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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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山の落し物

「彼女の導きだした答えがそれなんですね」

「お前も分かっているだろうが、やろうと思えばこんな回りくどい方法を取る理由が無いし、彼女はそれを出来る。彼女の更に上が居るとしてもな。あっちもそれは同じ筈」

「最悪ですね。両方迷っている」

「全くだ。個人的に誰が正しいかなんてものはない。敢えて今正しくないとすれば、お前たち以外だ。例え誰であろうと、自分が敷いたルールを自分が有利になる為に破るなど有り得ない」

「それでもヘルモーズさんは俺たちと戦うんですね」

「無論だ」

「理由は何です? 神としてですか?」

「理由はただ一つ」

「それは」

「受肉の礼だ」


 俺はそれを聞いて小さく笑ってしまった。


「そう笑うなよ。受肉ってのは俺たちからすれば幸運なことだ。何しろ名前だけで語られる事無く自らの口から言葉を発せられる。こんな権限は主神以外にはない」

「生きているというのは神様でも嬉しいものなのですか?」

「他は知らないが、少なくとも俺は限りある命を愛おしく思う。父の命によりバルドルを蘇らせるべく地獄まで行った訳だが、やはりこの空の下で生きて剣を振るい馬を駆る。これに勝るものは無いよ」


 慈しむように優しく微笑むヘルモーズ。

俺は今、生きている事をこんな風に祝福できてはいない。

この戦いの果てにそうなれるのだろうか。


「本来であれば死は死。死んだらそこで終わりな筈。そこから更に先があったとして、それが万年に及んだ時それでも笑っていられる者もいればまた逆も然り。それは」


 ヘルモーズさんはそう言い掛けたままお茶を飲み干す。

そしておもむろに立ちあがって背を向ける。


「上が皆後悔と迷いの中に居るとすれば、この戦いに勝つ方法はただ一つ。己の我を張って貫く者だけだ。勝手に始めて勝手に苦しんで勝手に迷って勝手に心中しようとしている……まったく迷惑な話さ」


 空へ呟き聳え立つ一座に向けて歩きだした。


「きっと答えは考える事には無い。お前ならあいつらにそれを体現する事が出来よう。御馳走さん美味かったよ」


 振り返ってニカッと笑い去って行く。

あんな快活な人が居ても流れは変えられないのか。

俺は暫くその背を見送ったまま立ちすくんだ。


「コウ」


 俺の近くに来たエメさんは、何か紙を一枚差し出した。


「これは?」

「ヘルモーズの叔父様から」


 その紙にはこう書かれていた。

”この山はこの大地の霊気が集まる場所であり、

スカジの現在の永久機関の両翼を担ううちの一つ場所である。

疑似ユグドラシル機関。この地下に眠る者を起こせば

足しになるかもしれない。幸運を”と。


「そうか。有難い」

「でも戦いで手を抜いたりは」

「勿論しないさ。礼は武で答えるのみ。で、エメさんはこの地下に心当たりはあるかな」

「ううん。お母様もここの辺りは分からない」

「というと勘か」

「そう。でも貴方ならきっと見つけられる」


 エメさんに真っ直ぐ見つめられると

そんな事は無いとは言い辛い。

俺は苦笑いしつつ頷くと、

早速当たりを回る。

本当に全くの勘で丘から少し崖になっている

場所を下ってみると


「あった」


 小さな洞窟があった。

普通に散策していたら来ようともしない場所だ。

中に入って進んでいくと段々と下り坂になっていった。

そして気温も上昇していく。


「これは……」


 奥の方が明るかったので外に通じているのかと

感じたが、進んで行った先にあったのは

よくある体育館の半分くらいの大きさの丸い空間だった。

その中央には一人の少女が白いローブに

頭に月桂樹を付け両手を組んで祈りながら宙に浮いていた。

何か仕掛けがあるのかもと警戒して進んでいったが、

何も起動せずその足元まで行く。

少女は俺が来た事に気付いたのかゆっくりと目を開く。


「来たのですね人間の勇者よ」

「勇者ではない気が……」

「勇気ある者、で間違いないかと。主神に人の身でありながら逆らうなどただの人では出来ません」

「愚かであると?」

「さぁ……。愚かであるかどうかは我々ではなく後の世が決める事でしょう。広く見れば皆愚かな者です」

「確かに。で、貴女はどうする?」

「どうするとは?」

「俺はスカジを攻めてフリッグさんに会わなければならない。その為にここを崩さなければならない」

「私を倒すと?」

「いいや好きに決めていい。ここを去って向こうに帰るか戦うか。結局は同じでも真正面から戦うなら俺に後悔は無い」

「例えそれが相手を強化する事になっても、ですか?」

「隙があると考えている。それに無抵抗の少女を刺したとあっては俺が気に病む」

「……ふふ。正直なのですね」

「嘘を付いても貴女には意味が無いだろうから」


 俺がそう言うと、彼女は祈る手を解き

宙に浮いていた体を下ろした。

俺はバランスを崩した時支えられる間合いまで

ゆっくり近付いて見守った。


「良い事です人の子。見知らぬ女性の体に触れなかったのは教育の賜物でしょう」

「怖いんでね」

「返しも見事。貴方のような男の事をジゴロ、と言いますか?」

「言いません」


 俺は笑顔で即断言した。どこがジゴロだ。

ジゴロって言葉をどこで知ったんだ。


「では仕方ありませんので私は人質になります。あ、ですが酷い事をしないでくださいね? 無理やり何をしようとすれば大地を枯れ果てさせて貴方の国の経済を破綻させますので」

「……その見た目でそういう事言わないでもらえます?」

「小さいとはいえ美の化身。ブロンドの髪に青い瞳。愛らしい顔立ちに小さいとは思えないぷろぽーしょん。そういう事を考えても仕方ないかと」

「え、止めてもらえます怖い」

「……どういう事でしょうこれが草食系男子?」

「現代言葉を止めてください世界が混乱する」

「これでも昔は巨人族と神族それに兄弟で私を取り合っていましたのに」

「ええええ存じておりますよ二行くらいでそっ閉じしたくなるような感じでしたねそう言えば」

「ま、まさか今は産めよ増やせよという期を超え衰退期なのですか!?」

「……それと俺とは別です」

「なんともまぁ精力減退とは……。もしかしてそういう祈願に?」

「いいからその話から離れてもらえます?」


 見た目とはミスマッチな話をする女神。

北欧神話は割とウロボロス的な話が多くて困る何とは言わないが。

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