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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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フェンサリルを行く

 そうこのフェンサリルでバルドルの死を

嘆き悲しむフリッグの予言がされていた。

今それを覆してバルドルは俺たちとこの中へと入る。

三人で門を開けるべく扉を押す。

固く閉ざされていると思いきや、

案外すんなりと開いた。

そして目に飛び込んできたのは

金色に埋め尽くされた空間だった。

地面には霧が発生しており、

若干歩きにくくなっている。


「あの木々は……」


 アーサーの言葉に街路樹に視線を向ける。

ナラの木の上の方にはヤドリギがあった。


「しかし皮肉だな。オークに宿るヤドリギは神聖視されているにも関わらず、君の死因となるとはな」

「フン。母さんもそそっかしいのさ。人間味あふれるだろう?」

「皮肉だがな。それより気を付けろよ? 奥に行く前に死なれても困る」

「死なないから心配するな」

「随分と自信があるようだが?」

「やってみたが死ななかった」


 金色がひしめく街を歩きながら

話をしていると驚く事を言いだした。

俺とアーサーは立ち止まり、バルドルを見る。


「……お前らの見ている世界だけで物事が起きている訳ではないぞ? いきなりロキが俺のところへ来てヤドリギを投げつけてきたんだ。避けたつもりが左腕に命中して」

「ロキが……?」


 ……アイツやっぱり何か企んでるな?

大人しくやられるタマじゃないのは分かっていたが。


「では急所にさえ当たらなければ死なないと?」

「今生きてるから死なないんじゃないかな」

「……雑だな。腕は何とも無いのか?」

「ああ、跡が残らないようジェルジオ侯が手当てしてくれた」

「その話は誰かにしたか?」

「いいや。ジェルジオ侯に心配かけたくないし、ヘズも気に病むだろうから黙っておいた」

「そらけっこう。で、ヘズとジェルジオ侯を取り合ったりしてないだろうな?」

「取り合うってなんだ取り合うって……。ヘズは別に気に入った相手が居るらしい。戦いがおわ」

「いやそれ以上言うなマジで。フラグ立てんな」

「そうか……? まぁ兎も角俺はこうして生きている訳だから。もう無敵よ無敵!」

「んなわきゃない。急所を狙われたらお終いだろう? 恐らく即死が免れる程度で」

「だろうな。怪我はしているわけだし」

「あ、そうか」


 俺とアーサーは見合った後溜息を一つ吐いて

街の中を歩く。しかしロキはバルドルが死なない事を

どうやって見抜いたのか……。


「物語の書き換えが行われているようだな」

「……名前だけ追えばそうだな。だが恐らくそれだけじゃない。バルドルの誕生だけじゃない。ヘズとヴァーリも順番が逆になっている」

「そうなのか?」

「ああ。兄と弟が今は逆だ。俺はてっきりロキが姿を消した後、ヘズを唆して話を元に戻すべく消そうとするかと思ったんだが」

「それをしなかったという事は」

「そこに意味がある……ロキは俺を利用しようとしているというか利用しているはずだ。本来の自分の役割を奪われた復讐に」


 ロキの本来の役割は狂言回しだ。

何も無いところに事件を起こし話を進ませるのが役目。

更に言えばオーディンたちを消してしまうのが目的でもある。

俺が力を持ち過ぎれば、それは調整される筈。

だが神側に有利な状況が次々と生じ、

反対に俺の力が強化された。

バルドルは一見こちら側に見えるが確実にそうではない。

そしてバルドルが生きている事により、

フリッグさんは悲しむ事は無くなった。


「自らの手でゼロに戻そうとしているのか?」

「だと思う。オーディンがしようとしている事は、絶望から来る人類と言うか人型種の死滅。だが一方で息子のバルドルはこうして生きている。迷いの象徴というか人の希望とでもいおうか」

「死滅と言う未来に進もうとしつつも迷いが生じている今こそ、ゼロに戻すチャンスだと?」

「ゼロに戻れば役割も何もかも元通りにやり直しになる。そしてそこには俺たちは居なくなる」


 ロキの望みはそうだろうと思う。

今回ゼロに戻す手段として俺とオーディンの疑似ラグナロクを

誘導し、決着後の再生。俺と言う特異点は無くなる、

というのがロキの算段だと俺は考えていた。

俺はリアンを見るが、周りを警戒しているのか

きょろきょろしている。


「何か?」

「うーん、悪意の様なものを全く感じなくて……」

「だろうな」

「というと?」

「悪意なんて向けようがない。彼女に悪意なんて最初からないのさ。それはリアンが一番分かっているはずだ」

「……ですがオーディンを呼ぶ為には」

「そう、呼ぶ為にはそれだけの生贄が必要になる。だがそれには足りない」


 暫く街の中を進んでいくと、一番奥に

背の低い城が目に入ってくる。


「どうやら迎え入れてくれるらしい」


 城の門は開けっぱなしになっていた。

俺たちは遠慮なく通り、その後門が閉まる。

俺たち以外は必要ないと言う事だろう。


「さぁ母上との対面だバルドル。腹は決まっているか?」


 振り返ってバルドルを見る。

俺の形態の所為で熱いのかそれとも緊張しているからなのか、

じわりと額に浮いた汗を拭いながら、


「当たり前だ。ここまで来て今更無用な問答だ」


 と前を睨みながら突っ張る。


「良い気合だ。では行くとしよう」

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