命の輝き
「コウ殿!」
「おっちゃん!」
俺は突然現れた、最初にこの世界で
優しくしてくれた人に唖然として
へたり込んでいると、リムンと姫が抱きついてきた。
二人とも傷だらけでボロボロだ。
「二人とも、生きていてくれてよかった」
俺は自然と目が潤み、景色が歪む。
こんなに他人が生きている事が嬉しくて、
安心した事は無い。
「俺達も居るぜ?」
「約束は果たした」
「コウ、会いたかったぜ!」
ダンディスさんとリードルシュさんもボロボロだ。
ビッドも傷ついていたが、姫とリムンから俺を取り上げ
思いっきりさば折り状態にした。
全く嬉しくない。
「ちょっ、死ぬ死ぬ!ギブギブ!」
「ビッドよせ、死んでしまうぞ」
「アンタ何やってんのよ!」
「全く……」
ビルゴも傷だらけで制止し、アリスはビッドの
頭をはたいた。
イーリスは手で顔を抑え溜息を吐いていた。
何とか解放された俺は、笑った。
皆も自然と笑い始める。
ファニーもバルムンクの姿から元に戻り、笑っていた。
楽しい。
嬉しい。
素直にそう思う。
皆来てくれた。
辿り着いてくれた。
それだけでもう胸がいっぱいだ。
「貴様ら!」
そんな俺達ののほほんとした空気を、アーサーは斬り裂く。
皆が顔をキリッとさせ、アーサーに対して構える。
もう何でも来いだ。
皆が居る。
皆が居てくれるなら、負けない。
負けるはずが無い。
「ごめんね、アンタと違ってコウは人との絆が強くしたからさ」
「そんなものは私には通用しない!」
「それはないでしょ。アンタが認めて欲しかったモノって何?」
「何だと!?」
「アンタはアンタの物語を認めて欲しかった。それは魔族でも獣族でもなく、人だったはずでしょ」
「そ、それは……」
「アンタはこの世界に来て何をした?人では無いからと言って、人を蔑ろにした。それはアンタが元の世界でされた事じゃないのかな」
「ぐ、ぐぬぅ」
「アンタが作りだした世界は、アンタにとって矛盾の塊。だからアンタはコウを倒せないのよ」
「貴様に何が解る!?」
「解らないよ。ただ僕のお母様の仇でもある。アンタの望み通りの結末を迎えよう」
俺が最初に優しくしてくれた村の娘は、
最強とも言えるアーサーに対して口撃で打ち負かし、
緑のワンピースの裾から黄金色の剣を取り出し構える。
勇ましいな。
やっぱり女装が趣味の人なのか?
「コウ、後で僕を女装が趣味の人間にした罪は償ってもらうからね」
振り向きそう俺に優しく言った。
優しく言っているが、眉間のしわが怖すぎる。
「き、貴様は誰だ!?見た事も無いぞ!?」
「それはそうだろう。僕は本物のイリアの双子の姉だよ。アンタは一度も僕と会った事が無い」
「なっ!?」
「アンタの手、見て」
「何だと!?」
アーサーの手にあったはずの、堕天剣ロリーナが
村の娘の手にあった。
「当然だろう?僕のお母様の剣だもの。僕が持つのが道理。お母と同じ名前を継ぐ僕が」
「まさか!?」
「そう、全て役者は揃ったんだ。アリス、イーディスそして僕ロリーナ。三つの鍵でお前の世界をこじ開けた」
「どこまで……」
「ん?」
「どこまで私を絶望に突き落とせば気が済むんだ!私に夢を与え、私に絶望を与えた作品が、私の命さえも奪うと言うのか!?」
「違うよ。アンタの悪夢を終わらせてあげるんだ。どうか元の世界でやり直し幸せを見つけてほしい」
「うああああ!」
アーサーはキャロルを手に向かってくる。
ロリーナにキャロルを振りおろそうとするも、
剣は寸での所で止まったまま動かない。
「さぁ夢の終わりだ」
「皆、時間を稼いでくれ!」
「おう!」
俺の声で皆がアーサーを囲む。
うろたえ後ずさりするアーサー。
黒隕剣よ。
俺の愛剣よ。
俺はこの世界に来て、色々な人にあった。
全てが良い目にあった訳じゃないけど、
今ここにある絆は俺が一番愛してやまないもの。
元の世界で欲しかったモノだ。
俺も間違えば、アーサーのようになっていたかもしれない。
なら、同じ転生者として、
元の世界での幸せを祈ると共に、
最後の力を使おう。
相棒、全てを捧げる。
あの人の悪夢を終わらせ、
愛する人たちの世界を護る為に、
力を貸してくれ!
俺は黒隕剣の鍔を額に当てて祈る。
――我が心通わせし最高の持ち手よ――
――長く冷たい闇を抜けて逢えたのが――
――お前で良かった――
俺もだ、相棒。
共に行こう!
「リムンちゃん、結界を!アリス、イーディス、閉じ込める準備を!他の皆はそれまで引き付けて!」
「了解!」
ロリーナの指揮の元、準備が整えられていた。
俺は眼を閉じたまま黒隕剣を高く掲げ、腰を落とす。
この一撃で全てに決着を!
俺の魔力、俺の力、俺の命よ!
この一撃に全てを賭ける!
「見て、コウの周り……」
「光が……」
俺の体にこの世界のあらゆる命の輝きが集うのを
感じる。
誰もが幸せになる可能性を秘めた世界を
終わらせたくない。
日々を懸命に生きていたい。
夢を見たい。
そんな声が聞こえてくる。
無職で引きこもりのおっさんである俺が、
変われたこの世界を
俺は皆と共に生きていたい。
だからこそ!
「いくぞ!アーサー!」
俺は眼を開く。
皆が場を整えてくれ、離れたのを見て解き放つ。
この世界の生ける人々全ての輝きを!
「命輝斬!」
俺は全てを賭けて振り下ろす。
残すモノは何も無いように。
思い残す事が無い様に。
「ギャァアアアアアアッ!」
アーサーは光の剣に飲み込まれ、全て消し飛んだ。
そして世界はガラガラと音を立てて崩れて行く。
もしかすると、俺の夢の終わりかもしれない。
それでも救われるならそれも良い。
俺も皆に救われたのだから。
共に生きられなくとも、皆に明日があるなら。
俺は瞼が自然と降りて行き
意識が途切れるまで
皆の姿を見ていた。
忘れないように。
いつまでも。




