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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
反乱のエルフ

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罠に落ちる暗殺者

 翌朝、起きて冒険者ギルドのカウンターに行くと、

 ミレーユさんから

「女の子達は買い出しに言ったわ」

 と伝えられた。

 昨日久しぶりにお酒を飲んで熟睡してしまった為、

 昼過ぎまで寝てしまったので置いてけぼりになった。

 ミレーユさんに寝癖を直してもらった後、

 のんびりと朝食を取った。

 そして俺は準備に取り掛かる。

 これから行かなければならない所の為に。


「お前はコウか?」

 エルツの街中をぶらりとしていると、

 後ろから声が掛かる。

 それまで殺気を感じなかった。

 これは恐らく暗殺者だろう。

「人違いって言ったら信じるかい?」

 暗殺者は俺の首筋に刃物を

 近付けようとした瞬間、

 黒隕剣が腰から離れそれをはじき飛ばす。

 そして黒刻剣ダークルーンソード

 俺の手に取り易い位置まで上がってきていたので、

 素早く手に取り振り向きつつ、

 相手のかかとに自分の足を当て逃がさないようにして

「こんにちわ暗殺者。何か用かな」

 と言いつつ首元に黒刻剣ダークルーンソード

 突きつける。


「……貴様……」

「予想外だったか?それは残念」

 俺はそいつの顔を見る。

 口元と全身を黒いローブで

 覆っている絵に描いたような

 暗殺者がそこに居た。

「ちなみにもう詰んでるがどうする?」

「早くやれ。出なければお前を狙い続けるぞ」

「いや、それは困るんだがお前このまま俺を狙い続けると、お前も一緒に処分される事になるぞ?」

「何だと?」

「俺がこれから行こうとしている所へお前みたいな血生臭いのが来れば、恐らく向こうさんはお前も殺しにかかってくると思う」

「何処へ行こうと言うのだ」

「エルフの里だよ」

 俺がそう言うと暗殺者は布越しに笑う。

「俺がそのエルフの里の暗殺者だ」

「だからだよ。俺がエルフの里に入れば、向こうはお前が俺を呼びこんだと取るだろう。疑い深い一族のようだしな」

「……クッ」

「お前を今殺さなくても、お前は同胞に殺される。暗殺に失敗しただけでなく、エルフの里を汚した罪人としてな」

「そこまで見越して俺を近付けたのか」

「いいや、気付かなかったさ。お前は暗殺者として一流のようだ。でも詰めが甘かったよな。俺の間合いで殺気を出したらダメだ」

 俺はそう言うと浮遊していた黒隕剣と

 黒刻剣ダークルーンソードを腰に収める。

「何の真似だ」

「お前は暗殺に失敗した。だったら取る道は一つしか無くないか?」

「どう言う意味だ」

「お前の里を変える為に力を貸せ。変わればお前の罪は問われない上に、ひょっとするとお前が里の英雄になる。良い事じゃないか」

「あの里を変えるだと?」

「ああ、あの里で起こっている事を解決すればな」

「どう言う事だ」

「俺の仲間にブルームが居る。その娘の母親が危篤なのは知ってるな」

「!?」

「そう意外そうな顔をするなよ。薄々そう思っていたんじゃないか?」

「まさか……王女が何故お前と」

 俺はそれを聞いて苦い顔をした。

 また王女か。

 王女がシーフって良いのか!?

「俺はその危篤の原因を知っている」

「……俺を謀るつもりか?」

「この黒刻剣ダークルーンソードを使って、ブルームの母親に呪いをかけた奴が居る。恐らくこの相棒を持って行けば危篤は解消されるはずだ」

「……嘘を付け」

「嘘と思うなら俺と一緒に来い。この剣を作れと言われた鍛冶師が俺の仲間に今居るから直接聞けばいい。それで嘘なら煮るなり焼くなり好きにしろ」

「聞くだけは聞いてやる」

「良かった。嘘をついても俺に得は無い。お前をやれるからな」

「……」

「良かったよ。次があればとか言わなくて。そこまで愚かなら救いようが無い。お前も里も」

 俺は手招きして歩き出す。

「何処へ行くつもりだ」

「エルフの里にこのまま忍び込んだらダメだろ?準備をするのさ」

 暗殺者は渋々俺に付いてきた。

 こっちとしては女性陣以外の戦力が増えるのは有り難い。


「コウさんいらっしゃい!」

 買い取りと鑑定専門の店であるエミルの店へと辿り着く。

 実のところまだエルツ自体を

 くまなく見て回った訳では無いので、

 散歩してから来ようとしていたのだ。

 思わぬ魚が釣れたが。

「エミル、一つ訪ねたいんだけどいいかな」

「何なりと」

 実に気持ち良い返事だ。

 商売が上手く信頼される人物だなぁと感心した。

 ごちゃごちゃ言わずに先ずは聞く、というのは

 商売だけでなく、人付き合いでも大事だと

 何かの本で読んだ事がある。

 俺が実践できているかは別として。

「エルフの耳に偽装するアイテムとかある?」

 と俺が言うとエミルは目を丸くして

「よくそんな事を考え付きましたねぇ」

 と驚いた。

「いや、偶々必要になっただけなんだけど難しいかな」

「うーん、難しくは無いかと。ただお時間を頂ければご用意できますが」

「なら頼む」

「値段は?」

「エミルに任せる。俺とファニー、ロリーナにプレシレーネの4つ欲しいんだ。早速お願いするよ」

「解りました。コウさんから信頼されたからには、早急にご用意させて頂きます。お届けはギルドで宜しいですか?」

「ああ、頼む。その時はお代と別に御馳走させてもらうよ」

「それは楽しみですね!皆さんとはこれから仲良くさせて頂きたいので」

「後この新しい相棒の鞘が欲しいんだけど、何とかなりそうかな」

 俺は黒刻剣ダークルーンソードをエミルに見せる。

 エミルは顔を近付けてジッと見た後

「……少し特殊な形状ですね。ですが剣身の部分さえなんとか出来ればエルフの耳よりは簡単にご用意出来ますよ」

 と笑顔で答えてくれた。

「なら鞘も一緒に頼む。じゃあ楽しみにギルドで待ってるよ」

「こちらこそです!毎度あり!」

 そう言って俺はエミルの店を離れる。

「ばれないと思っているのか?」

「ばれないだろう。何せこっちにはエルフの里の人間が居るんだ。しかも王女と暗殺者がな」

「とんだ詐欺師だ」

「詐欺でも何でも構わん。それで血を見なければどう呼んでくれても構わんよ」

 俺は口笛を吹きつつギルドへと戻る。

 暗殺者の護衛付きで。


 

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