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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
反乱のエルフ

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動きだす歯車

「おかえりー」

 俺が冒険者ギルドの扉を開けると、

 リムンが飛びついて来た。

「ただいまー。今日も元気だなリムンは」

「あいー」

 リムンの頭を撫でながら、テーブルを囲みつつ

 談笑している女性陣を見る。

 さてどうしたものか。

「おっちゃんこの人誰?」

 リムンは俺の後ろに控えている

 護衛役の暗殺者を見て言った。

「今日から俺の護衛だ。名前は?」

「何故名乗らなければなら」

「な・ま・え・は?」

 俺はなるべく穏便に促す。

 暗殺者は眉を顰め屈辱に耐えるかのように

「ルールだ」

 と声を絞り出した。

 ルールとは面白い。

 暗殺者が物差しであり基準とは。

 エルフの里は皮肉が好きなのか。


「え!?」

 女性陣のテーブルからブルームの驚く声が聞こえる。

 暗殺者ルールは逃げようとしたが、

 首根っこを捕まえる。

「待てよ」

「離せ」

「無駄だろ?もう見つかってるんだからさ」

 俺はルールを引き摺って

 女性陣の所まで歩いて行く。

「皆紹介するよ。護衛のルール君だ」

 皆眉をひそめて目が線になっている。

 んなわきゃないって言いたそうな感じだ。

 まさにその通りなんだが。

「ルール兄ちゃん……」

 ブルームは涙を浮かべて震えた声で

 言った。

 ルールは俯いたままだった。

 何かこの兄妹なのか幼馴染なのかは

 深い事情があるようだ。


「取り合えずプレシレーネ、呪いについて話してもらえるか」

「……そうですね。どうやら関係者の方のようですし」

 そう言ってプレシレーネは洞窟での話をしてくれた。

 俺と並んで立っていたルールは

 話を聞いて行くうちに、

 どんどん顔色が悪くなっていく。

 ハメられたと言わんばかりに。

「……皆のんびりしている所悪いが、急いでプレシレーネの師匠の所へ行こう」

「どうしたのだコウ」

「プレシレーネの師匠が無理で、プレシレーネが洞窟へ入った。そして俺に対して都合よくルールが現れた。となると」

「師匠が危ない!」

「そう言う事だ。プレシレーネが居た街はここからどれ位掛かる?」

「ここからですと昼前には着けるかと!」

「よし、今回は強行軍だ。リウの背中に乗せてもらって、俺とプレシレーネだけで行く」

「えー!?」

 女性陣猛反対である。

 この期に及んでかしましい。

「今は一刻を争う。ファニー、ロリーナ、ウーナ。ブルームの事を頼む。こっちにも何か来るかもしれない。用がすんだら直ぐ戻る」

「仕方あるまい……」

「しょうがないかな」

「解りましたわ。今回はお譲りします」

「おいルール。この期に及んで無用な事はしないと思うが、ブルームをしっかり守ってくれよ!頼んだからな!」

 俺はルールの肩を優しく叩き、

 プレシレーネに来るよう手招きすると、

 冒険者ギルドを出た。

 外にはリウがうとうとして平和そうにしていた。

「リウ悪いが俺達を乗せて走ってくれるか?」

 俺は頭を優しく撫でながら頼む。

 リウは気持ちよさそうにした後、

 頷いて立ち上がり、乗るよう促す。

「プレシレーネ、しっかり掴まってくれ。リウ悪いが全速力で頼む!」

「グァ!」

 リウは走り出す。

「プレシレーネ方角は?」

「ここから西へ一直線です!」

 リウは方向を変え西門へ掛ける。

 門番の人たちに行ってきますと駆けながら言いつつ、

 エルツは発った。

 リウは本当に凄い。

 草原だが色々な草が生えている。

 木もある。

 しかしそれがあっという間に過ぎ去っていく。

 原付位のスピードは余裕で出ている感じがする。

 そして凄い風圧だ。

 リウにしがみ付きながら、俺達はひたすら西へと向かう。


「コウ殿、見えてきました!エントの街です!」

 プレシレーネの声に顔を上げると、

 街が見えてきた。

 エルツよりも長閑そうな街に見える。

 だが門番が道をふさいでおり、

 中には入れない行商人達で溢れていた。

「今中に入る事はまかりならん!」

「どうしたのですか!門番殿!」

 プレシレーネはリウから飛び降りると、

 人混みを掻き分けて門番へ近寄る。

「プレシレーネ!大変だ!お前が居ない間にお前の師匠が!」

「どうされたのですか!?」

「何者かにやられた。今街を封鎖して犯人を調べている所だ」

「すいません、プレシレーネの知人なんですが、その事件はいつ起こったものですか?」

「朝方だ」

 ……ルールの表情から見て恐らくルールより

 事情を知っている人間がルールとは別に動いている。

「プレシレーネ。残るか?」

「……」

 プレシレーネは俯き涙をこぼしていた。

 俺はただ黙って隣に居た。

 時間は惜しいが掛けるべき時間だ。

 師匠が亡くなったのだから、直ぐにどうにかしろ

 というのはあまりにも人情が無い。

「門番殿、犯人の目星は?」

「ああ……解っているのは黒いローブを纏った者、と言う事だけだ」

「すいません、少しプレシレーネに工房と、師匠と対面させてあげて貰えませんか?」

「……そうだったな。すまない。我々もこのような事が起こる街では無かったので動揺していた。プレシレーネと君は中に入ってくれ」

 そう言われ、門番に中へと通される。

 プレシレーネの足取りは重い。

 俺が肩を手で支えながら、前を歩く。

 リウも心配そうに寄り添ってくれている。

「プレシレーネちゃん!」

 恰幅の良い人のよさそうなおばさんが駆け寄ってきた。

 プレシレーネは抱きつき号泣する。

 知己が来て気が緩んだのだろう。

 泣く事が出来るのは良い事だ。

 突っ張ったままじゃ先走りしかねないからな。


「ここが私と、師匠の、工房です」

 プレシレーネが目を腫らしながら案内してくれた。

 綺麗な工房だった。

 とても整理されており、呪いをかける為の剣を

 作る場所には思えないほど神聖な場所に思えた。

「プレシレーネ、師匠の顔を見て行くか?」

「はい……」

 工房の前に居た衛兵に連れられ、安置所に向かう。

 そして師匠が寝かされている場所へ来ると、

 プレシレーネはしがみついて泣いた。

 声を挙げて。

 悔しい気持ちで一杯だろう。

 俺は拳を握る。

 相棒、ケリは必ず着けようぜ。


 ――頼む相棒。私の親の仇を――


 言われなくともな。

 俺は黙ってプレシレーネの背中を見続けた。

 そして溜め込む。

 この犯人に対して怒りの一撃を加える為に。



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