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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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現れる使者

 一夜明けガンレッドの見舞いをした後、

また戦地へと戻る。ホクリョウへよって

カトルとジェルジオ侯たちと会議。

死傷者は減ってはいるものの、戦乱が長引けば長引くほど

フリッグ教団を拝みたくなる者も居るようで、

俺の方針でそうした者たちは好きにさせている。

ある程度流出が止まったところで、

防衛を練り直し配置を変更し対応している。

ヴァルキリーたちが長時間自由に空を飛べない事も

こちらには有利に働いている。

この大地は広く恐らくオーストラリア大陸位の

大きさではないかと思う。

今は内陸から海へ向かい風が吹いている事から、

ヴァルキリーたちの飛行にも影響している。

勿論地上に降りても強いは強いが。


「大々的に行動を起こすタイミングについては慎重にならざるを得ないよなぁ」

「はい。敵将はそれを見逃す事は無いと思われます」

「そうだな。私もあの敵将と剣を交えたが、思うところがあるだろうが将としての行動には迷いが無い」


 ジェルジオ侯はさらりと言うが、あんなのと剣を交えて

冷静に相手を捉えるあたり凄腕である事は間違いない。

多少はこちらにも風は向いてきているようだ。


「かと言って軍を静かに動かすにも限界がありますが、やらねばこちらが不利になります」

「カトルの言う通りだ陛下。陛下が皆と同じ目線であるからこそ耐えられる、陛下が根を上げないからと言っても過言ではない。毎日毎日死と向き合い続ける辛さもある」

「確かに。もう約束の時は近い。その後はトウシンを統治し即ホクリョウに本陣を置き、スカジ討伐へ移行する。恐らくそれこそが最後の戦いになるだろう」


 嫌な予感はしている。こちらの練兵に付き合いつつも、

互いに消耗している。死者も出ている。

フリッグさんの手元にどんなカードがあるのか。

彼女は召喚と修復を行い、恐らく縛りもしている。

だがテュールやヘルモーズのやり方に任せているのが

どうにも引っかかる。彼女の本命はオーディンの召喚の筈だ。

それに生贄の点も気になる。生きた者のみが有効なのか。

俺自身スカジへ一直線に仕掛けたいのは山々だが、

何でも一人で出来る訳ではない。皆がいて支えてくれるからこそ、

ここまでこれた。なので今は作戦や準備などは俺より

頭が良い皆に任せて前線に出てる。

ここのところ毎日焦る自分の手綱を引っ張っていた。

もどかしさと苛立ちに付き合う日々の中にいるので、

日にちは見ないようにしている。

皆を信じてただその時を待つのみ。


「陛下!」

「どうやら出陣のようだ」

「此度は我々が」

「いや良い。ゆっくり休んだ後防衛策を練り直してくれ。ここが要だ。ここを突破されたら本陣へ一直線。二人の連携が護りの要になる。よろしく頼む」


 俺はそう言って迎えに来た兵と共に戦場へ赴く。

何十と繰り返してきた対峙。今日もいつもと変わりなくといった感じだ。

指揮はロンゴニス達にメインを任せている。

俺はそれをカバーするように動いていた。

連携が遅れた小隊の立て直しまで時間を稼いだり。

ただ暫くするとヘルモーズが出てくる。


「今日は顔色が良さそうだ。思い悩んではいそうだが」

「思い悩むというかなんというか。家族というものが分からなくてね」

「それは俺も分からん。温かい家庭などと言うものに縁がある者がそう多くいるとは思えんがね。人が滅ぶべきだとして子孫を残さないのは別に構わんが、他の者は気にせず残すだろう。その中には産んだ子を自ら処する者もいるだろうし、悪をそそのかす者もいるだろう。自分自身が善である事は無いかも知れんが、より良くあろうとする為に行動する者を残す事は出来る」

「確かにな。子を育てる事で全く別のものが見える事もあるかもな」

「そう言う事だ。この戦いどちらが勝つか俺は知らんが、考えてみると良い。最も答えなど何処にもないが」

「今日は随分とサービスが良いな」

「弟の礼と、もう一人に対する前払いと、俺としては神らしい事を何かしておきたくてね」


 斬り合いながらも別れを惜しむように徐々に距離を取った。


「無駄死にはするなよ」

「そっちこそ神様だからってカッコつけるなよ」


 互いに小さく笑って背を向けて別れた。

ヘルモーズもテュールも、フリッグさんにとっては

前座なのだろう。

俺は頭を振り全軍の撤退を指示した。

そのまま一晩ホクリョウで寝た後、

トウチへ向かう。

暴竜砦にそのまま入ると、

アシンバとロシュが俺を待ち構えていた。


「何かあったか?」


 と尋ねると二人とも難しい顔をして頷いた。

二人を連れて暴竜砦の執務室へ向かうと、

何とものんびりした雰囲気とゆったりとしたローブを

纏ったブラウンの髪の青年がお茶を啜っていた。


「彼は?」

「ヘズと名乗っております」


 俺はそれを聞いて唖然とした。バルドルの弟で盲目でありながら

弓の名手であるヘズが、何とも気楽な感じで目の前に居る。


「もしやコウ王陛下ですか!」


 青年は童顔をほっこり笑顔にして俺の元まで迷い無く歩いてきて、

手を取った。


「あ、ああどうも。貴方は」

「ヘズと申します。以後お見知りおきを。兄のヴァーリがお世話になっております」


 なんというか混乱の坩堝である。

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