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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第二章・無職で引きこもりだったおっさんは冒険者として生きていけるか!?

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何れまた

 俺は新しい相棒である

 魔刻剣ダークルーンソードを担いで

 ウーナの手を取り急いで九階へと戻る。

 瘴気が失せた事によって、

 ゴブリンたちも正気を取り戻す。

 そして洞窟に危険が無いと解って、

 戻ってくる生物も居るだろう。

 長居は無用だ。


「皆、無事か!?」

 俺が九階の穴を通って神殿みたいな場所に

 戻るとそう叫んだ。

「うるさいの。我らのセリフだぞそれは」

 ファニーの声が聞こえて安心した。

 が、ファニーやロリーナ、ブルームにプレシレーネ、

 リウは穴を囲むように並んでいた。

 そしてその隙間から見えたのはゴブリンの大群。

「ごめん。でも大丈夫だから。皆、道を開けてくれ」

「コウ、大丈夫なの?」

「ああ、問題ない」

 俺は魔刻剣ダークルーンソード

 ロリーナに見せて笑顔で答える。

 皆が道を俺に開けてくれた。

 ゴブリンたちは構えている。

 まぁそうだろうな。

 冒険者とゴブリン。

 相容れない存在だ。

 言葉を交えるのは無粋だな。


「神の息吹ゴッドブレス

 俺は魔刻剣ダークルーンソードを前に突き出し、

 唱える。

 すると、自分で名付けて何だが

 剣を通して放つと、それはブレスというより

 空気の弾丸位の威力にアップしていた。

 凄いな魔刻剣ダークルーンソードは。

 これを呪う事にしか使わなかったなんて能の無い奴だ。

 きっちり落とし前つけさせないとな。

 俺の相棒にしてくれた落とし前を。


「さぁ皆、一気に街へ戻るぞ!」

「待タレイ!」

 俺が走り出そうとした瞬間、

 前方から声が掛かる。

 今全て吹き飛ばしたはずなのに。

「何か用か?」

 そういうと、姿を現したのは老いたゴブリンだった。

 しわくちゃな顔は、ゴブリンも人と同じような歳の

 取り方をするんだな、と感じながら警戒する。

 恐らく長老みたいな人物だろう。

「用モ何モ、貴方ガ救ッテクレタノデハ?」

「……俺は自分に合う剣を探していただけだ。それにこれまでの遺恨もある。今更ヒーローになるつもりはない。俺たちは元の場所へ戻る。アンタ達はアンタ達の生活を営めばいい。次ぎあう時は容赦しない、かもしれない」

「フフ、アハハハハ」

「別に面白くないと思うんだけどなぁ」

「イヤ面白イ。恩ヲ着セナイデ去ルノダカラナ。恩ヲ着セレバ今後ソナタニ有利ニ成ル事ガ有ルカモシレンノニ。ソレニ容赦シナイカモシレナイトハ」

「そんな無粋な真似は趣味じゃない。だが博愛主義者でもなければ殺戮者でもないんでね。降りかかる火の粉は払う主義だ」

「ソウカ。ダガ礼ハ言ワセテ貰ウ。有難ウ」

「それで十分だ。道を開けてもらう」

「おっちゃん、待つだのよ!」

「そうだ、コウ」

 ゴブリンの長老の後ろから懐かしい声がした。

 傷だらけの体に大きな体。

 そして小さな体にローブを着て水晶が頭に付いた杖を持つ女の子。

「ビルゴ!それにリムンも!」

「久しぶりだのよおっちゃん!」

 リムンは俺に抱きついてきた。

 久しぶりにあったからか、また成長しているように感じる。

 親と一緒に居た事で、表情も柔らかくなった気がする。

「コウ、やはりお前が解決してしまったか」

「ビルゴ、何でここに?」

 ビルゴは俺に近付き、手を差し出す。

 俺は手を握り握手を交わした。

「前の戦いでも娘の事でも世話になった。まさか礼を言わせてもらえないまま去られてしまうとはまったく……」

「それこそ無粋だろう?親子の事は親子で解決すれば良い事だ」

「お前らしい。この洞窟の事はアイゼンリウトでも問題になっていてな。姫から直々に解決を依頼されていた。一足以上遅かったようだが」

「悪いな邪魔をして」

「いや、姫には伝令でも出しておくさ。長老、俺はコイツに借りがある。皆の分も纏めて俺が礼をしておくから、普通の生活に戻ってくれ」

「ソウカビルゴガソウ言ウナラソウシヨウ。ダガ冒険者ヨ。ソナタノ名ヲ教エテクレマイカ?」

「……名もなき冒険者1さ」

「全くお前はカッコ付け過ぎじゃぞ?」

 ファニーにそう言いつつ小突かれて、俺はニカッと笑った。

 名残が出来れば太刀筋が鈍る。

 人もゴブリンも、全てが良い人でも悪い人でもなく、

 解り合える訳でもない。

 ならば名なんて知る必要はない。

 ただ戦いの中で剣を交えるのみ。


「だそうだ長老。コイツのカッコつけは元々だ。顔さえ覚えておけば良いだろう」

「ソウカダガ何レ知ル事ニナルジャロウ」

「だろうな。その時が来て出来る事があれば、してやればいい。一族郎党救った者の為に」

「アイ解ッタ。ソウシヨウ。行カレルガ良イ冒険者ヨ」

「有難う長老」

 そう告げて俺達は洞窟を出る。

「ビルゴ達はあそこに居なくていいのか?」

「ああ、俺の嫁の故郷だが、お前に礼をするのが先だ」

「だからそういうのは要らないって」

「俺は借りをそのままにするのは気分が悪くてな。俺の気分に付き合ってもらおう」

「……全く」

「ああ、男ってのは面倒な生き物さ」

 俺とビルゴは笑いあう。

 そして来た時よりも爽やかな気分で洞窟を歩く。

 通りかかった道で会ったゴブリン達は俺達を見て、

 固まる。

 しかし中には俺に対して頭を下げる者もいた。

 全くどいつもこいつも。

 俺の勝手にやった事に恩を感じる暇があるなら

 復興を頑張れよ。

 そう思いつつも、終わった余韻に浸りつつ、

 洞窟の外へ出た。

 

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