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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第一章・引きこもり旅立つ!
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引きこもり、街へ出る

引きこもりのおっさんと

竜の少女は、ゴブリン達から

鎧や武器を奪い森を抜ける。

その先には!?

 俺とファニーはゴブリン達との戦闘後、

街へ向け動き出した。

道中運良く古びた荷車を見つけ、

俺はそれを引きながら

ファニーは俺の先頭を歩きつつ

警戒しながら進む。


 デカイイノシシと3度、

オオカミと2度交戦しあっさり勝利。

ファニーの戦闘能力の高さに感心しつつ、

荷台にそれらを積んで街を目指す。

満月の明かりのお陰で進み易かった。

真っ直ぐずっと進んで行くと、

丁度森の出口へ差し掛かった。


「ファニー待って」

「ん?」


 俺はファニーを制止した。


「ここからはもう敵は居ないだろうから、

さっきの鎧と武器を荷台に乗せてくれ。

このままいくともし仮に持ち主が

街に居た場合、盗賊と見られかねない」

「コウ、我が言った事を覚えていたのか」

「勿論。まだ旅は始まったばかりだからな。

出来れば穏便に始めたいし」

「ふふ、了解」


 ファニーは俺に向かってほほ笑むと、

先程の鎧と武器を荷台に置いた。

俺も脱いで荷台に積む。

そして夜が明け始める。

遠くから見た限り、

街には門があり今は開いていない。


 恐らく陽が昇れば、

門があいて門番が出てくるだろう。

自分のパジャマを見ながら、

俺はどうやって入るか考えた。


「大道芸人てのはどうかな」

「大道芸人が何で鎧や獣を荷台に乗せてきたか」

「途中で追い剥ぎに遭い身ぐるみはがされた。

荷車と鎧を拾って届けに来た。獣も途中で拾った」

「それらしく聞こえるが……まぁこの場合

それ以外に方法は無いか」

「それしかないな。大道芸を見せろと言われたら、

瓦割するわ。俺の力なら20枚くらいはいけるだろう」


 それで決定すると、俺とファニーは

門が開くのを待ちつつ警戒する。

ゴブリンが逆襲に来るかもしれない、

獣が襲い掛かってくるかもしれない。

2つの可能性がある以上気が抜けない。

森を抜ける所とは言え。


「さぁ行くかの」

「そうだな。さぁ大道芸人のお通りだ!」


 俺とファニーは見合うと、

俺が荷車を引きつつ

ファニーが軽やかに歩きだす。 


「お前たちは街に何の用だ」

 

 門へ近付くと、

門番が2人俺達を制止した。


「私達は大道芸人なのですが、途中ゴブリンに

身ぐるみを剥がされまして。命からがら

ここまで辿り着いた次第です。

途中で鎧や武器を拾いましたので、

お届けにあがりました。

何方か探してらっしゃるかもしれないと思い。

後獣は運良く罠にかかったのでこちらで売って

身ぐるみを剥がされた分を取り戻したいのですが」


 俺は一人だったら

絶対にしない事をしている。

見た目が年下で女性の

ファニーが居るからこそ、

巧く喋れず聞こえ辛い声を張って

一生懸命頑張ってみた。

門番はじろじろと見ていたが、

俺のぼろぼろのパジャマにボサボサの髪の毛と

引きこもり全開の容姿を見て


「そうか……大変だったな。鎧と武器はこちらで

預からせてもらおう。獣に関しては街に入って

少し進んだところに肉屋があるから、

そこで買い取ってもらうと良い。

これくらいのサイズと量なら、身ぐるみを

剥がされた分は回収できるだろう。

落とし主が現れれば必ず謝礼するよう言っておく。

さ、行くと良い」


 と憐れんでくれて中に入れてくれた。

ファニーが笑顔で鎧と武器を渡すと

門番も笑顔というかデレデレ気味に受け取り、

俺たちは街へと入る。


「コウの姿が役に立ったな!」

「ファニーの見た目もな。あの門番は

俺一人なら難しかっただろう」

「コウも我の容姿にメロメロだからの」

「アホか」


 ファニーはそんな俺の言葉を無視して

鼻歌交じりに前を行く。

しかし幾ら力があるとはいえ、

引きこもりに体力は無い。


 そろそろ本格的に荷車を押すのが

辛くなってきた。

だからと言ってファニーには頼れない。

余裕で引けるだろうけど。

引きこもりにも意地があるのだ。

くだらないけどな。


「コウ、ここではないか?」


 ファニーの言葉に顔を上げると、

そこには妙な字体で書いてあるが

”ビックリオイシイ肉店”と書いてある。

アメリカかここは。


「な、なんでも良いからこの獣たちを

売る交渉をしてくれ……」


 ここに入る時の問答と

荷車を押すのに疲れた俺は、

地面に膝をつきファニーに頼んだ。


「あいよらっしゃい!」


 その声の方向に顔を向けると、

そこにはオオカミの顔をした

二足歩行の怪人が居た。

中華包丁のようなものを2つ持って立っている。


「ダメじゃね?」

「何がだ」

「いや、アンタこれの親戚じゃねーの?」

 俺は荷台のオオカミを指差す。

「いや、俺は獣人だからオオカミとは違うぜ?」

「二足歩行の違いか?」

「種族の違いだ。まぁ解り易く例えるなら

人間とサルの違い」

「いや、それだったらダメじゃねーのか」

「ダメってことはないだろ。需要があるから

売るけど、食べはしないし。お前もそうだろ」

「絶っっ対食わない」

「そんなもんだ。取り敢えず運んでくれたものは

新鮮だし、皮も傷が少ないから

良い値段で買わせてもらうぜ」

「いや、相場とかよく分からないんだが、

身なりを整えられるくらいの値段が希望かな」

「そっか、なら金貨10枚ってとこかな」

「じゃあそれで」

「え!? 良いのか」

「え!?少ないのか!?」


 俺とその獣人は顔を見合わせる。

そして暫くした後笑いあった。


「あはははっ。お前は純粋なんだな」

「違うよ。人の悪意には慣れてるし、

騙されたとしても今の状況じゃ仕方ない。

それに話した感じ、

アンタ悪い人じゃなさそうだし」

「ありがとうよ。俺はダンディスってんだ。

お前は?」

「コウ」

「短くて呼びやすい良い名前だな」

「アンタのはカッコいいな」


 ダンディスさんは俺に向かって手を差し出した。

オオカミの獣人らしく毛むくじゃらだが

筋肉質な腕と体格に白いエプロンと

青いズボンが印象的な、

明るい男と俺は握手をした。

誰かと握手するなんて人生で初めての

経験かもしれない。

何かこそばゆい感じがした。


「よし、これで俺とお前は知らない仲じゃ

なくなった訳だ。オマケして金貨20枚にしとくよ」

「え!?2倍になってるじゃないか!」

「おうよ。お前達この辺りで稼ぐんだろ?

その上知らない仲じゃないなら、新鮮な肉とか

手に入れやすくなる。商人としては

先行投資ってやつだな」

「……是非そうさせてもらうよ」

「期待してるぜ!で、身なりを整えるなら、

この2軒先の店である程度必要な物が揃う。

俺の名前を出してくれれば、良いアイテムを

割安で手に入れられるはずだ」

「そこまでサービスしてくれるのか」

「言ったろ?先行投資だ。お前達が変な装備で

ウチに入れてくれる肉とかが減るのは困るから、

良い店を紹介するまでだ。

なんで気にしないでくれ。

巧く回れば、店のオヤジに奢らせようぜ」 


 そうダンディスさんはウィンクしながら言った。

俺は思わず笑みがこぼれる。

人間じゃないからこそ、引きこもりの俺でも

ここまで話せるのかもしれない。

ダンディスさんのあけっぴろげな感じも

あるだろうけど。


「ファニー、行くぞ」

「了解」

「じゃあまたな!肉、待ってるぜ!」


 ダンディスさんに見送られながら、

ファニーと共に身なりを整えるべく

ダンディスさんに売って手に入れた金貨を持って

その2軒先の店に向かうのだった。

獣人ダンディスとの交流で、

引きこもりは人以外に心を

開き始めた。身なりを整える為に

訪れた店で、さらなる繋がりが

出来るか!?

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