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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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大地の選択

「では参りましょう」


 右手を差し出してきた。


「あの、お名前は」

「私がフレイと言ったら貴方は御笑いになりますでしょう?」

「失礼」


 謝罪した後そのまま出ようとしたが、

足が動かない。振り返るとにっこりしたまま

手を差し出している。


「どうしろと?」

「こう見えてここに来てから動いた事がありませんの。エスコートして下さらないかしら」

「あい」


 仕方なしに手を取り歩き出す。

こちとらエスコートなどと言う小奇麗なものを

意識してやった事のないおっさんである。

気をつけながら道を進む。

一度振り返った後は見ていないが、

明らかに宙を浮いているし華麗に岩を避けて進んでいる。

エスコートの必要はない。

恐らくこの手を通して何かしている。

特に不快な気分にはならないので放置している。

相棒たちも警告を発していない。

フレイヤとは真逆の位置に居る相棒二振りが

反応しないのもあってそのままにした。


「どもどもどもー」


 さっきとは違い明らかに軽い感じで

皆に挨拶するフレイヤ。

当然きょとんとする一同。当然である。

俺は手を放そうと懸命に色々講じてみたが、

全く意味を為さなくて困っている。


「やー!」


 ファニーが俺とフレイヤのところへ

無言で来るなりおもむろに手刀を振り下ろす。

これは解くやろと高を括っていたが、

見えない何かに遮られたかのように

寸でのところで止まった。


「いけませんわ。もっとしっかり腰を落として振り下ろして頂けないと。まぁそれでも紛いものの竜如きでどうにかなるとは思いませんが」


 にこにこしたまま毒を吐く女神。


「紛いものとはどういう事だ。我は竜なるぞ」

「紛いものは紛いもの。まぁこの世界に純粋な紛いもの以外があるとすればコウ様などの異世界人のみでしょうね。それでも貴女は真の紛いもの。それは貴女自身もお気付きでは無くて?」

「喧嘩を売っているのか?」

「売るなどとんでもない。弱者に振るう武は生憎持ち合わせていませんの。例えどのような紛いものでも愛して見せるのが女神の務め。そう貴女も愛して差し上げま」


 言葉の途中でフレイヤの顔の前に拳が飛ぶ。

あ、と思って手を伸ばそうとしたが、

フレイヤが握る俺の手を強く握った。

そして寸でのところで止まる。


「そう、現界した元神とはいえど、能力はある程度あるのです。これこそが我が最強の守り。コウ様は運がおよろしい。私を味方にした事は、兄を味方にするより正しいかったと私は思いますわ」


 フレイヤの首元を見ると、さっきまで無かった

金色の首飾りが現れている。


「ブリーシンガメン……」

「そうです。しかし流石真の紛いもの。一枚目を潰して二枚目に肉薄するなど少し認識を改めました」

「どういうことだ?」

「彼女の体は一度攻撃する事を拒否しました。が、彼女の精神力と言おうか脳からの指令はそれを押えこんで私の顔を攻撃しようと拳を突きだすまで行きました。言葉で言うと簡単ですが想像を絶する力が必要なのです。普通であればコウ様のように本能から受け入れざるを得ない状況になるのですから」


 ……一体どんな能力なのか。

本能を意のままに操るというのは違うだろう。

相棒たちが警告しないから安心してたんだけど

大丈夫なんだろうか。


「あら心配しないで大丈夫ですよ。もう少しで終わりますので」


 そう微笑むフレイヤ。

ファニーの拳を余っている左手の人差し指で軽く押すと、

ファニーはよろめきながら下がり、尻もちを突いた。


「お、おい大丈夫か!?」

「やかましい!」


 ファニーは歯を剥き出しにして怒っていたが、

体は震えて立ち上がる事が出来ないようだ。


「ああ風が気持ち良い……。前に見ていた時より生命の香りがする」

「フレイヤ、ファニーは大丈夫なのか?」

「問題ありません。別に攻撃しようなどと思わなければどうという事もないのですから。まだ懲りずにやろうとしているから強く体に出るのです。これは私の命とも直結していますので、私の意思のみではどうにもなりませんので悪しからず」


 あんまり悪いと思っていない感じの

言い方をした後、目を瞑り顔を上に向ける。

暫くすると地面から緑色の粒子が浮かんでくる。


「これは……」

「命の輝き。私とフレイ兄様によって生と死を省いた生き物の高速サイクルを行っていた時のエネルギーを解放しました。そして」


 フレイヤは俺の手を両手で握る。


「魂は、大地は貴方を選択した。私の祝福をもって契と成したのです」


 次の瞬間緑の粒子は俺の体の周りを高速で回り始めた。


「おいおいおい」

「そう驚かないでくださいまし。この大地はコウ様に感謝しています。戦争になったことは残念ですが、ユグドラシルに力を借りているとはいえ、大地の復活に尽力し人の営みを蘇らせ生き物を蘇らせた。本来であれば神がすべき事を代行した。故に大地はお母様よりコウ様を選択したのです」

「凄いなこれは……力が溢れてくる」

「ええ。大分限定的ではありますが、この大地においては比類なきものと言っても過言ではありません。魂が縛られる事もありません。コウ様は何よりこの星そのものとリンクされていますし、これは二次的なもの」

「オレイカルコスのみに限定された、有利属性を手に入れたってことか」

「そう言う事です。……正直これで圧倒出来るとは限りませんが、間違いなく足しにはなるかと」

「そんなにやばいのかフレイたちは」

「家族を売るような真似は出来ませんので多くは語れませんが、ただ人として現界したならそう問題ではありません。ですが多くの生贄を使用した降臨は、より多くの力をもって生れる。私には最小限の力のみが残されましたが、双子の兄はその限りではありません。寧ろ均等に分けるものを粗方持っていかれました」

「マジか……そりゃ不味い」

「でしょうね。ユングヴィ・フレイ・イン・フロージの強さは武ではなく」


 ――軍にあるのだ人の王――


 声に反応し上空を見上げる。

大量の鳥が太陽の周りを飛んでいるように見える。


「間に合って良かった。コウ様、急ぎ場を離れましょう。もうここに用事はありません。皆様も、ささ御早く」


 フレイヤは俺から手を放して

ピクニックの片づけを始めた。

皆もはっとなって撤収の準備を始める。

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