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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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トウシン討伐の編成

「ですがこの戦が終わった時、どれほど我が民族は残っているのでしょうか。そして残った者たちだけで、陛下なくしてやっていけましょうか」

「……まぁそこから先は頑張ってもらう以外ないな。永遠に責任を持てる訳じゃなし。それを望むと魔王になって永遠の命を望むかもしらん」

「嫌味にしては中々手厳しいな」

「すまないすまない。さ、先ずはこの戦いを終わらせる為の話をしようじゃないか」


 こうしてトウシン討伐会議は始る。

相手の戦力は未知数だし、現実問題として軍を分散させる事は

我が国以外は難しい。結果我が軍の動きに合わせてスカジ軍を

抑えてもらう方法しかない。日にちと時刻を決めて、

ズレも起こるだろうから伝令を途中地点にも配置し、

最速で伝えるようにする。

 次にジェルジオ侯から現在のスカジ軍について

説明をしてもらう。主に軍神テュールと

俊敏ヘルモーズが軍を指揮している。

現時点でヴァルキリーが五割まで増え

スカジ兵も精鋭のみ残され、数は減っても内容が濃くなっていた。

我が軍で考えた五人一組でその内二人弓兵を組み込んだ

フォーメーションが有効であるとの認識で一致した。

ジェルジオ侯から打診され俺が了承したので、

事前にカイヨウでもこのフォーメーションを練兵している。

また今回はホクリョウとアイロンフォレストそしてカイヨウの

連合軍でトウチ手前までの防衛ラインを死守してもらう。

その為に目印を当日は付けて出陣することも申し合わせた。

 連絡も密にするよう確認しあい、何かあった時は

其々デッドラインまで下がり、最悪はコウヨウでの籠城も

視野に入れる事でも一致した。

そうなった場合、イシズエナルヴィ両名が指揮を執りつつ、

前線はアーサージェルジオ侯両名に任せる事とした。

これについてイシズエナルヴィ両名は不満ありありの顔を

していたが、見なかったことにする。

我が軍としては、ホクリョウにカトルトロワロキを配置。

トウチ方面の防衛ラインにアシンバガロムロウを配置。

軍師についてはホクリョウにカムイ、トウチラインはシンラ。

トウシン討伐隊には軍師をロシュ、アゼルスにロンゴニス、

アシャラそしてファニーと恵理を副将として編成を組んだ。

ヴァーリとヘズの両将も客将として先鋒を任せ、

道案内を頼んでいる。

我が軍の十分の九を防衛ライン上とトウシン討伐隊に

振り分ける。コウヨウには僅かに残すのみとした。

 方針については特に異議や質問はなかった。

はっきりいって誰にも未来は分からない。

ただここで押し負ける訳にはいかない事だけは分かっている。

ヴァルキリーがスカジの全ての兵士になれば、

太刀打ちできるようになる前に潰されてしまう。

個人的には悪い想像の域を出ないが、

ヴァルキリーとは元々死んだ英雄を神の兵として

蘇らせる為に、ヴァルハラに連れていく役割を担っている。

スカジ兵が自らを生贄に捧げるのは、

ひょっとするとその死の先にある景色を見ているからかもしれない。

またはその魂がオーディンの体の一部となり

この大地に現界する為のものとされているからかもしれない。

正直現実となって見なければ分からないが、

恐らくそんなところだろう。

だからこそ先ずはトウシンを抑えなければならない。


「どうかしたか?」

「……いや何でもない。おっさんになると嫌なことばかり考える」

「責任あるものは常に最悪の状況とリスクを考えておかねばなりません。年を重ねるほど老練となるものです。年を取ることは決して悪いことではありません」

「その通りだ。君は言っても私よりは若いし、最悪からスタートし最悪を乗り越えて来ている。それを経験として培ったのは何にも代えがたいだろう」

「そうだな。……では少し早いが二人の歓迎会を催させてもいたい。ゆっくりしていってくれ」


 こうして会議は終了となる。

こちらも一カ月入念な打ち合わせと作戦会議と練兵を重ねての今日だし、

特にアーサーたちカイヨウは俺たちの庇護の下にあって

戦自体久々。流石のカイヨウ兵たちも黙っていることしかできなかった。


「へーぇ……」


 一旦歓迎会の準備の為に解散となった。

イシズエナルヴィは何か言いたげだったものの、

しっしと手を振り追っ払った。

誰も居ない王の間で、王座に身を深く沈めて溜息を吐く。

今万全に準備したとはいえ、相手が完全に見えているわけではない。

分かりやすい有効な手を見せびらかせられて、

こっちがそれに対応する事ばかりに追われていては

永遠に追っかける立場は変わらない。ジリ貧だ。

向こうは自らの消費なしに永遠に軍を作れる。

作れなくなった時はそれはこの大地から巨人族が滅ぶ時。

場を対等に近い数に保ちつつ、相手のライフを削らなければ

こちらに勝ち目はない。時間を掛ければ掛けただけ

相手は王手に近づいて行く。


「千里なるも戦うべし」


 戦う場所も時期もそして区切りも見えている。

勝ち筋もしっかりと立てた。

それでも主導権を握っている絶対の自信を持てないでいる。

相手の姿、大将の影が見えてこない。

恐らくバルドルではないものが全体の指揮を執るだろう。

それが誰なのか、そして首都に罠が張られていないか。


「それでもやるしかない」


 絶対なんてことはあり得ない。

何かあった時に臨機応変に対応し、

引くべき時に全速力で引く判断を下す。

これを肝に銘じて王座から立ち上がった。



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