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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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雷の行方

「フル充電完了だ。見よ! これが雷神の一撃だ!」

「避けて!」


 雷神は力を入れて槌を振りあげた後、

俺に向けて野球のスイングをするように

振り下ろした。金属を叩くような音が

響いた後、俺は直ぐに右へ飛んだ。

リアンの声もあったが何か嫌な予感がした。


「出鱈目だな……」


 俺の元居た場所を見ると、

稲妻が横へ根を張るように伸びている。

あともう少し遅れていたら直撃していた。

ひとたまりもない。


「ふふ、良く避けた。が、これならどうだ?」


 雷神の体だけでなく、その下の雲も

大量の雷を集めていた。


「どうするか……」

「流石ラスボス級。パワーが今まで相手にしてきた中でも桁違いでしょう?」

「確かに。だが感心しても居られない。なんとかしないと」

「当然ですわ。でなければ死あるのみ。ただ状況は最悪。天の時、地の利は全てあちらにあります」

「何か名案は?」

「一つ一つ剥がしていくしかありません」

「剥がすってどうやって?」

「完全に解消が難しくとも、一瞬なら解消できる事はさっき確認しましたね?」

「スットゥングの技で」

「ならばあれをその中に巻き込んでしまえば宜しいのです」

「なるほどそう言う事か」


 さっきは雨雲を晴らす為だけに投擲したが、

そうではなく本来の使い方をすれば良いだけの話。

前に別の用途で使ったのが便利で

それだけになってしまっていた。


「彼は完全な元の姿ではありません。近くはありますが、完全な状態なら幾ら帯電させても影響はない筈。ですが治癒再生の為に使えると言う事は、逆に見れば傷が付き人と同じような構造になっていると言う事」

「限界があるってことか」

「許容量があると言う事ですね。勿論桁違いではあるでしょうが、幸い彼は自分で雷を呼び寄せ帯電させています。放出時のエネルギーは更に強い」

「で、それをまんま返すにはどうしたら」

「あの技の空間に居る者なら大丈夫でしょう。ただ恐らくそうするとこの槍は使えなくなりますが」


 それは少し困るなぁと一瞬思った。

以前トウシンの首都で会ったマグマの巨人。

あれが味方なら良いが、敵だった場合

スットゥングの技は決定打となる一撃になる。


「正直天秤は並行ですわ。選択はお任せします」


 雷神と釣り合うほどなのか。

となるともう一人しか居ない訳だけど

謎が多いなぁ。


「なぁ、俺はラーと関係があるのか?」

「太陽神とは何の関係もありません。それが何か?」


 謎は深まるばかりだ。


「よし腹は決まった。使おう」

「では」

「轟け! 雷根招来!」


 一足遅くあちらの技が早かった。

俺のところだけじゃなく、俺の国全体を

覆うくらいの広さの雨雲から、

まるで空間を這うように

雷の根が太陽へ向けて伸びる。

足場すらなくなる勢いであちこちから伸びてくる。

距離を放せば下にある国がこの放電によって

滅びてしまう。死を覚悟で突っ込むか……。


「下! 危ない!」


 リアンの的確な言葉に反応して避けようとしたが、

迷いがあって動きが遅れた。直撃だ。


「おぉ……」

「何と運の良い」


 それは予めこの為に用意されていたのかと思うほどだった。

相棒の一振りが自然と鞘から抜け、雷を絶った。


「これって絶縁体で出来てるのか?」

「恐らく。不純物が一切無いもので出来ているのでしょう。……なんです?」

「いや別に」


 リアンですら知らないのか。そりゃ良いのか悪いのか。


「それっぽい事が出来るのはでかいなぁ。頼むぜ相棒!」


 俺は改めて雷を絶つ相棒の柄を握る。

装飾が施された相棒。


「雷を絶て! 黒刻剣(ダークルーンソード)!」


 下から伸びる雷を草を刈るように斬り払っていく。


「面妖な真似を!」

「そっちだけが圧倒的に有利だと思うな!」


 スットゥングの射程距離まであと少し……!

スローモーションのように俺と雷神の動きが見える。


「雷神の一撃!」

「見えてるよ!」


 長距離の得物で戦う場合、相手が懐に潜り込むのは

想定内の事だ。そしてそれに対抗する手段も持っている。

今雷神は無制限に雷を使える。

そうなれば至近距離で威力の大きい技を使うだろう。

腕を折りたたみ最短距離で振り下ろした槌。

俺は黒刻剣(ダークルーンソード)の剣腹を見せて

雷神の一撃を防ぐ。力負けしそうだったので

相棒に謝罪しつつ足の裏を剣腹に付けて押す。


「ぐあっ」


 この至近距離で放電したものの弾き飛ばせないので

放出を増やした弊害が出たんだろう。

雷神は槌を握りつつも身を屈めた。


「チャンスです!」

「いけ! 甘き罪の暗礁(フィアラル・ガラール)!」


 俺は雷神に向けてスットゥングの泡槍を

山なりに放り投げた。雷神は避ける動作をしたが

至近距離で会った為すぐさま空間は展開され取り込まれる。

雷神は黄金色の液体の中に一つだけある岩場に立ち、

巨大な巨人と向かい合う。


「くっ……霜の巨人!」

「ウォオオオオアアアアア!」


 スットゥングは怒りの形相で腕を広げ雄叫びをあげる。

雷神は疲れなのか痺れなのか膝を突いている。


「スットゥング、掴め!」

「グアアアアア!」


 俺の声に呼応しスットゥングは雷神を掴んだ。


「ちくしょうがあああああ!」


 雷神はその手の中で一気に放電し振り払おうとする。

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