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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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進む者

 神性を増したスルーズは、

俺と同時に間合いを詰める。

俺の方が少し早く斬りかかって、

スルーズは受ける側になった。


「不味いな……」


 俺は率直な感想を口にする。

太陽剣がフレイから得た知識や経験による

補正が俺に掛る。何が凄いって重力を

丁度良い具合に調整しているところだ。

吹っ飛ばないよう軽減してくれているから

安心して加速できる。

ただ心配なのは調子に乗りすぎて、

特異点を発生させないようにしないと。


「まぁ今更か」


 そう、全ての事象が俺に集まりつつある。

滅びるか否かも俺の行動に左右されていた。

まさにブラックホールのようになっている。


「隙あり!」

「ないよ?」


 俺が空振りした後左脇に槍を突きだしてきた。

だがそれも無駄な話。元々の早さが違う。

俺は突きだされた槍をするりと掻い潜り、

スルーズの鎧の鳩尾部分を強打する。


「げあは」


 威力も段違いだと思う。人間は何だかんだで

拳が壊れないよう肩が壊れないよう、

脳でブレーキを掛けている。だが俺には今それは無い。

 元々生きて来て自分自身があやふやではあったが、

異世界に来て進んでいくうちに、自分の中で

ある程度答えは得た。

考えている自分だけが全てだ。思い巡らせるコウという

人間以外に答えは無い。自分が何者なのかという答えも

必要無い。俺は俺でしかなく、それ以外の何者にも

なれはしなかった。力を得たところで王になったところで、

俺は俺のやりたい事をしてきた。

快楽を手に入れたい者や富を手に入れたい者、

弱者を嬲りたい者。

俺はそれらと分類するなら、楽になりたい者だ。

俺がやりたいことは自分が楽になる為の事。

そして俺が楽になる為には、もう最後に辿り着く以外

道は無いという提案に同意しここまで来た。

死ぬ事では楽にはなれなかったのなら、

最後に自ら辿り着く他もう無い、と。


「今更構うものでもない」

「うぐぁ……」


 数多の雷を掻い潜る事もせず、

ただ真っ直ぐに飛び退き逃げるスルーズを

追いまわし、足が鈍ったところで再度鳩尾を叩く。

一撃だけでも大分鈍った動きが、

更に鈍る。その鈍った足でファニーたちに

近寄ろうとするスルーズ。


「どこを見ている」


 俺はあっさり追いつき並走した後、

鳩尾を執拗に連打し、更に肝臓目掛けて

太陽剣の柄で叩きつけた。

スルーズはそのまま横へと吹き飛び

腹を押さえて蹲っている。

構造が不明だが、恐らく人に近い構造なのだろう。

正直スライムの様な作りだったらどうしようと思った。

見た目とかの締まらなさがあるが、

敵としては割と難しい相手だなと。


「コウ……」


 ファニーを始め恵理たちの声が

背中から聞こえてくる。少し怯えたような声だ。


「問題無い。恐らくこれで止まるはずだ。人と同じ作りなら。アーサー!」


 俺は振り向き安心させるように微笑む。

そして元異世界人の戦友を呼んだ。


「何だ?」

「恐らく狙いは全て殺させてからの召喚だと思う。出来れば捕えて生かしておきたい。アーサーの力を剥がされた彼らにそれは可能かな」

「君のところと同じくらいには鍛えてある、と答えておく」

「そうか……。アシャラ!」


 俺が十番目の親衛隊長の名を呼ぶと、

素早く俺の元まで味方を掻き分けて来た。


「陛下!」

「敬礼は良い。戦況はどうか」

「はっ! 陛下のお力に見せられて全員が奮戦し、スカジの兵を何とか抑えました。今は対ヴァルキリーと数人残っているヴァルキュリアの討伐に掛っております」

「すまんな、出来れば捕えて欲しい。そしてこの戦いが終わるまで逃がさないで欲しい。自殺する様な事も無いよう監視してくれ。戦いが終わった後は皆に判断は任せる。俺の我がままが無ければあいつらは今死んでいたし。だが惨い事はしてくれるなよ?」

「勿論です。陛下のお名前を、その背中を汚すような事があれば、誓ってその者たちを地獄へ送ります!」


 アシャラは興奮したように声を張り、

目は空を見て敬礼しながら答えた。


「ありがとう。アシャラ、お前の戦いぶりも見事だぞ。おいそれと斬り込みに行かず、他の先輩隊長たちのフォローをしつつ部下を導いて」

「陛下……」

「後は頼む」


 俺は短く言うと、アシャラは涙目に

なりながら首を大きく縦に振る。

俺は強引にアシャラの右手を両手で強く一回握った後、

左肩を軽く叩き体を百八十度回転させて送り出した。


「行くか」

「ああ。どういう条件かは分からないが、これで多少は妨げになるだろう。ファニー」

「なんだ」

「ウーナの事頼む。暫くは寝込んで何も出来ないだろうが」

「我は共に行くぞ?」

「いいから。抗ウイルスワクチンとしての効力が残るか分からない。ファニーが居てくれたら恐らくそれも抑えられるはず」


 俺の想像だが、ヴァルキュリヤの力は

対人間種に絶大な耐性があるんだろうと思う。

攻撃する際には一撃が倍になるくらいの。

ファニーは竜種だ。竜種の繁栄の具合を見れば

神々が御し難いからだろうと考える。


「さぁ道案内致しましょうかね」

「母上はいつ裏切るのかな?」


 アーサーの言葉に反応し、

飛びかかろうとするリアンを

手で遮る。今はもう握れない。

その間に相棒たちが鞘に戻ってきた。


「私は行く権利があるわね?」


 恵理は何時ものように高飛車な

ポーズをとって微笑みながら俺に訊ねる。

俺はリアンを見る。当然の答えが返ってきた。

返答をどうするか考えた。


「ロキがどこから出てくるかも分からない。その為にここに残ってくれ。ナルヴィと二人で」

「陛下」

「……まぁこの戦力差で我儘を言うほど私はダサくはないわ。でも約束してね。必ず帰ってくるって」

「まぁ負けるつもりは更々ない。勝っても戻ってこなかったら散歩に出たとでも思ってくれ」

「強引に呼び戻すわ。形見っぽいものがあれば召喚できるって何かのアニメで見たし」


 恵理が冗談めかして悪戯っ子のように

笑いながら言う。俺もつられて微笑む。

それを聞いてリムンもエメさんも押し黙った。


「じゃあ後は宜しくってことで、行きますか」

「ああ」


 俺とアーサーはスカジ本国へ向けて歩きだした。

と思ったらファニーも付いてくる。


「おいファニー」

「コウ、御主我との約束を忘れてはいまいな?」

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