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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第二章・無職で引きこもりだったおっさんは冒険者として生きていけるか!?

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だんじょんとらぶるー

 アイルを出て草原を行き、農家の人を見かけたので

リムンの近況を伝えると


「そうか、良かったのかもな」


 と小さく笑った。

俺も小さく笑う。

親と一緒が一番良いだろう。

でも寂しいよな、とは言わなかった。

農家の人もそう感じてくれていたようだ。

実際寂しさはある。

何とか一人前に、と思っていたし。

でもそれはわがままだと感じて、

リムンを置いてきた。

 

 農家の人と握手し、野菜を持ってけと

言われ、荷物に入れた。

薬草などを買うときに、リュックも

購入した。

備えは万全だ。

荒れた森に入る。

まだ森は復旧していない。

自然に戻るのを待つしかないから仕方ない。


 俺とファニー、ロリーナは洞窟の前に立つ。

皆中に入ろうとしなかった。

それもそのはず、何か淀んだ空気を感じたからだ。


「行こうか」


 俺がそう切り出し、中へと進む。

少し歩くと暗さが増してきた。

松明も勿論購入してあったので、

ファニーに軽く火を吐いてもらい、

松明を持って進む。

 

「しかしホントに空気悪いねここ」

「ああ、リムンが中に入らなかったのは正解だな」

「どんどん中が広くなってきたな」

「うん……アリの巣みたいになってきたね」

「こういうところでは宝箱を狙って罠に嵌ったのが一人位居そうだが」

「あの宝箱ってなんなの?」

「何なのとは?」

「いや、例えばゴブリンの洞窟だとすれば、宝物を保管しておくってのは解るんだけど。そうじゃない場合は?」

「先に言ったように罠を張るためのダミーと本物を入れ込んでおくためだ」

「と言うことは頭が回る敵がいるってことか」

「恐らくな」

「魔族ってのはどこから来るものなんだろう」

「魔族は召還が主だけど、洞窟の一番最下層が魔界と繋がっていて、そこからくる場合もあるよ」

「それがこの最下層に待ち構えている可能性がある、か」

「有り得なくは無いね。ただ僕たちの場合は探索の依頼だから宝箱は漁らないけどね」

「まぁね。罠を解除できる人間が居れば、宝箱を巡ってもいいけど」

「そうだの。そんな人間を雇って収支がプラスになるなら良いが、大抵ハズレだろうしな」

「うんうん。雇った人間も宝箱もね」

「世知辛いな」


 俺がそういうと、前に何か気配がする。

松明を見えるように掲げると、其処には狼が居た。

しかも目が紫の。


「どうやら瘴気に当てられたようだ」

「大方餌を求めて紛れ込んだんだろうけど」

「ミイラ取りがミイラってか」


 俺たちは構える。

その後ろまで狼が居る。

どうやら群れのようだ。


「行くぞ!」

「おう!」

「あいよっ」


 ファニーがブーメランで口火を切ると、

俺は松明を左手に持ち、黒隕剣を掴み切り込む。

ロリーナも堕天剣ロリーナを抜き続く。

ファニーは巧く俺たちの後方からフォローして

ブーメランを器用に使って漏れた敵を叩いてくれる。

あっと言う間に狼の群れを全滅させた。


「これはこの奥にまだまだ何かありそうだな」

「だの。狼の様子からしてな」

「まぁ依頼は依頼だからどんどん進んでいこう」


 俺たちは辺りを警戒しつつ進んでいくと


「たーすけーてー」


 と素っ頓狂な声が脇にある穴が開いた壁から聞こえてくる。

どうしよう。見捨てたい気分だ。

こんな危険な場所に宝箱を取りに来て引っかかるやつ。

どう考えてもヤバイ。


「コウ、どうするの?」

「お主が考えているように、迂闊にも程がある奴だ」

「まぁでも見捨てていくのも夢身が悪そうだ」

「仕方ないか」


 俺たちは頷きあうと、警戒しつつ、その声の場所へと

入っていく。

ワンルーム位の部屋の奥で、宝箱前の落とし穴に埋まっている

間抜けた奴が居る。


「た、助けて」

「見捨てたい」


 俺はつい口にしてしまう。

それを聞いてその穴に埋まっている人物は涙目になる。


「そんなぁ……助けてくださいよぉ」


 情けない声を出すその人物を、

俺は足元を黒隕剣で叩きながら近付く。

そして何事も無く辿り着くと、引き抜いた。


「あいたたた」


 力の加減を間違えたのか、その人物は俺が引っ張った

腕を押さえる。

革でできた胸当てと肩当に薄布の茶色のシャツに、白のズボン

と簡素な靴を履いて、腰にはナイフを持っていた。

そして髪は金髪、耳はとがっていた。


「あんたエルフか?」

「そうさ!私はエルフのシーフ、ブルームだ!」

「そうか、じゃあな」


 俺はそう言って去ろうとすると、

軽鎧からはみ出たシャツを掴まれる。


「何だよ」

「女の子を一人こんなところに置いてくなんて酷くない!?」

「いや、俺たち忙しいんだ。帰り道はさっき狼の群れを倒したから安全だ。さっさと帰れ」

「え!?貴方達この奥に行くの!?」

「いや行かない」

「嘘だ!」


 即否定される。まぁ嘘だが。

こんな迂闊な娘を連れて奥に進むなんて、

命が幾つ有っても足りない。


「頼むよー。私役に立つから!お宝山分けしようよ!」

「いらん。俺は依頼を達成するだけでそれなりの金額を貰える」

「それにプラスすれば遊んで暮らせるよ!?」

「もう引きこもりは飽きた」

「引きこもらないで手に入れたお金で遊べばいいじゃない!」

「あのなぁ。そんな宵越しの金、そう長くはもたんだろうに」

「うぐぅ」


 何だようぐぅって。

俺は辟易していた。

ファニーとロリーナを見ると、二人とも

首が痛そうなほど横に振る。

いや、そうじゃなくて、この娘を説得して欲しいんだが。


「別にいいよ。私貴方達についていくから勝手に」

「帰れ」


 俺は間合いを一気に詰めて、黒隕剣をその首に近づける。


「貴方のその剣」

「いいから黙って帰れ。命だけはとらん」

「お願いします!どうしても、どうしても御金が必要なんです!」

「駄目だ」

「お母さんに薬草を、マンドラゴラの根を買わないと死んじゃう!」


 あからさまに嘘くさいんだが。

振り返って二人を見ると首を横に振る。

いやそれは良いから説得してくれよ。

なんか機嫌悪そうだし二人とも。

何なの一体。


「お願いだよ!貴方にしか頼めないの!他の人たちは誰も力を貸してくれないし。エルフだから……」


 全く強引に行くのが無理なら泣き落としかよ。

参ったなぁ。

俺は頭を掻きながら


「解った。仕方が無い。ただ俺たちは丁度良いところで引き上げるからな」

「それで良い!全然良い!貴方についていくもん!お願いします!」


 諦めて折れると、俺に抱きついてきて頬ずりする。

全くどこまで調子がいいんだコイツは。

エルフってのは保守的じゃないのか。


「はいはい離れてねー」

「そうじゃ。調子に乗るな」


 ファニーとロリーナに俺は突き飛ばされた。

何で俺が突き飛ばされるんだ。

意味が解らん。


「君名前は?」

「私はブルーム!お姉さんたちよろしくね!」

「我らと宜しくするのは良いが、コウとよろしくしなくて良い」

「そういう事」


 どういう事なの?

俺は意味が解らん事が多すぎて、探索の行方が怖くなってきた。

帰りたくなってきた。

とはいえそうも言えない。


「おーい三人とも先に進もう」


 俺は立ち上がり、3人に進むよう促す。

やれやれと言いつつ3人は着いてくる。

いやそれ俺の台詞だから。

そう言いたかったが、これ以上面倒臭い事は困るので

黙ったまま洞窟の探索に戻るのだった。

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