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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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連戦

「まったくもって迅速……いや神速というべきか」


 ホクリョウは大混戦状態となっていた。

今回の場合道路を整備していた事を逆手に取られた

形になっている。俺が相手でも本体はこっちに向ける。


「陛下、言い訳のしようもなく」

「いやカトル、よく耐えてくれた。上出来すぎる」

「滅相も御座いません。これもジェルジオ侯爵と

ルーテル殿のお陰です」

「二人は無事だったか!」

「はい、アイロンフォレストの民を引き連れて」

「民も無事か?」

「被害はでましたが、それでも最小に」


 街の中を馬を下りてエメさんとリムンも

降ろして歩いて進む。皆俺の顔を見る事で少しでも

気合いを充電してくれたらと思ってそうした。

ホクリョウの砦の中に入ると、皆忙しなく動いていた。

カトルに領主の椅子を勧められたが断り窓から外を見る。

戦況としてはほぼ同時にではなく、ホクリョウは

カイヨウが押し込まれ俺が到着した頃に戦線が開かれたようだ。

そして俺がカイヨウからコウヨウに戻ったあたりで

激しさを増したらしい。


「なるほどね……ナルヴィ、トウシン迎撃部隊に伝令を。

この後の攻撃に気をつけるようにと」


 ナルヴィは頷いて領主の間を出る。

ロキの顔を見るがもう明らかに悪い。

と言っても体調ではない。精神的なものだろう。


「さてここは覚悟を決めて出陣しようか」

「君は気軽に言うね」

「気軽な訳が無い。かの軍神自らお出ましなんだからな。

しかしそう考えると、スカジの民はもう半数以下と

考えていいだろう……えげつないな」


 そう言いながらエメさんとリムンを見る。

今さらだな。


「二人ともホクリョウで治療や子供たちの避難の

手伝いをしつつ、いざとなったら外壁を破壊して

スカジ兵……いや天の使いというかヴァルキリーたちを

潰してくれ」


 二人は黙って頷き共に領主の間から移動する。

戦闘するだけが仕事ではない。後方支援も大切だ。

俺はロキの肩を軽く叩いて領主の間を出る。

恐らく苛烈な戦いになるだろう。

スットゥングの泡槍の奥義連発はどこまでできるのか。


「出陣だ!」


 コウヨウで入れ替えた兵士たちに相棒二振りを天に掲げ、

ツキゲに跨りホクリョウ北門から出陣する。

俺が目指すべきはただ一つ。一際戦場で光る人物だ。


「全軍横並びに隊列を組んで押し返せ!」


 先ずはホクリョウから話すのが先決。

先に出ている友軍自軍を回収し下げて治療と

体力回復に回し、俺たちが押し上げる。

スカジ兵を捌きつつ徐々に押し返し始める。


「来るぞ」


 ロキの言葉に頷く。先ずは手始めに

ヴァルキリーかと思いきや、見た事のある金ぴかが

ヴァルキリーを引き連れて突っ込んできた。


「皆、道をあけてくれ! 出るぞ!」


 俺は開いた道を突き進み迎え撃つ。


「流石俊敏。戦の流れが変わったのを見逃さないな」


 体に見合わない小さな剣を掲げて突っ込んできた

ヘルモース不敵に笑いつつ剣を交える。


「何が可笑しい」

「いや何、あの時引けと言われて引いたが、実は剣を交えたくてうずうずしていたのさ」

「それは結構。先ずは一手打たせてもらおうか」


 俺はスットゥングの泡槍を掲げ、奥義を発動。

ヴァルキリー達は飲み込まれるが、

当たり前のようにヘルモースはそこから抜け出し

俺に斬りかかってくる。


「ところで良いのか? このままだと押し切られるが」


 俺が煽ったが、それに対して不敵に笑うだけだった。

何かあるんだろうがそれを気にして手を拱いている

事は出来ない。奥の手を出さざるを得ないところまで

先ずは追い込まないと。

 ヘルモースロングソードとショートソードの間の長さの

剣は俺の黒隕剣より少し短い。それを力一杯振り回し、

且つ右手で斬り付けた後直ぐに左手に持ち替えて防ぐという、

器用すぎる戦い方で容易に押しきれない。


「流石だな」

「お互い様だ」


 互いの呼吸を読みつつ斬りあう。

俺は両手で相手は片手。持ち替えをしているのもあって

体力の消耗はあっちが上。それに神性も今は無い。

ヘルモースの二つ名に相応しい効果を付与するのが

精一杯だろう。


「なるほど意識しないでも速度は速い。

ただそれだと多少体力の消耗を抑えるだけなんじゃないか?」

「確かにな」


 フフッと余裕の笑みと笑いがこぼれる。


「随分汚いじゃないか……」


 俺はからかうように言う。

恐らくその金ぴかの鎧が秘密なんだろう。

コウヨウ、というかガンレッドたちにあって

スカジにない筈はない。それも押さえる為に

面倒でもスカジのトップに立つ必要があったのか。


「これくらいでも太刀打ちできるなんて思ってないさ」

「時間稼ぎか?」

「寧ろ本番は先だ。それは承知しているはず」

「承知してようがしてまいが、人の命が失われるのを黙って与するつもりはない」

「そうだろうが、恐らくこれはヒトという種が残るか残らないかの選択の戦いだ。この一地帯に拘れば根こそぎ消えてなくなるだろう」

「動物は喋らないから弱肉強食でも良いと?」

「至言だな。直接言う時にはそこをしっかり言うといい」


 俺もヘルモースもいまいち相手を斬り殺すという

気にはならない。勿論本気で剣撃を繰り出しているが。


「で、今日の要件は?」

「さてね。俺は駆り出されただけだ。お前も何となく気付いているだろうが、用があるのは二人だけだ」

「話し合ったところで解決しないと思うけどなぁ」

「だと思うが正々堂々したいんだろうね」

「……こんな状況で正々堂々とは……」

「言いたいことは分かるつもりだ。……今日はこのくらいにしておこう。お互い強行軍でしんどい。無限ではないのだからな」


 俺は隙を窺ったが、全くそれはない。

口調とは違い慎重にじっくり距離を離し逃げられる距離まで

来るとあっさり飛び退いて引いた。

その空いた間にはスカジ兵が埋め尽くされる。


「また会おう」


 ニカッと笑いさっさと去っていく。

手詰まりというかなんというか調子が狂う。



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