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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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現れる小人

 俺はその場を去りゆっくりと国へ帰る。

道すがら迎えに来たアシャラとドノヴァンと

合流した。アイロンフォレストに立ち寄り、

ピクニックに行った面々にも無事を伝えた。

皆それ以上は問わないでくれて、そのまま

ホクリョウにも帰還する。

 ナルヴィイシズエ両名の使いが俺の無事を

確認しに来たので、二人には何も問題が無いと

伝えてくれと言う事と、密偵を今のうちに

多く派遣する事、そして大本営の設置を

ホクリョウにするが、設営はそのまま進めるよう

指示を出す手紙を渡した。

向こうには俺が偵察に来ていたのはばれたので

隠す意味は無い。

アーサーもジェルジオ侯も俺もそれぞれが

本国より程よい遠さが良い。

そしてここが崩れてももう一枚本国まで壁があれば

最悪守りきれる。

 俺は直ぐにカトルとトロワにホクリョウの民を

本国へ一旦退避させるよう指示した。

仮にここが戦場になった場合、終戦後破損した

物については保証すると御触れを出す。


「で、お前は何なんだ?」


 俺は独り執務室で書類仕事をしながらそう問いかける。

部屋は静まり返っていて返事が無い。

というかあれは返事出来るのか?


「そうか」


 俺は書類仕事をすると見せかけて襟首の近くへ

手を伸ばす。そして柔らかいものに振れたので掴む。

だが何やら想像していたのと手触りが違う。

柔らかいが何か布のようなものも掴んでいる。

それに暴れるでもなく大人しくしている。

気になって前に持って来てみると、

頭に巻いたターバンのような布の隙間や

上部から、緑の髪が見える小人が居る。

目を閉じているが寝ている訳でも

寝ているふりをしている訳でもないようだ。


「確認が済んだのなら手をお話しなさい野蛮人」

「は?」

「……一々聞き返すとは無礼な……」

「いや敵を拘束して離す訳無いだろう」

「敵とは何の事をいっているのですか? まさかあの出来そこないの類似商品と同じだと?」


 ……何の事を言ってるのかさっぱり分からないので

首をかしげる俺。すると咳払いが一つ。

俺は逆方向に首をかしげる。


「……いい加減にしなさい野蛮人。いつまで私を握っているつもりですか。本当に男の中でもこれほどまで愚鈍なる者は久方ぶりに会いましたよ」

「ど、どうも」


 へへへとわざとらしく照れ笑いし、

残った手で後頭部を掻いてみる。

すると青筋がその小人の額を這う。


「はっきり言ってやっても分からないのですね。なるほどここまで愚かであるとは……。宜しい、その認識を改めさせねばなりませんね」


 そう言うと緑色の光を放ち始める。

俺は目を閉じたが、割と光を放つ敵が多くて

師匠たちとの稽古の御蔭で特に視界を奪われても

慌てたりはしない。気を張り相手の動きから

心の眼は動かしていない。


「なるほど知恵ではなく経験で防いだのですね。ならばこれはどうでしょう」


 凄い力が俺の指を動かそうとしていたが、

俺はそれに負けないよう手の動きを固定し

動かさないようにだけ力を入れる。


「……いい加減にしなさい無礼者!」

「そっちこそだ。オベロンに言われて偵察か? それともフリッグさん?」


 俺が聞くと、小人はケタケタと声をあげて笑った。


「失礼。あまりにも可笑しい事をいうものだからつい。久しぶりに笑ってしまいましたわ。まさか出来損ないならまだしも、看護……ではありませんねあのバグに与して見られるとは。宜しい。私直々にあの出来損ない共を抹殺して差し上げましょう」

「あまり出来損ない出来損ない連呼するもんじゃないぞ? 自分の品位が下がるから」


 俺は優しく笑顔で顔を近付けて小人を窘めた。

あ、青筋が増えた。


「この糞人間……。どれ位振りなのかしら私をここまでコケにした人間を見るのは。もっともお前の前の人間は人間とは言えなかったですけどね」

「へへへ」

「褒めてないって言うんです! ホントにお前は人間なのですか!? 信じられない!」


 素直にもがき始める小人。正直で宜しい。


「褒めてくれてうれしいが、そんな偉大な小人が俺に何の用かな?」

「……お前は何度人を侮辱すれば気が済むのか……宜しい戦争しかありませんねこれは」

「分かった分かった。でどこの誰なの?」

「分かってないのが丸わかりです無礼者。兎に角手を離しなさい」

「いやそこを解決しないと離せない」

「良いでしょう埒が明かないので特っ別に教えて差し上げましょう。私はお前たちが”管理者”と呼ぶ者のある意味師に当たる人物。あの紛い物共は兎も角、私こそが真の妖精。美貌と気品溢れるリャナンシーとは私の事です。平伏しなさい無礼者」

「ああ、あの人く」


 俺が言おうとして最後の方言えなかったのは、

怒りで血管がぶちぎれそうなリャナンシーさんが

涙を溜めて睨んでいたからである。

リャナンシーとはケルト人の芸術などの発展に

多く寄与した妖精と言われている。

が、その言われている理由がおっかなく、

簡単に言うと魅了して馬車馬を走らせるように

脳味噌をフル回転させて作品に没頭させたからである。

故に短命で、男にしか見えない。

惚れるまでは甲斐甲斐しく、惚れたら後は……

という具合である。恐ろしい。


「ゴホッ、失礼。あの芸術の妖精が俺に何か用かな?」

「本来であればお前の様な無礼な人間などには近付きたくないのです。そっち方面の才能も無いし。あの国を見れば分かります。何と文化レベルの低い事。兎に角言われて様子を見に来たのです。アドバイスをして欲しいと懇願されて」


 これは懇願されてませんわ

目を逸らしたもの合わせないもの!

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