねぇ。ゾクゾクするよ」

 二人組みはそういい終ると、

 寒気がするような冷たい笑顔を向け合う。

「種は蒔いた。さぁ早く来い神の抑止力。お前が更なる混乱と破局を呼ぶんだ」

「でもその引きこもりで無職のキモいオッサンて強いわけ?」

「強いよー?この世界に来て類稀なる力を与えられている。恵理と一緒さ」

「えー!?アタシと一緒にしないでくれる?!マジキモいんだけど」

「ゴメンゴメン、力だけだよ。恵理は僕と一緒だろ?悲鳴やら血飛沫やら断末魔が大好きで堪らない。その為なら相手をどうハメるか、楽しみながらゆっくりと真綿で首を絞めるように出来るだろ?」

「モチ余裕っしょ?その為にアタシは我慢してるんだからさ」

「そうそう、その調子で力を溜めておいてね。キモいオッサンが余裕を見せた時に、後ろから刺したらこの喜劇は更に盛り上がるんだから」

「キャー!堪んない!前の世界でもダッセェ女をハメて地獄に落としてやったんだから、この世界でこんな力を貰ったからにはもっと凄い事をやらないとアタシ気がすまないんだよね」

「素晴らしいね恵理は。その為にも、女王を殺さないように下のオッサンを見張っといてね。そんな事されたらつまらなくなる」

「オッケー任せてよロキきゅん!行ってきまーす!」

 恵理と呼ばれた少女は大樹から飛び降り、

 何のダメージもなく着地し駆け抜けていく。


「まったく……同じ趣味だけど流石短慮な小娘だ。面白さに欠けるだけならまだしも品性も下劣ときた。何が面白くてあんなものがこの世界に来たのか。あのヘボ作家の方がまだ狂言回しとしては面白かったのに」

「父上」

「ナルヴィか。お前もそう思うだろ?」

「宜しいのですか?あの娘、窮地に追い込まれればこちらを裏切るかと」

「定石だね。品性下劣で根性もひん曲がってる。向こうの世界なら巻き込んで巧くやれたかもしれないけど、場が違う事を解っていない馬鹿だからね。まさか自分が泣き叫んで命乞いをするハメになるとは思っていないだろう」

「流石父上」

「ゲームを楽しむにはルールを知らなければならない。そして詰め方も。神の一手に対して僕が差す一手目としては先ず先ず。戯曲としては始まったばかりだ。さぁ楽しもうじゃないか。英雄譚を」

 ロキはニヤリと微笑むと、ナルヴィと共に消えていった。

 

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