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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第二章・無職で引きこもりだったおっさんは冒険者として生きていけるか!?

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魔剣

「貴方は強いな」

「今は、ね」


 俺たちは命の取り合いをしていた感覚が薄い。

その証拠に微笑み合っている。

俺は黒隕剣を首元から離して下がる。

魔族は壁から立ち上がり、軽鎧を脱ぎ捨てた。


「アンタ剣は使えるようだが、本職か?」


 俺は何となく感じていた違和感を口にする。

魔族は小さく微笑み


「やはりバレてしまいますね。貴方のおっしゃる通り、私は剣を本職としていません。事情があって貴方を試させてもらいました」


 そう言った。


「俺はコウ、アンタは?」

「私はプレシレーネ。本業は鍛冶師です」

「鍛冶師がまた何で俺たちを待ち構えていたんだ」

「鍛冶師が剣士を待ち構える理由なんてそう無いでしょう」


 俺は黒隕剣を腰に差して収める。


「訳を詳しく知りたい」


 プレシレーネに確認して、ファニーたちを呼び寄せた。


「改めて名乗らせてもらいます。私は魔族の鍛冶師、プレシレーネと申します」

「で、魔族が何の用だ」


 ファニーが警戒しつつそう尋ねる。


「貴方たちも感じていると思うのですが、この洞窟は瘴気が濃い」

「それは君たち魔族の根城に繋がってるからじゃないの?」


 ロリーナも警戒しつつ尋ねた。

何というか必要以上に警戒しすぎだ。

俺の前に立つ必要は無いと思うんだが。


「残念ながら、半分正解で半分ハズレです」

「……何か切っ掛けがあって、魔界に通じようとしてるとか?」


 俺がその真ん中を取った考えを伝えると、

プレシレーネは笑顔で


「流石ですね。その通りです。私はそれに関係しています」


 と答えた。

鍛冶師と魔界へ通じる穴、

この二つを結びつけるものか。

俺は黒隕剣を見る。


「なるほどね。誰かが故意に抉じ開けようとしている訳だ。それも鍛冶師が作ったもので」

「そういう訳です。コウさん、貴方の持つその剣のような、禁忌を犯して作られた剣が今まさにこの洞窟の底から魔界へと繋げようとしています」

「それをどうにかする為に、腕の立つ人間を待っていた、と?」

「そうですね、具体的に言うなら貴方を待っていた」


 どうも芳しくない。

俺は普通の冒険者として洞窟探索に来たはずなんだがな。

またしてもキナ臭い事に巻き込まれる予感。


「そんなにも俺の勇名は轟いてるのか?」


 俺は空笑いしながらそういうと


「当然です。貴方は魔族、それも魔王に近い者を一人で倒した」

「いやそれは違うから。皆がいたから倒せたんだって」

「貴方の一刀の元に切り捨てられたのを、我らは知っています」


 そう答えるプレシレーネに俺は眉を顰める。

結果はそうだけど、

過程が思いっきり無視されている。

あれはあの国の、この世界の生きる者たちの

願いの一刀だった。

もう一回やれといわれても、

出来るか解らない。

そんなものが常時出来ると思われて

襲撃されても困るな。


「話を元に戻します。私が貴方を待っていたのは他でもない。その力を貸して頂きたいのです」

「あれをもう一度やれと言われても出来ないと思うんだけど」

「貴方と鍔迫り合いで、貴方の実力が風聞だけではないと解りました」

「まだまだだけど」


 そこからプレシレーネの話はこうだ。

プレシレーネは鍛冶屋の家系に生まれ、

魔界の技術だけではなく他の技術に興味を持ち、

学んでいたそうだ。

そういう魔族が他にもいて、その魔族に支持して

鍛冶を学んだ。

あるエルフからの依頼で、呪いを掛けられる剣を

作ることになる。

作って渡した後にエルフは実行に移り、

実行後剣を隠す為に洞窟の奥へ投棄した

という話を伝え聞き、この洞窟に来た。

その魔剣はエルフの魂を得て強化され、

魔界とこの地上を繋ぐような働きをし始めたんだそうだ。


「魔族としてはラッキーなのではないか?」

「そうでもありません。仮に魔界と繋がることになれば、魔族はこの地上に大挙して押し寄せるでしょう。そうなれば」

「ラグナロクが起こるんだね」

「そういう事です。魔族と言っても、ピンからキリまで居ます。制御出来る者ばかりではありません。師匠がそれを防ごうと剣を抜こうとしましたが、剣に拒否されたと言っていました」

「剣が拒否、ねぇ」


 俺は黒隕剣を見ていた。

意思を持つ剣か。

その意思は恐らくブルームの母親の魂を得て

悪意を増幅させたものだろう。


「それを俺に抜けと?」

「もしくは破壊して頂きたいのです」


 うーん、難しいことになった。

恐らくその剣が原因で、ブルームの母親は臥せっている。

意識も無いだろう。

壊すと言うことがブルームの母親の魂の開放に繋がるのか。

俺としては判断しかねる。

抜いた俺が呪われても困るしなぁ。


「あ」


 俺は思いついた様に呟く。

呪いの専門家と言えば、教会だ。

となればやはりここは専門家の指示を仰ぐのが一番だ。

丁度荷物も多くなったし、夕方になった頃だ。


「プレシレーネ、その解決方法をする前に専門家に相談しよう」

「と言われると?」

「街のシスター。教会なら呪いは専門だ」

「なるほど。確かに専門家に協力が得られれば最善です。ですが私は魔族故教会には近寄れません」

「俺が行くよ」

「え!?」


 三人娘はさっきまで黙って聞いていたのに

いきなり声を挙げる。


「それは僕が相談に行こう!」

「我が行ってもいい!」

「私が行きます!当事者だし」

「いや詳しく話す上に処方を聞かないと駄目だろうから。プレシレーネ、俺たちは兎も角一旦街に戻るがどうする?」

「私も参ります。道案内もさせて頂きますし、ここ数日まともに睡眠も取れていませんので、宜しければ同行させて頂ければ」

「良いよ」

「え!?」

「いや三人ともさっきから驚いてばっかりだな」

「コウの性質に驚いているのだ」

「僕はコウの性質に呆れてる」

「コウはやっぱり只者じゃないね」


 どういう感想だ。

 

「兎も角一旦街へ戻ろう」


 俺が切り出すと、プレシレーネは再びローブをまとい、

三人娘は何か恨めしそうな顔をして付いてくる。

どーにも色々面倒な事になってきたなぁ。

大事にならなきゃいいけど。

そう思いながら来た道を戻るのだった。

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