人探しと急報と
それを念頭に置いて、
俺は皆に挨拶をしながら
国を回って人材探しに出る。
レンやドノヴァン、
ファニーや恵理、
リムンやエメさんガンレッドと
日によって人を変えながら
視察も兼ねて回った。
将来期待できる者や、
重臣とまではいかないまでも
良い人材を見つけたので
メモに書き留める。
見ていて国内は比較的安定していたのが
本当に安心した。
俺に対して批判的な街頭演説もあるが、
皆怒らず冷静に指摘し即席の討論会が
起こったりもしている。
相手を認めないのではなく、きちんと
意見を交わし結果的に勝敗が出ても、
お互い握手を交わし終えているのが
凄いなぁと感心していた。
事実ホクリョウやトウチ、セイヨウから
人材が教育の為に派遣されてくると、
皆一様にコウヨウの民衆のレベルの高さに
下を巻く。実習で国民相手に討論会を
開いても、勝てない事が多い。
やはり教育機関の充実と、
有能な人材が多い事や文明の発展と
情報の流通の整備など連鎖して
国のレベルを上げていた。
「難しいな……」
ジグムを議長として
人材についての会議が行われる。
各局での人材育成方法や、
就労状況などが報告された。
「ですな……。
誰も上を目指してはいますが
頭一つ抜けた者が中々……」
ジグムも唸る。これといって
各局からも重臣に押し上げよう
という人物はいないようだ。
親衛隊も育成を急いではいるが、
カトルやアインスの穴は埋まりようも
なかった。ツヴァイにおいては
オンルリオの教育係兼補佐役で
動けない。その分トロワが自由に
なっている。
隠密部隊もロキが仕切っているが、
リクトは里の育成が忙しく出れず
グオンさんは医師としてだけでなく、
薬師としても後進の教育に忙しい。
「現在雇用希望者も分散しており、
広く深く見ねばならぬのが
中々難しくしているのかもしれません」
イシズエは手元の用紙を
俺に見せた。雇用状況はどこも
手は欲しいものの審査は場所により
厳しくなる。開墾系は割と緩めでは
あるが中々昇進が望めない。
文官系は教養を、武官系は技術のみならず
理解力と判断力を。
昇進は昇進でテストや
業務成績などが加味される。
なので上がれる者は優秀であるが故に
上に立っている。元無職引き篭もりの
おっさんが頂点に居るが、お飾りだし
何れこの国も巨人族の人たちの元に
帰る。おっさんより有能ばかりになるよう、
極力口を出さないようにはしている。
「軍部も小隊中隊の人材は多く居るのですが、
大隊などになると中々……」
育成において特化している
オンルリオですら頭を悩ませている状況の
ようだ。
「現在は他国からの流入もありませんが、
その分領土拡大が続いている為
皆やる気に溢れています。
国民レベルで知識や知恵、
体力なども向上しておりますので、
この先は豊作となるでしょう」
「そうだな。地道に人を探しつつ、
良い人材がいたら教えてくれ。
俺が直に会いに行くよ」
ウルシカの言葉に同意した後、
会議の結論を出し閉会する。
皆からリストを貰って見ているが、
全員を見に行く事にした。
見つからない人材が見つかった時、
その喜びは何にも勝るものがある。
それだけにヤマナワとセンリュウ、
それにヨウトに対しては
複雑な思いをしていた。
それから一か月、
内政と登用、開墾や建設の
視察や指示、方針を決めたりと
割と穏やかな日々が続いていた。
「陛下、急報です」
この四つの勢力が
睨みあう中で、一か月も
平穏な日々が続いたのが
有り難い事だったのだろう。
お陰で恵理たちにも日頃の苦労を
労わって上げられたし。
「どこから攻めてきた?
カイヨウか?
スカジか?
トウシンか?」
その言葉に知らせを受けて
入ってきたロシュは首を横に振る。
どう言う事なのか。
「いっそ全部か?」
「そのような嬉しそうな顔をされても
困りますよ陛下。残念です」
「ならなんの急報なんだ」
俺はもったいぶるロシュに
ちょっと残念がりながら椅子に
だらしなく座る。
「スカジで反乱が起きました」
「随分と早いな」
「……陛下もそう思われますか」
「そう詳しくは分かっていないが、
反対勢力というかレジスタンスも
居るとは聞いていたが、そう大きくは
無かったはずだよな?」
「はい。陛下の言うように
彼らは大きな組織ではありません」
「それは困ったな。見過ごすのも
可哀相だが。切っ掛けは何だろう」
「どうやら例の陛下が帰した者達が
発端と言うか火種のようで」
「……そういう心算で帰した
訳じゃないんだけどなぁ……」
「良い事をなさいましたな陛下」
「嫌味か」
「まぁそれはさて置き、
例の我がコウヨウ国領ホクリョウとの
最前線の街、アイロンフォレストでは
現在スカジ本国への反旗を掲げ
街の守りを固めて居ります」
「首謀者は?」
「ジェルジオという男装の領主だそうで」
「なんかもう色々込み入りすぎて難しいな?」
「何がです?」
「何でもない。で、その男装の貴婦人は
何を求めておいでだ?」
「一応要求としては、コウ王陛下との
会談を要求しております」
「なら了承する。人数は八百。
俺が自分で率いていくから
直ぐ準備をしてくれ」
「お待ちを。貴奴らはフリッグ教を
信仰する者。そのような者達を
我が国に入れるなど危険性が高すぎます」
「だからと言って見捨てる事も出来ないだろう?
コウ王は臣民に厚い王として知られているんだからね」
「ですが」
「分かっているよ。俺としても今回のこれは
俺の言葉を試されている気がしてるんだ」
「例の信仰を禁止しないというお話ですか」




