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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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俊敏

「陛下、先に行ってくれ……」

「レン、あいつは」

「大丈夫だって。あれ位相手に出来る。それより急いでアーサー王の元へ。この戦いを制するなら、陛下だけじゃきっとダメだ」

「……分かった。お前も死ぬなよ」

「当たり前だ……ぜ!」


 神の使いの空からの攻撃を、

話しながら捌く姿を見て任せる事にした。

手のしびれも無いようだし、

空から落とす方法も考えているようだ。


「兵は何人欲しい?」

「いらね。何とかならぁ!

生憎他を背負って戦って勝てそうな

相手じゃないからな。陛下に任せる」


 俺は頷きその場を後にする。

先導をロキと隠密部隊に変更して先を急ぐ。

少し走ると土地が傾斜してきたので下る。

その眼前に広がる街では随所で立ち上る煙。

コウヨウとは違い、高い建造物はほぼなく

作りも石作りのシンプルなものが軒を連ねていた。

そのなかでそびえる建物が一つある。


「あれが城か」

「コルチェスター城というそうだよ今は」

「キャメロットでもカムロスでもなく、か……」

「そうだね」

「離れ難し我が故郷……そう言う事なのかな」

「さてね。コウ、あれを」


 ロキの指さす方を見る。カラスが二羽、城の上を

旋回している。


「マジでこの大地で始めるつもりなんだな」

「そう言う事のようだ」

「全軍突撃! スカジ兵に目にもの見せてくれん!」


 俺は指示を出し、城方面へ先陣を切って走り出す。

声を上げ皆俺と共に覚悟を決めて突き進む。

丁度スカジ兵が街を襲っていた。

こうしてみると蛮族にしか見えないが、

彼らにはフリッグ教団の教えと興奮状態を

合わせた行動なのだろう。

俺はスットゥングの泡槍を使い、

スカジ兵を吹き飛ばしていく。


「皆の者、遠慮は要らん! スカジ兵を蹂躙せよ!」


 掛け声に呼応し、皆スカジ兵を斬り伏せていく。

俺も吹き飛ばしつつ城へ突き進む。


「コウ!」

 

 横に居るファニーの声に視線を向けると、

視線の先にはスカジ兵百人に天の使いみたいなのが十人。

そして中央に腕を組んで黄金の鎧に身を纏った、

濃いめの二重顎欧米人が居た。


「なんか近付きたくなくなるなぁ」

「そんな事言ってる場合じゃないっしょ?」

「そう言う事だ」


 俺達はやれやれと思い一つ溜息を吐いた後、

それに向かって突撃する。


「甘き罪の暗礁(フィアラル・ガラール)


 スットゥングの泡槍の奥義を展開し、

相手を飲み込む。


「なるほどねぇ……」


 殆ど飲み込んだと思ったが、

例の黄金二重顎さんは悠々と範囲を外れ、

こちらへと腕を組みながら進んできた。


「来るぞ!」


 俺は相棒二振りを抜き放ち構える。

皆も其々の得物を構えた。


「やあやあ精が出るね」


 低い声で呑気な言葉が出てきたので、

ずっこけそうになるのを何とか踏ん張って


「随分気軽に攻め込んだもんだ。

人の命人の土地だから関係無いという事か」


 俺も負けずに世間話をするようなトーンで言った。


「そうだな。事君以外に関してはその通り。取り繕ったところで意味は無いさ。それにその泡槍も見ておきたかった。効果はご覧の通り。我がヴァルキリーの精鋭もあっさり飲み込まれ終了」

「じゃあその首を置いてってもらおうか。見物料だ」

「それは出来ない。残念な事に母が君とは違って幾つになっても怖くてね。最も君は別の意味で怖いと思うだろういずれな」

「オーディンもそうじゃないのか?」

「違うな。彼はそう……人の怖さを体から心まで全て知っている。だからこその管理統制。

自らの判断考えが全て……っと不味いな。そろそろ引かせてもらおう」


 俺は俺が別の意味で母が怖いと

いずれ思うという言葉の意味を理解せず

オーディンの話をしたが、巧く釣れたというべきか。


「逃がす訳無いだろう?」


 ロキがそう言ったので我に返り周りを見ると、

その黄金二重顎をファニーや恵理、そして

兵たちで囲んでいた。


「逃がすも何も、私は逃げるとは言っていない引くと言っているんだ」

「言葉遊びで時間稼ぎのつもりかい?」

「いいや違うねただ彼と雑談したかっただけなんだホントさ。それにロキ叔父なら知っているだろう? 私が何と呼ばれているのか」


 その言葉が終わるか否か。

黄金二重顎は消え去っていた。


「”俊敏のヘルモーズ”」


――そう言う事だ。何事においても先手が重要ってね。また会おうコウ王陛下――


 あれがオーディンの息子でバルドルを助けるために

冥府を駆けた男、ヘルモーズか。


「すまない。僕もボケているようだ。彼が彼だと気付いていたが、まさかスレイプニル無しで高速移動とは」

「いいさ。ここで捕らえられれば上々だけどあの余裕、元々逃げられるからこそのものだったんだろう」


 そう、確実に逃げられるならではの呑気なトーン。

彼の特徴は即断即決にして戦いに属する神族。

一気にカイヨウの首都を襲撃するのもらしいと言えばらしい。

ここを潰すのは理にかなっている。

となればトウシン方面も何かあるな。

俺と相対する計算も頭の片隅にはあっただろうし、

正当な対価を払いスットゥングの泡槍を見極められた

という言葉に嘘は無いだろう。

ヴァルキリーやスカジ兵の命と引き換えなのは、

彼の中での天秤は均等になっている。

流石に冷静だ。


「厄介なおっさんが現れたわねぇ」

「神性が無いとしても早さは健在。一将軍としての能力もあると見て良いだろう」

「そうだろうね……」


 ロキは苦い顔をしている。

その心中を察するに、恐らくロキの嫌な敵が出てくると

本能が告げてきたに違いない。


「出来れば戦いに入る前に仕掛けた方が良いだろうな。

戦いに入れば、かの人は勇敢でならした軍神だ」


 俺の言葉にロキ以外は首をかしげる。

ロキは苦虫を噛み潰した顔をして頷いた。


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