表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

505/570

雷鳴

「コウヨウ国国王、コウ。参る!」


 先ずは小手調べの心算でハンマーを振るっているのだろうが、

その風きり音が”ひゅん”ではなく”ヒィン”と鳴いている。

雷だけじゃなく動きでも音を置き去りにするマッチョマン。

その動きに一切無駄が無く、どの一撃も必殺だと思う。

が、さっき受けた一撃は更に凄かった。

フィニッシュブローまでの崩し。

シフトウェイトは本当に足が離れているのか分からない。

音で摺り足では無い事が分かる程度だ。

左右から俺に攻撃を仕掛けてくる。

雷を自在に操るだけかと思ったが、

雷神が雷そのもののようだ。

 俺は相棒たちの切っ先を下げて

最初は大きく、そして徐々に最小限に避けていく。

野生的とはいえ狙いは一つだ。

どこでも良いから一撃当てて、

怯んだところに一撃。

正直どこか一点を狙われた方が

こちらの隙が生まれやすいので、

雑な方が俺は有難かったりする。


「何故怯えぬ隙を見せぬ」

「貴方達が悪い。俺に強敵を当てがって生き延びさせた」


 それと良い師に初期に会えた事が何よりだった。

星力という最強最大の力を手に入れても、

中身が変わらなければ意味が無い。

公務の間も鍛える事は決して怠らなかった。

技術においても星力を纏うに相応しくありたいと

そう思っている。

無軌道な中にも癖が見えてくる。

恐らく雷神はこんなに長く戦闘行為をしたのは久しぶりなのだろう。

ひょっとするとオーディン以来なのかもしれない。

段々と砂煙をあげて移動を始める。

疲れと撹乱を狙ったのもあるのか、

そのまま攻撃してくる。

砂煙が目に入ると不味いので目を閉じる。

そうするとやはり巨大な気は目を閉じても分かるもので、

注意しなければいけないのは地面だけだ。

小石などには気は無い。

 雷神のハンマーが大地を叩いた地点から

風の向きと小石が飛ぶ範囲、

当たっても影響が少ない場所へ移動する。

二回空振りをした後足を踏み鳴らし大地を叩く。

二回以降は四回空振りの後体を預けるようと

突進してくる。

 相手もそうだろうが、俺もそれの動きを

ある程度記憶しパターンとして記録する。


「ちょこまかと!」


 雄叫びと共に雷が落ちてくる。

が、俺はその影響を受けない。

雷が宇宙から飛来したものならいざ知らず、

地球の中で発生したものなら

殆ど影響を最小限に抑えられる。

それが星力を与えられた者のパッシブスキルのようだ。


「迂闊な!」


 そう、誘い水にしては隙が大きい。

敢えて受けるという事なのか、

俺は即座に距離を詰めて斬りつける。

雷が何度も俺を打ったが、ほぼ地面に吸い込まれていく。


「出鱈目を!」


 振り下ろされるミョルニルを掻い潜り、

更には振り払いも掻い潜って右脇腹を

黒刻剣(ダークルーンソード)で薙ぐ。


「ぐあ」


 振り切らずそのまま直ぐに脇腹を押える雷神。


「止めだ!」


 星力を相棒二振りに通し、

青白い炎を纏わせる。

黒隕剣の剣身に黒刻剣(ダークルーソード)

剣身を重ねて交差させて、左でボールを投げるように

降りかぶって一気に振り下ろす。


「……あらら」


 斬ったはずだった。

が、そこには誰も居ない。

雷のように素早く動いて消えたわけでもない。

その証拠に目を開いてみると、

天気は快晴に戻っていた。


「コウ!」

「おっさん!」


 ファニーと恵理が駆け寄ってくる。


「雷神は?」

「分からん。目の前から忽然と姿を消した」

「……あれは魔術というより魔法よね。空間移動とかいうやつじゃない?」

「そうかな。それとも書き換えたのかもしれない」

「書き換えた?」

「いや何でもない。それよりトウシンの首都へ行こうか」

「敵はおらんのか?」

「敵は……いるのかなぁ。トウシンの民ならもう居ない筈だ」

「そうなの?」

「ああ。雷神トールは神の中でも最強の呼び声が高い。その人を能力をそのままに現界させるなら、恐らくトウシン一国の命が必要だろうね」

「確かに。だがそこまでやるとは」

「やるだろうね。本当ならここで何とかしたかったけど、フリッグさんとしてはもっと有効な戦場で使う為に、雷神の試運転くらいの気持ちでここに派遣したんだろう。あわよくば、と思って」

「それが不味くなったから逃がしたんだな」

「そうよねきっと。そんだけ注ぎ込んではいお終い、じゃやりきれないもんね」

「その通りだから魔法を使ってまで戻したんだろうね」

「命を数字では数えられないけどね。向こうはどうか知らないけどさ」

「にしても魔法とはまた大胆な。何もかも制限された空間でそれほどやりたい放題出来るとは何があるのやら」

「警戒するに越したことは無い。憶測だけど大きな反則をかなり犯してる。それで平気なのは何か気になるしね」


 俺は相棒たちを鞘に収めファニーと恵理と共に後方の

ヘズたちの元へと移動する。

合流したヘズたちと共にトウシンの首都を目指して進む。

まだ何かがあるかもしれないので警戒しつつ。


「陛下、城壁に注意しつつ入城しましょう。街の中もくまなく見て回り、可笑しな点があれば直ぐに調査を入れて参ります」

「頼む」


 ロシュも駆けつけヘズも加えて城壁をぐるりと回る。

何箇所か新たに作ったであろう場所を発見したので、

そこを崩して調査をする。


「アシンバに連絡を。トウシンの都市に到着した、他の状況や補給線はどうか、と」

「はっ」


 ロシュは数名の兵士を呼び寄せ書簡に書き留めて渡す。

先ずは城壁のチェックが終わり、いよいよトウシンの首都へ入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ