表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

483/570

現れる軍神

「君がコウ王陛下か」


 聞いた事もない高めの男の美声に

急いで振り返る。

そして一撃を受け止める。

黒刻剣(ダークルーンソード)が青白い炎を

剣身に纏わせ何かを掻き消した。

星力さえも貫通する力とは一体……。


「お初にお目に掛る。君には恨みはないが」


 穏やかに美声を響かせてはいるが、

剣撃はそんなもんじゃない。

一撃一撃が必殺に近い力と速度で急所を狙ってきている。

不意打ちではあったが徐々に目も慣れ

回転速度で上回る。


「どうやら私は間違えたらしいな」


 銀の剣は軌道を描くような残像を残し

俺に迫りつつも、空いている手で軍を指揮。

余裕か。だが!


「見積もりを間違えたのは認めるよ」

「ならその首貰い受ける!」

「つけあがるな人間」

「あんたもここではそれと同等だ!」


 俺はツキゲと呼吸を合わせつつ、

黒隕剣と黒刻剣(ダークルーンソード)

回転をあげて次第に押していく。

油断も隙もないほどに速く正確に的確に。

この一戦で体力を使い果たしても構わない。

その覚悟で一気に畳みかける。


「くっ……ヘルモース!」


 俺は目の前の金髪に赤いマント、

銀の鎧に身を包んだ男を弾き飛ばし、

ツキゲを横っ跳びさせて

背後からの一撃をやり過ごす。


「二対一でも一向に構わないぞ?」


 俺は体勢を立て直しつつ、

ツキゲの呼吸を整わせるために

動かずけん制する。


「いいやそんな愚かな真似はしないさ。

私は私であって君ではないのだから」

「だそうだ。千載一遇のチャンスを逃したな」

「減らず口を……!」


 スカジ兵にヴァルキリーが行く手を阻んだ。

全くいけすかない。彫刻のようなイケメンは

銀の剣を天のかざしている。


「勝利宣言か?」

「いいや撤退宣言だよ。君はもっと愚かで

単騎で私たちを倒そうとしているのかと思ったが」

「俺の手も悪かった」

「私の手もだよ。餌にしては大きすぎた。

そして何よりロキと君は協力はしていても

元は敵同士。私の私的な恨みが判断を曇らせたよ。

君に対して多大な無礼を働いてしまった。

その借りは必ず返す」

「一つ聞きたいんだが」

「何だい?」

「貴方がオーディンに与しているのが謎で」

「色々ヘルモースも言っていると思うから

それはそれで考えてもらうとして、

私個人でいえば簡単に言うと私を倒す君に興味がある」

「それは買被りでは?」

「君もだよ。私は神だけれども古い神だ。今もご覧のような有様だよ。戦いにロマンを求めるのはナンセンスだが、勝ち方に拘りたい性分でもある。ここには私に対する信仰も信心も、ひょっとすれば意思すらない軍勢しかない。なので恐らく私の二つ名ほどの奇跡を起こせるとは到底思えない。だからあるもので普通に勝負させてもらう」

「……いずれ」

「ああ。楽しみにさせてもらう」


 颯爽と金髪を靡かせて引き上げていく軍神の軍勢。

仕掛けるのも速く引くのも迷いなく。

まさに隙の一部も見当たらない。


「大局を見て拘らず、か」


 俺も相棒たちを鞘に納め後方の自軍へ戻る。

ナルヴィたちはよく凌いでくれた。

被害は甚大だが、あのヴァルキリーとスカジ兵が

混じった軍神指揮するスカジ軍を見事押し返した。


「皆ご苦労だった」

「いえ、申し訳ございません思ったより

時間が掛りまして」

「いや出来ればもう少し兵を多く生きたまま一緒に

帰りたかったが」


 俺の連れてきた千人とホクリョウの元々の戦力。

それにアイロンフォレストの兵も含め、

半壊している。向こうの戦力を加味すれば、

良くて引き分け厳しく見れば負けに等しい引き分けだ。

ただ巨人族の凄さというものを今回俺は目にできたと思う。

神の使い相手に負けずに居られた事。

これは飢餓に喘ぎ絶望に沈んだままなら出来なかったことだ。


「皆よくやってくれた! 皆が神の使いを押し返したのだ! 俺は上を抑えたにすぎん。間違いなく皆が達成した偉業だ! 亡くなった友と共に故国へ胸を張って帰ろう。このまま奴らの好きにはさせないと! 未来を示そう!」


 俺の声に皆は次第に戦闘状態から意識を戻し、

泣きながら俺の勝鬨に合わせて声を上げる。

俺もツキゲから降りて負傷者に肩を貸し、

仲間の遺骸を抱いて台車に乗せ戦場を後にする。

その後無事だったジェルジオ侯とルーテルと再会し、

ホクリョウの近くに共同墓地を作り始める。

暫くしてからロキが俺の元に来る。


「よう。軍神の腕は健在だったから良かったじゃないか」


 俺の言葉に沈痛な面持ちで答えるロキ。


「彼の腕は誰の腕だと思う?」

「聞きたくないね。彼も知られたくはないだろう」

「彼には心臓が二つある」

「そうか……」


 軍神ことテュールは本来右腕を無くしている。

全盛期の姿であれば健在であることは納得するが、

ロキと彼が出会う時、それは全盛期を過ぎ熟練期に

到達しているまさに最終決戦状態の時。

全盛期の姿で腕もある。そしてロキも生きている。

彼はロキに対して罰を与えたのだろう。

それは自らにも痛みと呪いを与えて。


「ロキはどうする? いやどうしたい?」

「それは……」

「無理するなとは言わない。だが好きにして大丈夫だ。

それくらい骨太の軍にはなっているし、

協力もしてくれた。その時まで変わらず頼む。

その時がきたら援護しよう」


 その言葉にロキは頷く。

テュールの妻は子供を産んでいた。

それはテュールの子ではなくロキの子だ。

二つの心臓のうち一つはロキが必ず止めてやらねばならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ