表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
第二章・無職で引きこもりだったおっさんは冒険者として生きていけるか!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/570

冒険者として

「おかえりなさい」


 エルツの冒険者ギルドに着いたのは、明け方だった。

門番ともいつの間にか顔見知りになっており、

門番の人にもおかえりと言われた。

 なんだか故郷に帰ってきたような気分だった。

そして冒険者ギルドでミレーユさんに言われると、

すごく安心した。

帰ってきたんだ。

無事にあの戦いを生き抜く事が出来た。

それを実感すると共に、恐怖もよみがえる。

よく俺があの戦いを切り抜けられたとあきれた。


「ただいま」


 俺とファニーはそういうと、久し振りのミレーユさんの

食事を味わう。

トーストのようなもの、小麦を練って焼いたものを

スライスし、とととろになったチーズのようなものを

乗せてこんがり焼き上げたもの。

そして何かの肉をスライスして焼いたものに、

スクランブルエッグ、そして野菜の盛り合わせ。

 湯気の立つ朝食に、何もかも忘れてがっついた。

御腹の中に、トーストとチーズの味が染み渡る。

スクランブルエッグをかっこみ、

野菜も放り込む。

しゃくしゃくと音を立てる自分の口は綻んでいた。


「向こうでは豪華な食事にありつけなかったの?」

「ああ、そう言えば何も食べてない気がする」

「そうだな。よくもまぁ食べずに持ったものだ」

「だよな。何でだろう」

「もしかすると、コウの場合味覚を味わうことは出来るし、満腹感もあるけど、空腹感は起き難くなっているのかもしれないわ」

「それは腹持ちが良いってこと?」

「そんな感じね」

「そっか……まぁリスクが無いなら有り難く思っておくよ」

「それがいいわね。で、二人ともこれからどうするの?」

「これから、か」


 俺はアイゼンリウトの事を想う。

復興を手伝わずに去った事を怒っているかもしれない。

でもその方が良い。

英雄なんてものは、居ない方が皆自力で立ち直るしかないのだから。


「とりあえず、簡単なクエストから依頼しても良いかしら」

「ああ、うん。それでお願いしようかな。鎧代とか路銀稼がないといけないし」

「でも、遠からず貴方は冒険者たちから注目されるわよ」

「そうなる?」

「ええ、英雄として称えられる。そして名が知れ渡る。そうすると、色々と面倒事が増えるかもしれない」

「その時は依頼という形なら嬉しいんだけどね。報酬が貰えないと旅ができない」

「そうだといいわね」


 ミレーユさんはそういいながら、暖かいミルクを出してくれた。

俺はそれを味わうように飲む。

多少どろっとした感じがするが、美味しい。

薄い膜のようなものも味わい深い。


「どうする?早速依頼をこなす?」

「どうしようかファニー」


 俺の隣でぺろりと出されたものを平らげて、

満足感に浸っているファニーに問いかける。


「うむ。腹ごなしに依頼をこなそうか」

「なら僕も混ぜてもらおうか」


 後ろから聞いたことのある声が飛んでくる。

振り向きたくない。

嫌な予感しかしないからだ。


「とりあえずどんな依頼なのか僕にも教えてくれるかな。後ミルクを一つ。お題はコウに」


 そう言って隣に座ったのはショートカットに

ワンピースだがスカートの丈は膝の辺りまでに

なっていて、軽鎧を着た人物だ。


「何でここに」

「僕は元々居ない人間だからね。イリアが居ればいいでしょ。他の人たちも残ってるし。何より君に興味がある」


 俺に向かってウィンクをしながら頬杖をついていた。

また面倒な事が舞い込んできた。

どうもすんなりと行かない。


「邪魔にならないなら良かろう」

「ファニーは良いんだ」

「我のものであるのは違いないからな。余裕というものだ」

「へぇ見せ付けてくれるね」


 ファニーとロリーナは見合う。

何か火花が飛び散らんばかりなんだが。

おっさんを挟んでやらないでほしい。


「あーミレーユさん、で、依頼は……」

「どうしようかしらね。流石に貴方達の力量に見合った仕事というと、そう簡単には出し辛いわ」

「あーでも僕はまだ戦闘経験無いんだけど」

「……実戦経験だけは無いけど、貴女は秘めた力はコウと変わりないわ」

「コウ、この人凄いね」

「……」


 ロリーナはぐいぐい行くタイプだ。

元の世界で言うなら空気読めないタイプとも言う。

俺は右手をおでこに当てて俯く。

参ったなぁ。


「ロリーナ、本当に国は良いのか?」

「賞賛も報酬も要らないとかいう誰かさんと同じで、僕も地位や名誉に興味は無いよ。ただ自分が成し得たことに対してなら欲しいかな。でもそれは積み上げられたものが良い。コウも同じだろ?」

「参ったな」

「今更だね」


 そう、今の俺は人々からの賞賛も地位も名誉も興味が無かった。

アイゼンリウトで出会った人々によって、この世界には色々な人が

種族が居る事を知った。

そして技や物も。

俺は今そう言ったものに興味がある。

何と出逢えるのかわくわくしている。

ロリーナもそうなのか。

 

 俺とロリーナは笑いあう。

来るべくして来たのか。

母親が危険を感じて市井に逃がした姫。

それは血筋や気高さ、気品といったものは確かに受け継がれていた。

だが地位を譲られる事を拒否した。

自らの身で勝ち得たものが大事だという。

それなら冒険者と変わらないか。


「お主、言っておくが我らの邪魔だけはするなよ?」

「そんなつもりは無いさ。でも僕が居たほうが便利だと思うよ」

「どういう意味だ」

「冒険者としてもそうだけど、いつか僕の血統が役に立つ」

「……そんなものに寄って立つ国を欲していると?」

「さぁね。でもいつか国を作るなら、正統性がある方が睨みが効くってもんでしょ」

「確かに」

「おーい二人とも。今日明日も知れない身で、国がどうとかデカイ話をしないでくれ。先ずは今日明日だ」

「はーい」


 ファニーとロリーナは同時に返事をする。

いやはやリムンより手が掛かりそうで困った。

だが最初にこの世界に来て、ご飯を分けてくれた人物だ。

ないがしろには出来ない。


「取り合えず貴方達に合う依頼なんだけど」

「あ、うん。是非是非」


 ミレーユさんが出してきた紙を見る。

そこには洞窟の探索依頼だった。

その場所はリムンが居た場所だ。


「何でココに?」

「どうもあの洞窟は、深いみたいよ。リムンちゃんは勘が働いて奥まで行かなかったようだけど、何かあるみたいなのよ」

「何かある……良くない物が深いところに居ると?」

「かもしれない。その為の依頼ね。一応この国からの依頼だから報酬も高いわよ。ちなみに一度でクリアしなくても大丈夫だから、気長にしてもらっても構わないわ」

「どうやら本当に俺たちに合う依頼みたいだね」

「そういうことよ。無理はしないでね。ある程度まで下ったら、戻ってきて再挑戦する事をオススメするわ」

「了解。なら早速準備に取り掛かろう」

 

 俺たちは冒険者ギルドを後にする。

ミレーユさんはロリーナに冒険者証をあっと言う間に

発行してくれた。

そして道具屋で薬草などの回復アイテムを購入する。

預けておいた金などをミレーユさんから貰った。

ファニーとリムンが退治したイノシシ分もあった為、

金銭的に余裕があった。

ロリーナは防具や武器に関して自前で揃えており問題ない。

ファニーは前に買い込んでおいたブーメランを携えていた。

防具は龍の鱗だからと白のワンピースのままだった。

こうして俺たちはリムンが居た洞窟へと歩き出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ