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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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セカイを形造るモノ

 最後の方は息も吐かず静かに低めの声で言いきった。

だがその目は濁り、恨みが籠っていて

言葉からも表情からも伝わった。


「先生の御蔭で僕も道が開け才能のようなものも開花した。だが先生に恩はあってもそれ以外には無い。先生との対話や研究の中で、僕のこの力はどうすべきかを考えた」

「その結果が創造主?」

「形成能力を使う上で、地球についても研究した。その成り立ちは一から十まで奇跡の連続で、正直奇跡の二文字で片付けるには厳しかった。何しろ現在地球以外に地球と同じ星は無い。そこで僕は自分の能力に思い当った」

「……地球やその銀河を作った存在」

「そう、神様という名前の僕より優れた能力と頭脳の持ち主の創造主が居て、その結果なんではないか、と」

「あの世界はその実証実験のなれの果てか」

「なれの果て……と言われても仕方ないのかな今回の件で。僕が悪逆非道と言われても仕方ない。だがそれも含めて実証に近い形は出来たんじゃないかと」

「お前が見てきた現実もそうだから、同じようにあの星も放置したのか」

「ああそうだ。あの星で生きる人々の選択の結果だと思っている。オーディンのように手を加え過ぎると、あっさり絶望する。僕は人間を過大評価していない」

「神にでもなったつもりか」

「作ったといえばそうなるだろうね。人が動植物に配慮せず環境を破壊している事と同じだよ。規模が違うだけで。君は彼らと言葉を交わせたとして、自らの命を投げ捨ててそれをやめる? 食べるものはどうする?」


 それには俺も何も言い返せない。

オレイカルコス大陸では実際に動物を繁殖させ

それを食べると言う事をしている。

言葉を交わせたりしたら……。


「意地の悪い事をしたとは思うがね。でも実際そうすることでオレイカルコス大陸は蘇り、巨人族の人口も増えた。だから君への支持は揺るがない。彼らからすれば君は神に等しい」

「馬鹿な……」

「人の事が君に分かるのかい? 動物の事も多少は理解しながらも考える事は止めていたのに?」


 その問いに俺は言葉を失う。

確かにその通り。

以前引き籠っていた時は、

他人は俺の事を理解しないと

嘆き悲しみ憎んでいた勝手極まりない生き物だった。

だが大きく見ればそれは人間そのもので、

だからこそ事実は事実として受け入れ

それに捉われず真っ直ぐ生きる必要があった。

と、今は思える。


「確かに。降参だ。無職引き籠りだからな。お前を非難する事なんて出来やしない」

「拗ねられても困ると思ったが、表情からして案外素直に認めてるね」

「無論。この世界を駆け巡って、疑似体験させて貰ったんでね」

「君が体験した事は全て君にとって真実だと思うよ。例えそれが君が生まれた世界では無かったとしても、あの世界で生きている人は偽物ではない」

「全ては俺に有利な世界だがな」


 それを聞いてクロウは一瞬目を丸くした後、

笑い始めた。俺はそれをいぶかしんだが、

あまりにも笑い続けるので最後には一緒に笑ってしまった。

暫くして落ち着いた後、再度クロウは話し始める。


「いやぁすまない。しかしやっぱり君は誰とも違うね」

「というと?」

「オーディンは”何が可笑しい”と怒り、アーサーは”どうかしてる”と蔑んだ。だが君は僕と笑ったんで」

「まぁあの二人ならな。それに俺はロキとの付き合いも長いし」

「それもあるだろうけど、結局は考え方の違いだと理解しているんじゃないのかい?」

「……まぁな。能力は貰ったし黒隕剣も貰ったし。その御蔭で潜り抜けられたのは間違いないけど」

「そう、それなら神にも悪魔にもなれる。君に完全に有利な世界なら、圧勝し続けていただろう」

「しかし黒隕剣はズルいかもな」

「定期的に行っている世界の観察だったんだけどね。自らやましい事を起こそうとする人間にとって邪魔だったんだろうし、それを加工する事で観察自体は出来るから介入を遅らせる事は出来るだろうと踏んだんだろうね。一人のエルフの人生を引き換えに。まぁ李の式神も妙な知恵を付けて欲が出たのも原因だ。だからこそ僕たちには最後まで想像が出来なかった。だからこそあまりにも一方的になり過ぎては公平ではないと考えて、多少の力添えはしたつもりだが」

「大分助けられたよ」


 俺がそう言うとクロウは笑顔で頷いた。


「君も気付いていると思うが、他にも異世界人は沢山居たんだ。アーサーやオーディン以外にも。気付かないうちにあの世界で生を終えてしまった人もいた。そう言う人たちにも能力を授けている。グラディウス国の王も実はそういう血筋なんだ」

「クロウディス王が?!」

「ああ。勿論血だけでどうにかなるものではないけれど、そういう要因もあった」

「……何故異世界人が、時代も違う者たちがここに居るんだ?」


 俺の問いにクロウは飲みかけた紅茶を一旦置いた。

そして暫く俺を見た後、口を開く。


「僕が実証実験をしたというのは覚えているね?」

「ああ」

「世知辛い事を言うけれど、実験を一人でやるにはお金が足りない。魔力も無尽蔵ではない。長い時を紡がなければならない。他の魔術を使うものがどういう存在か知らないけど、僕は生涯をこの実証実験に賭けようとした」

「スポンサーか」

「そう言う事だね。李にも協力はしてもらったし、先生にも協力してもらった。だけどそれだけじゃ足りなかった」

「どういう点で? 金だけじゃないだろ?」


 そういうとクロウは暗い顔をした。

暫くして溜息を一つ。

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