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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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戦の後のこと

 ドラマや漫画を見ていると、

そのまま戦が終わって日常に戻り、

みたいな感じになるが

そうはならない。

何より血を流して戦ってくれる者達が

居るからこそ戦乱の中でも

国が保てている。

労う為の祝典や祝賀会。

また亡くなった者達の為の慰霊祭や

遺族に対するアフターフォローも

大事な要素だ。

 会議はガンレッドが張り切って

仕切ってくれたので全会一致で

予定が決まり、細かい部分は

ガンレッドとナルヴィ、イシズエと

恵理やファニー、フェメニヤさんや

ユズヲノさんグオンさんたちが

集まって都市部の行事などと

照らし合わせて決定する。

 俺は決裁書類に目を通し、

判子を押す仕事はあったものの、

日数的にはそう経っていない為

内政関連も少なくその日は終わった。

 それから二日後、慰問に赴く。

今回はホクリョウの街の兵士たち

の方はカトルに俺の手紙を託して

任せた。

千連れて行って死傷者五十名、

重軽症者百名。

俺が暴れた分減りはしたものの、

それでもまだまだ相手より

完全に上回ってはいない。

この点を改善する為に

鍛錬や編隊訓練、防具の開発や

戦術の周知徹底をこれから進めていく。

戦術局での洗い出しを指示した。

また学校でも運動の授業も必ず

取るよう指示し、兵士たちにも

丁寧に基礎を教えて厳し過ぎないようにと

オンルリオとリシェに指示を出す。

戦争に全振りする訳にはいかないが、

少しでも犠牲者も戦争も少なくするために、

出来る事を下から順にしていこうと

考えている。


「王として貴方の御主人は国にとって

欠かせない存在でした。貴方の御主人の

奮闘があってこそ、今の平和があるのです。

それを我々は忘れはしませんし、

一刻も早くこの戦いを終わらせるよう

粉骨砕身努めます。どうかこれからも

国を支えて共に生きてください」


 俺は遺族の手を握りながら

言葉を交わす。俺への支持が高いとは言え、

大事な家族が亡くなったんだ。

視線は温かいものではない。

何故亡くなったのか。何故亡くならなければ

ならなかったのか。辛い思い痛い思い

苦しい思いをしたのに、とその目は

俺を糾弾しているしするべきだと思う。

慰問する事により、その行き場の無い

遺族の感情を少しでも向かう先を示したいと

考えて始めた事だ。


「偽善だな」


 俺は歩きながらそう呟いた。

色々理由や理論があって自分でも

納得してやっているが、なんとも言えない。

恨まれることを心地良いとは

全く思えないが、王になった以上

誰かに恨まれるのは当然。

どれだけ尽くしても誰かに

不満は残る。神様ですらそうだ。

 オーディンはこの世界に来て

死ぬ事も無く長くそういった

感情を向けられて受け止めて。

そう考えるとある程度反則だとしても

使いたくはなる気持ちもわかる。

 俺は色々と考えを巡らせつつ、

慰問を続けた。夕食の時間を過ぎても

戻らなかったので、ナルヴィが

迎えに来て城に戻る。

時間と気持ちを掛けなければ

ならない事なので、おざなりにならないよう

する為には出来るだけ出来る時に

訪れたかった。

 行事関連も決まった事で、

合間に慰問や遺族支給金の取り決めをし、

更に内政をチェックし整備する。

 俺の到着から遅れる事五日、

派遣していたトウシン迎撃部隊が

帰還した。


「アゼルスにロシュ、よくやってくれた」


 王の間に来た二人はなるべく早く

戻って来てくれたようで、疲れの色を

隠せないでいたが、暗い表情は無く

晴れやかだった。


「何とか全員でトウシンを退け、

更にトウシンとの境を押し広げる事に

成功致しました。陛下のお陰で

最後の方は押せば引く状況になり、

兵士たちの犠牲も少なく済んで

有り難く思っております」

「まだ資料は呼んでないが、

激戦であった事は伝令から聞いている。

二人とそしてシンラとアシンバは

良くやってくれた。

疲れもあるだろうから、

ゆっくり休んでくれ」

「有り難き幸せ」


 二人は疲れた体を何とか

奮い立たせて王の間を出ていく。

八百の兵のうち死傷者百。

重軽症者二百。

この数字だけでも激戦が伝わってくる。

指名をリストアップしてあるので

慰問のリストに加えたが、

少し時間を置く、という付箋を付ける。

家族の死を受け入れられる日など

来るとは思えないが、

それでも前を向いて生きる為に

区切りとして俺が赴くとしても

二、三日は身内だけで忍びたいだろう

そう考えていた。

 そこから重軽症者も含め慰問を

終えるまで一週間。終えた後から

全体の慰霊祭を行い、更に三日開けた後

祝賀会を街を上げて行う。

時間をもう少し開けた方が良いかとか

色々考えたが、この時期にそう言った余裕は無い。

何より相手は待ってはくれない。

この間にもトロワとロシュリシェ兄弟に

五百の兵を任せてトウチへと派遣し、

アシンバとシンラに

休暇を取らせていた。

二人の帰国に合わせて祝賀会が開かれ、

更にアシンバの将軍への昇格と

トウチ方面の防衛を取り仕切る任務を

任せる辞令を出した。

それと同時にシンラを軍師として置き

内政の管理も任せる。


「人が出ていくばっかりだなぁ……」


 王の間で一人空き時間が出来たので

呟く。結局ハンゾウもアインスもそのまま

セイヨウの自治に掛ったままだ。

ここ暫くは人事に重きを置いて

人材登用を慎重に且つ確実にしていこう。

良い人材が居るといいんだけどなぁ。

どこがとかはない。全てにおいて

人が足りない。足りないなりに

なんとかしてはいるが、領土も広がって

猫の手も借りたいレベルだ。

だからといって誰でも良い訳ではない。

特に縁故採用や密偵には

気を付けなければならない。

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