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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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悪戯妖精とエルフと

「うーん」

「さてどうしましょうかね」


 リアンと二人腕を組んで状況を見る。

囲んでいた者たちは取り合えずせん滅した。

ホクリョウの街は門を閉めて上から矢を放っている。

エルフは身軽ではあるが飛べる訳ではない。

魔術も使えないこの大陸ではその身体能力のみだ。


「特別対策を立てる必要もなさそうだ」

「そうですわね」

「……すまないな。仲間を」

「……仲間? 私にはそんなものは居ませんわ。群れた事などありませんし」

「そうなの?」

「ええ。生まれた時に既に一人でしたし」

「花の蕾とかで生まれてそこから育てられるみたいな感じじゃないの?」

「色々ですわよ。新鮮な朝露から生まれる者もおりますし」

「リアンは?」

「私は崖から少し顔を覗かせていた水晶に付着した水が落ちた先の花から生まれました」

「……誇らしいのね」

「それはもう。妖精と言っても広くいますから生まれも様々です。リャナンシーと言っても全て同じではありませんよ? 日本人だからといって生まれが同じ場所じゃありませんでしょ?」

「確かに」

「エルフは言わば他国人。特に何とも思わないですわね」

「了解。したら何か名案は無いかな参謀殿」

「恐らく何の意味も無い襲撃ですので、ちゃっちゃと片付けましょう。お茶の時間が近いですわよ?」


 俺は小さく笑った後、城壁に群がるエルフを

斬り伏せていく。さして時間はかからず第一陣を撃破した。

城壁の上でリアンとお茶をする。

リアンの言う通りその日は何事も無く過ぎていく。


「なるほどね」


 翌日も同じ時刻にエルフが襲撃してきた。

ヴァルキリーの襲撃にも備えようと思ったが、

リアンから必要無いと言われたのでせずに

対処した。


「あれはオベロンの妖精郷の(アルフレイム・ゲート)から呼び出された者たち。この世界とは違うところに住んでいて、妖精郷の(アルフレイム・ゲート)を通る事により可視化されます。ですので倒れれば消えるだけです」

「オベロンが居る限り沸いてくる、と」


 リアンはつまらなそうな顔をして頷く。

向こうに実害は無いかもしれないが、

気分は決して良いものではない。

そういう罪悪感を麻痺させて

倫理観を崩壊させようと目論んでいる訳では

ないだろうが……。


「ちょっと別の策を講じてみようかな」

「というと?」


 俺はカトルや工兵長たちを呼んで早急に会議を開いた。

そして直ぐに用意を頼み翌日。

エルフたちはいつものように襲撃してきた。

が、今回は俺たちはただ見るだけで何もしない。

弓を装備していない状態では俺たちを攻撃する事すら

ままならない。

城門を壊す事も出来ず、這い上がろうにも

昨日ろうを垂らしておいたので上る事も出来ない。

暫くすると別の入り口を探すべく横へと広がった。


「今です!」


 リアンは俺の頭の上を旋回する。

すると塀の両端に居た兵士たちが手を挙げた後、

その後ろの兵士たちが縄を引っ張る。

次の瞬間横に広がったエルフの兵士たちは、

地面から飛び出て来た網に掛り、一斉に閉じ込められた。

何とか抜け出そうと暴れた為、地面が崩れて落ちた。

昨日網を敷く前に粘土が固まったものを敷き詰め砂を

掛けておいたのが役に立った。土掘り楽しい。


「うーんあんまり見てくれの良いものじゃないな……」


 完全に網の中に閉じ込められ穴で暴れるエルフたち。

彼らの細い剣ではそう簡単に斬れはしない。

そしてそこはもともと堀であったので割と深めで

這い上がるには大変だろう。

うちにも工兵長で穴掘りに造詣が深い人間が居て、

堀を利用しているが断面が丸になるような作りにしている。


「どうします?」

「そうだなぁ。また粘土版で隠して砂掛けておこう。それと第二波第三波に備えた仕掛けも。オベロンの妖精郷の(アルフレイム・ゲート)に対してあんまり意味無いかもだけど」

「面白いですわね」


 リアンは意地悪そうに、企みありありな顔で微笑む。

こうして罠量産計画は始まった。

エルフは人間よりも長命で、その分知識もあり

伝統と自然にこだわりがある。

割と思考が凝り固まりがちで、悪戯にはあまり縁が無い。

対してリャナンシーたちのような妖精たちは

悪戯が本分のようなところがある。

リアンの指示のもと、ホクリョウの北側は罠を張られまくる。

埋まった場所には補強して俺たちの行動の妨げに

ならないようにしていく。

小さいものはエルフたちを網のまま引きずり出し

別の場所に保護しておく。

 エルフ捕獲ウィークが始まる。

リアンは忙しそうに飛び回り、

嬉々として罠を調整し発動させて捕えまくる。

ただ穴はきちんと塞いでおかないと、

知らない言葉で叫んでいて煩いので

リアンと指揮下の兵士たちに徹底させた。

オベロンを倒せば止むだろうから

それまでの辛抱だ。


「しかしこんな事になってもまだ来るのかね」

「確かに。練成している訳ではありませんから、限度はあります。どのくらいでそれを迎えるかは分かりませんが、彼らも生きていますので」

「だろうね。この世界と違うエルフであろう事は言葉で分かるし、意思もあるようだからね」


 意思が無ければ変な歌を歌ったり

抗議めいた事もしないしな。


「コウ、あまり優しくしすぎないように。この世界に根付こうとしますよ?」

「気をつけます」


 飢え死にさせるのも忍びないと思い

ご飯を出してみたところ、

少し大人しくなったので引き続き配給しようとしたが

リアンにそう言われて考えを改め直す。

オベロンを倒せば彼らも元の世界に帰れる。

その為にも急がないといけない。

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