スカジ戦その4
「くっ……!」
剣撃を交わしているうちに
どうやらオベロンは違和感に気付いたらしい。
オベロンの視線の先にはリアンは暇そうに、地面に刺した
黒刻剣の柄頭の上に座っていた。
「よそ見をしてる場合かよ!」
俺はオベロンが一瞬気が逸れたのを見て、
黒隕剣で思い切り叩きつけた。
キン! という金属音と共に空を切る音が
天気の良い空に響く。
「剣を持て!」
「させるか!」
エルフとヴァルキリーが弾かれた剣を
取ろうと後方から飛び上がったが、
それらを切り伏せて剣を奪取する。
「へぇ……これは大分軽いなぁ。レイピアってやつか」
「おのれ……それを返してもらおうか」
「誰がはいそうですかと返すか」
俺は太陽剣を左手に黒隕剣を右手に持ち、
オベロンに迫る。
「悪いが陽が真上に来る前にケリを付けさせてもらう」
「くぅっ……仕方無い」
オベロンは飛び退いて上着を脱ぎ上半身を裸になった。
脇をしめて力んだオベロンの顔には血管が浮き上がる。
「おいおい後何回変身予定か先に教えておいてくれるか?」
「ははぁ……後にも先にもこれっきりだ。これをしてしまったが最後、今までの様に優しくはしてやれんぞ」
「……悪役かな?」
オベロン自体が輝きを放ち俺は腕でそれを遮った。
膨れ上がる禍々しい気……と言いたいところだが、
あまりそんな感じでもない。勿論大きくはなったと思うが。
「見るが良い。これこそが真のフレイ」
輝きが治まったので目を開けてみると、
白銀の鎧を纏い、金色の煌びやかな盾を持って
オベロンこと真のフレイは立っていた。
「随分と重武装じゃないか」
「無論だ。これで隙が無くなった」
「そうなの?」
俺はリアンを見るとつまらなそうに
首を横に振った。
視線を真フレイに戻すと白銀の気を纏い
揺らめかせ、偉そうに立っていた。
「あまりの強さに絶望させてしまったかな? 更にこれを出すのは哀れですらあるが……」
白銀の鎧は空に手をかざす。
やがてその手に太陽の光が差すと、
徐々にそれは黄金色の大剣の形を成していった。
「へぇ……こりゃすごい」
「ふふふ……絶望したまま死ぬが良い」
「コウ、少し失礼」
リアンの声に振り返ると、
何故かおでこにきつい一撃を喰らわされた。
「いってぇ!」
「これで問題ありませんわ。思う存分やりなさい」
「問題無いってどういう問題があったんだ……」
「隙有ぃぁ!」
前に向き直ると、大剣を振りあげた
真フレイが迫って来ていた。
星力を黒隕剣と太陽剣に通してそれを受け止める。
「小賢しい!」
真フレイは大剣を引いて金色の盾を突きだしてきた。
俺はそれを避けて脇に回り込む。
真フレイは体を泳がせたまま大剣で払ってきたが、
俺は更にそれを避けて脇腹に太陽剣で一撃打ちこむ。
「ぐあっ」
鎧に傷は付いていないようなので、
どうやら衝撃は与えられているようだ。
この剣使えるな。
「おのれ卑怯者め」
「何が卑怯なんだ」
「私の剣を返してもらおうか」
「だから嫌だって言ってるだろ? それにそんな大きな剣があるんだから必要無いじゃないか」
「そういう問題ではない!」
「じゃあどういう問題なんだ」
「貴様には関係ない」
「なら返すかばーか」
俺は太陽剣というレイピアの扱いに慣れようと、
黒隕剣で斬りつけつつ高速で突きを繰り出してを
繰り返していた。
真フレイは盾で凌ぎつつ大剣を振り回していた。
流石真上近くになっただけあって、
大剣を小剣のように振り回す。
当たれば痛い。だが面積が如何せん広い。
俺はその合間を縫って太陽剣で一つ二つと入れていく。
刺さりはしないまでも衝撃は加えられる。
特に音が響くので愉快な気持ちにはならない。
そうなると真フレイの攻撃の手は自然と緩やかになっていく。
「どうした? 攻めてこないのか?」
「くっ……どういう事だ? 山からのエネルギー供給を得ているにもかかわらず、貴様に対して圧倒的な差を広げられない」
「不気味だろう? 供給を得ているからこそ全開に上乗せしたパワーを感じているのにな」
そう、恐らく場を有利な状態にした事で、
能力の上昇やコスト軽減でとてつもなく回転率が良い
デッキになった筈だったし、実際なっている。
が、俺も生憎と面白い相棒がいる。
「おっと!」
俺を無視してリアンと黒刻剣に
飛びかかる真フレイ。
「狙いは良いが甘過ぎだろ」
上段に構えた隙を突いて
黒隕剣でそのがら空きになった
横っ腹を叩きつけた。
「ぎぎ」
衝撃に耐えつつ大剣を振り下ろす真フレイ。
根性あるじゃないか。
「残念賞」
リアンは頬杖を突きながら微笑む。
真フレイの刃はリアンとの数センチの差を埋める事は
出来ずに止まっている。
「なん!?」
「これが残念賞の褒美だ。受け取れ!」
俺は左足で思いきり大地を踏みしめ、
右足を振り上げそのまま真フレイの横っ腹を
前へ押し出すように蹴った。
ガーンという音を連れて吹き飛ぶ真フレイ。
「さてと、ちょっくら行きますかね」
「おっさんくさい口調はお止めなさいな。私からしたら貴方はまだそれほどでもないのですから」
「失礼」
俺は黒隕剣を鞘に納めた後、
リアンを右肩に乗せて黒刻剣を
地面から引き抜いた。
そして問題の場所へと向かう。




