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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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儀礼と攻勢への会談

「陛下、お召ものを」


 綺麗な着物を着たガンレッドに羽織を着せてもらう。

療養中に髪が伸びたガンレッドは、後ろ髪をアップにし

いつもとは違った感じだった。

それにひと月近く見舞いで見ただけだからなのか、

なんだか大人っぽくなったというか、大きくなったというか。

ユズヲノさん曰く、成長したい体と栄養や睡眠が同じではなく

それに対して体が拒否したという事らしい。


「どうしました?」


 ガンレッドの顔をじっと見る。

俺の着物に変なところがないかチェックしているが、

特に気負った感じもなく、いつも通りに見える。

どうやら体と栄養と睡眠は満たされたらしい。


「良かったよ元気になって」

「御蔭様で……」

「俺は何もしてないがな」

「……色々送ってくださったりしました」


 ガンレッドはくすくすと笑いながら、

俺の襟を直したり裾周りをチェックしている。

何故か知らんが、近くにいるイシズエと

ナルヴィまでもにやにやしている。

二人の顔を見ると、咳払いして真面目な顔になる。

なんだいったい。


「何はともあれこれからも元気でいてくれ。せめておっさんよりは元気で長生きするようにな。戦いが終わった後におっさんしか残らないような状態は嫌だからな」


 親は無くとも子は育つ。おっさんたちの屍累々になろうとも、

子供たちは生きていくだろう。

その為の教育機関だし、書籍の作成もリムンに頼んでしている。

また学校でも実習なども取り入れている。

正直なところ今は何かあっても生きていけるような知恵を

つけさせているようなところもあった。


「陛下にも生き残っていただかなければ。誰かの背中を見ながら皆成長するのですから」

「ならガンレッドの背中を見せてやるといい。俺はここに来るまで碌な人間じゃなかったし。あー、だからって気負わないでくれよ。変に片意地張ると体調を崩す。これは俺もそうだけど」

「ありがとうございます」


 着こなしのチェックがオッケーになったようで、

イシズエとナルヴィにも頷いた後、俺にも頷く。

立ち上がりしな、ガンレッドの手を握る。

目を丸くしていた顔が面白くて吹き出してしまったら、

腹を痛打された。蹲りたいのをなんとか堪える。

これは大分成長したようだ。迂闊にからかえない。

握った手を放そうとしたが、逆に握り返された。

顔を見ると意地悪そうな顔をして笑っている。


「陛下、そろそろ」

「いやいつでもいいんだが」

「お二人とも」


 ナルヴィの強めの窘めるような言葉に、

手を放そうとする方と放さんとする方の

攻防は終了した。結果は推して知るべし。

藪蛇という言葉は言いえて妙である。

それから王の間を出て下に降りる。

下にはドレスのように改良された着物を着ている

恵理やファニーが居た。

ガンレッドはその間に手を離す。

そして俺の腰に少し手を触れて少し後ろに下がる。

 恵理とファニーが両側に立つ。

二人には腕を取られてそのまま城下町へと移動する。

満面の笑みの二人に比べて俺は何とも困った感じだ。

無職引きこもりのおっさんは恋愛経験など皆無だし、

こういうのはどう対応して良いのか分らん。

にやにやするのは論外だけど、

顔が緩まない筈もないので一生懸命キリッと顔を突っ張る。


「これはこれは……。随分と羨ましい登場だな」

「今日は戦場とは違う美しいコウ王陛下を見せていただき光栄です」


 アーサーとジェルジオ侯は城門前に待機していた。

俺の姿を見るなり早々に茶化してきた。

ファニーたちは俺の顔を見ると笑い、

腕を放して足を交差させ体を少し落としながら頭を下げて

後ろに下がった。


「アーサー王、ジェルジオ侯。今日は我が招きに応じて来て下さった事感謝します」


 それを聞いてアーサーとジェルジオ侯は

左胸に右拳を当て一礼した。


「我々の数々の無礼を許し、我が国の危機に駆けつけ更には復興まで支えて頂き感謝のしようもありません。この恩はこの後の戦果を持って倍にしてお返しする所存」

「我々は元々コウ王陛下に恭順を申し出た身。にも拘らず客将として頂き更には我らの国に対しても自治をするようお計らい頂きました。この恩はどの者たちより働きを見せてお返ししたく思います」


 その言葉の後、俺はアーサーに右手を差し出し握手をし、

ジェルジオ侯にも同じくした後、二人が両側に立ってもらい

国民の中を手を振りながら城へと歩いていく。

そして王の間に二人を招き入れ着席を促した後、

背伸びをして堅苦しさを振り払いリラックスして会談に入った。


「ガンレッド、これで儀礼はオッケーかな」

「はい。形式的なものではありますが、国と国との同盟をしっかり結んだという事が、皆に伝わったと思います」

「我々からすれば同盟というのは心苦しいがね」

「然り」

「まぁまぁ。誰かのものになるというより、信頼しあえるなら共同経営状態で良いと思う。正直俺のキャパシティオーバーなんでね。この戦いが終われば俺は王を退く予定だし」

「それは私もだ」

「アーサーも?」

「無論。元より王になるつもりなど無かったのだ。今やっているのも、その気もないのにズルズルと居座ってカイヨウに危機を招いた、その失態に対する償いでやっている」

「しかしアーサー王。貴君の国はまだ復興したとはいえ戦の後も大丈夫であるとは中々言えんのではないか?」

「……確かにな。ジェルジオ侯の手助けも借りて何とかなったと言っても過言ではない」

「なら目が覚めた今からが恩返しなんじゃないのか? 戦が終わってからが本番だと思うけど」

「それを言うなら君もそうではないのかね?」

「俺の場合はやれることを全力でやったと思うよ。人員も配置したし、未来にも希望を沢山残している」


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