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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第二章・無職で引きこもりだったおっさんは冒険者として生きていけるか!?

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だんじょんデビル

 ゆっくりと下っていく。

階段などというご丁寧なものは無く、

誰かが何かを打ち込んだか放ったかして

出来たような穴だった。

地下二階はコウモリの流れを見て感じたより

複雑になっていた。

飛び移ると行ける穴が前に、

そしてそのまま下れば三階だ。


「取りあえず飛び移ろうか。三階にいきなり突っ込むと不意打ちを食らうかもしれない」


 三人娘は頷く。

先ずは俺が助走をつけて跳躍し、飛び移る。

先を見て警戒して大丈夫なようだったので、

手を伸ばす。

ファニー、ロリーナ、ブルームの順で飛ぶ。

ギリギリ手が伸びて三人を引き上げた。

俺が今回は先を歩く。


「宝箱発見!」


 脇の穴から宝箱が見えた。

俺は先に行き、足で軽く地面を叩きつつ

慎重に中に入る。

取り合えず宝箱までのストレートな道は

安全なようだ。

ブルームは俺が通った道を通り、

宝箱を解除する。


「お宝だ」


 中に入っていたのは、ペンダントだった。


「身に着けるなら鑑定してからにしよう」

「そうだね。呪いがかけられていたら危ないからね」


 ロリーナもそれを見て同意する。

リュックにペンダントを入れ、元来た道を戻る。

そして更に奥へと進む。

また脇の穴に宝箱があり、同じように道を確保し

ブルームが解除する。

二階は飛び移らなければ来れない所だったので、

お宝もしっかりあるようだ。

隠れ道みたいなものなのだろう。


「取り合えず二階に着て正解だったな」


 穴は四つあり、それぞれ宝箱があったが

罠は宝箱本体だけにあり、

中身も一階より良いものが入っていた。

ペンダントを初め、金貨に丸い盾、篭手に

短剣と面白そうなものばかりある。

そして一番奥は吹き抜けになっており、

三階を見下ろせた。

想像通りだだっ広い空間になっていて、

そこただ一人立つものが居た。

身を覆うようにローブを着ていたが、尻尾が出ている。

そして横の膨らみに頭部分の突起。

あれは……。


「魔族だの」


 ファニーが俺の肩から顔を出し覗き込む。


「結構強そうだよあれ」


 ロリーナも反対の俺の肩から顔を出して覗き込む。


「二人とも近いんだけど。頬当たってるし」

「当ててるんだ」

「そういうこと」


 どういうことなんだ。

おっさんの頬に当てて何が面白いのか。

俺は苦笑いしつつ、どうするか考えている。

あの様子だと、思いっきりこっちを待ち構えている。

罠に掛かったのを気配で感じたのかそれとも……。


「ネズミ、出てくるが良い。隠れても意味が無い事は解っているだろう?」


 こちらを見ずにそうその魔族は言った。 

当てずっぽうで言っている可能性もある。

少し様子を窺うか。


「そんなに私がお前たちの気配を感じるのは意外か?」


 なるほど。

俺が感じていたように、相手も感じていたようだ。

何か居ると。

ならこれは無駄だな。


「解った。ここから飛び降りるのは痛いんでちょっと待っててくれ」


 俺は顔を出してそう魔族に告げる。


「ああ、構わない。来るのはお前だけでいい」


 今度は俺の顔を見た。


「我らも」

「私たちも」

「うん、行こう」


 そういう三人を手で制した。

あれは一対一を望んでいた。

相当気高い魔族なのだろう。


「俺が倒れたら後は頼む」


 そう三人に微笑んで来た道を戻る。

恐らく三人が来て一緒に戦えば、勝率は高い。

だが、この世界に来て死線を潜り抜けた俺にも

剣士としての誇りみたいなものは少し出来た。

そしてあの敵は不意打ちをしようと思えば出来たのに、

それを捨てて待ち構えていた。

何だかそれに答えてやりたい気分になったのだ。

俺は弱い。

負ける可能性も勿論ある。

その為にも、三人には身を潜め準備してもらわなければ

ならない。

まだ俺たちは死ぬ訳にはいかないのだから。

 

 俺はゆっくりと地下三階まで降りる。

近付けば近付くほど、魔族の気みたいなものが

強く感じられる。

アイツは強い。

ただ妙な感じはしている。

王やアーサーのような悪意みたいなものが感じない。

魔族だからもっと狡猾で悪意に満ちているものだと

思っていた。


「お待たせ」

「言葉は要らじ。我らは交えるのみで良い」

「それが希望なら。いざ尋常に」

「勝負!」


 俺と魔族は同時に剣を抜く。

魔族の剣撃は眼鏡やアーサーに劣るが早かった。

しかし軽い。

俺は剣身を出して受けると体を横へスライドしつつ、

剣身を仕舞い柄で魔族の横腹を狙うが、

薙いでくる。

それを掻い潜り、鳩尾に一撃。

素早く距離をとる魔族。

流石耐久性が高いだけはある。

俺の一撃にも耐えた。


「……肉弾戦もいける口か」

「まぁね。アンタはもっと俺を侮ってくると思った」

「そんな無礼な真似はしない。お前のことは知っている」

「何?」

「知らぬはずは無かろう?アイゼンリウトを魔族の支配下に置こうとした同属を倒したのだ。しかもただの人間がだ。我ら魔族の間でも話題になっている」

「それは参った」

「そこで私はお前と剣を交えに来たのだ。どんなものかと思ってな」

「光栄だな」

「さぁ続けよう」


 そう言うと真っ直ぐ突っ込んできた。

振り下ろされた剣を剣身を出して受け止める。

衝撃波が起こり、地面にくぼみが出来る。

コイツも強い。

ここから本気ということか。

俺は振り払い吹き飛ばす。

魔族は着地すると、そのまままた突っ込んできた。

俺は剣身を出さない。

振り下ろされた瞬間、俺は体を横へ移動させ、

薙いで来た所を更に後ろへ回りこみ、

蹴り飛ばす。

魔族は突っ伏したが、すぐさま振り払う。

俺は飛び退き距離をとる。

そして直ぐに距離を詰めると、剣身を出し振り下ろす。

膝を着きながらそれを受け止める魔族。

今度は魔族の地面にくぼみが出来、

バランスを崩した所へ鳩尾に蹴りを入れ、

吹っ飛ばす。

洞窟の壁に体を叩きつけられる魔族。

俺は間髪居れずに間合いを詰め、

剣身を出し振り下ろした。

剣身の腹に更に腕を当てて、魔族は俺の剣撃を受けた。

凄いな、持っている剣も力も耐久性も。

種族の特性なのか。

 

「私を斬っても構わんぞ?」

「……どうも、な」


 俺は奇妙な感覚を持っている。

俺はこの魔族ともう少し斬りあいたい。

剣撃を交わすことで、喋るよりも解る。

まっすぐ澄んだ太刀筋。

魔族なのに、邪な感じが太刀筋からは感じられない。

それがなんだか好ましく思えた。


「お互い底が見えんな」

「そうだな。ローブを着ている時点でアンタは本気じゃない」

「……失礼した。貴方の技量を測るつもりが、貴方の邪魔になっていたようだ」


 魔族はローブを脱ぐと、俺と同じ様な軽鎧だった。

寧ろ俺より無駄な部分を省いて、最低限の防御のみを

残したものだった。

俺の蹴りで少しへこんでいる。

コイツは純粋な剣士として勝負してきたのだろう。

魔族なら特有の技を持っているはずだ。

魔術を使おうと思えば使えるはずなのに使わない。

本当に俺の技量を測ろうとしている。


「ならば改めて」

「本当に失礼した。こちらこそ改めて勝負を願いたい」


 お互いに一礼し、その可笑しさで笑い合うと、

次の瞬間に互いの刃が交差する。

早い。

後半歩遅れれば斬られていた。

其処から俺とその魔族の剣撃は素早く、

そして確実に急所を狙いつつ高速で

剣撃を交し合う。

お互いに笑みがこぼれている。

ぶつけても壊れない。

そんな確信めいたものを感じていた。

俺も魔族も速度を更に上げる。

その中には受ける際にずらしたり、

体を入れ替えたり、足運びも突かず離れずを

繰り返した。

もっと、もっとだ。

そんな声が聞こえてきそうだ。

だが俺は生憎と体力が無い。

そこで動きを速さからカウンター型へシフトする。

魔族は速度を保ちつつ、剣撃を繰り出す。

隙が無い素晴らしい連続攻撃だ。

だが。


「はぁっ!」


 切り返しの一瞬を付いて振り下ろす。

それを避けるが、俺はそれを狙っていた。

返す剣で鎧部分を狙って薙ぐ。

胴の部分に斬り口が残る。

一瞬怯んだのを見逃さず、今度は俺が畳み掛ける。

速度は前より無くとも、一撃を重くする。

剣身を出し消ししているため、魔族は俺の剣の間合いに

戸惑う。

これは使えるな。

俺はそう思うと一気に間合いを詰め、

ギリギリ拳が動く範囲まで行く。

そして黒隕剣の剣身をナイフの長さに調整し、

それで魔族の軽鎧の両肩を吹き飛ばし、

更に胸当て部分を抉り取った。

次いでに相手の剣の柄を下から叩いて弾く。

魔族は剣の行方を見ていた。


「俺の勝ちだ」


 魔族の喉下に黒隕剣の剣身を当てた。

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