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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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夜の歌

コウヨウ兵たちの雄叫びを聞いて、

俺たちはホクリョウへと向かう。

半日と立たずホクリョウへ到着。

ホクリョウではカトルに

ノウセスアシンバ両将軍、

セロやアインスを始めとした親衛隊。

更にリクトやハンゾウの忍びの里衆も加わる。


「いやぁ懐かしい顔ばかりだ。俺と黄泉の旅路につくには少し立派すぎる面子だ」


 俺は左胸に拳を当てて出迎えてくれた、

将軍から一兵士に至るまで

勇ましい顔をした者たちにそう声を掛ける。

そして一人一人と握手と言葉を交わし

ホクリョウの中に入る。

久し振りに俺も加わり調理に入る。

兵士一人一人に食事を渡し、食事の際も

皆のところを回り声を掛ける。

ただあまりうろうろしていると

皆の緊張を煽ってしまうので、

ひとしきり回った後に指定された場所で

ファニーたちと食事を取る。


「こうして空を見ながら食事というのも良いものだ」

「確かに。外で寝るのも良いぞ?」

「なんか日に日に逞しくなるわねコウは」

「そうだのよ。おっちゃん野性味が出過ぎだのよ」

「良いのでは? 自然は力強い」

「……興が乗りましたわね。ここは一つ私が歌って差し上げましょう」

「これは有難い」


 食事が終わって皆一息吐き、

空を見上げたりと少し静かになっていた。

その空間にリアンの歌が流れる。

歌詞は妖精語なのか分からないが、

とても良いメロディーで目を閉じて耳を澄ませる。

これまでの出来事が走馬灯のように頭の中で流れていく。

最初はパジャマ姿でこの世界に降り立った。

貶められて牢に閉じ込められたり

竜の生贄にされそうになったり。

冒険者として国を救い大陸を救い

そしてここに辿り着いた。

多くの人に助けられて着た。

有難い事だ。感謝しかない。


「いよぅ邪魔するぜ」


 歌が終わり皆が火の音のみで

夜空を楽しんでいるところに、

大きな声が飛んでくる。


「随分と遠慮のない奴だ」

「すまないな。だが時間も無いようだから割り込ませて貰うぜ」

「久し振りだと言うのに雑な挨拶だ」

「俺にも一つ貰えるか、それ」

「先払いになっております」

「いくら?」

「見合う対価を」

「ならもう払っている」


 その男は兵士たちの間を縫うように歩き、

俺の目の前に来るとそう言った。

筋肉質で毛深く声のデカい大男。


「もう払っているとはどういう事かな」

「一つ一つ説明するのは面倒だ。アンタの為に幾つか骨を折ってやった」

「具体的に言え。お前は最初に会った時もそんな感じだったな」

「覚えていたのか」

「勿論。金持ちになれたか? 見た感じそういう風には見えないが」

「言い訳はしないさ。だが諦めてはいない」


 俺は残っていた一杯を大男に差し出す。

今はズボンしか履いていない毛深い大男は

味わいながら食べ、汁まで飲み干すとドンブリを

床に置いて手を合わせた。


「お前のラーメンの敗因を教えてやろうか」

「言ってみろ」

「この大地に無いものを入れ過ぎだ。出来あいの物を放り込んだところで、舌に合わない」

「なるほど。だからお前は大地を回復させる事を始めにしたのか」

「そう言う事だ。で、お前は何をする」

「さてな。だが安心しろ、お前の敵になる事は無い」

「それだけで十分だ」


 俺は大男に手を差し出した。

大男は俺の手を取り立ちあがる。


「武運を祈る」

「そちらもな。歌の余韻に浸るのを邪魔した詫びは何れ」


 そう言って大男は去って行った。

もう少し会話をしてもよさそうなものだが。


「ホントに無粋な男ですわね」

「リアンをあまり見なかったな」

「それはそうでしょう。元より相容れないもの。見なかったというより視界に入らなかったというのが正解でしょう」

「難しいな。それより歌、ありがとう」

「どういたしまして。明日から激戦になりますから、皆の癒しと勇気になれば」

「御代は?」

「私ももう頂いてますわ」

「そうか」


 俺は敢えてそれ以上言わず、空を見た。

星は煌めきを増しているように見えた。

不思議な感じはしても奇妙な感じはせず、

ただじっと見ていた。


「そろそろ寝るか」


 ファニーの声に我に帰り、

ファニーを見て頷く。

そして片付けをした後就寝した。

明けて翌日。俺たちはホクリョウで待っていた

者たちを引き連れてアイロンフォレストに到着。

ジェルジオ侯やルーテルの新スカジ軍と

アーサー率いるカイヨウ軍の出迎えを受ける。


「お待ちしておりました陛下」

「遅かったなコウ王」


 二人も最終決戦に備え、

其々鎧を豪華に新調したようだ。


「待たせたな。守備はどうかな」

「問題ありません。特に敵に動きは無く」

「だがそろそろ来るだろう。フレイタイムだからな」


 そう陽が完全に顔を出し、

真上に近付くにつれフレイの力は増していく。

それが恐らくエルフたちにも影響を与える。


「そう言えばジェルジオ侯、例のあれは元気か?」


 そう俺が問うと、ジェルジオ侯はうんざりした顔を

して


「元気も何も。あれだけ絞ってもやかましいのですから、どうやったら大人しくなるのか聞いてみたいものです」

「陛下!」


 後ろから声がする。

笑顔を携えた二人と仏頂面の一人が前に来る。


「どうやら少しは絞れたらしいな」

「はい。陛下の手配の御蔭で今ではコウヨウからカイヨウまで泳いでいけるほどに鍛え上げました」


 ヘズはニッコリ笑顔でそう告げ、

ヴァーリは眉をへの字にして頷き、


「けっ。覚えてろよ、ぐは」


 と悪態を吐いた途端ボディを四人に殴られるバルドル。

最初に会った頃のバルドルよりも

更に絞られてきたようで、見た目からしてスリムになっている。


「覚えていてやるとも。怠惰の海を越えて来たのだから歓迎するぞ?」


 俺が手を差し出すが、目を逸らし手を後ろで組むバルドル。

俺が苦笑いをすると、ヴァーリにヘズ、

ジェルジオ侯にルーテルの四人に抑えつけられた。


「良い良い。ママンに会わせてやるから大人しくしておくように」

「覚えてろよ!」

「それしか言えんのか」

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