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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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フリッグ教騒ぎ

 それから暫くはそう騒がしい事も無く、

トウチ方面の整備やホクリョウの防衛設備、

北西方向の開拓完了地の土壌改良、

カイヨウとの国境に壁を作り兵を配置など

国外の案件を確実に一つずつ処理をしていった。

その間に恵理たちが企画した家庭で出る

処理物の再利用コンテストも行われ、

大盛況のうちに幕を閉じた。

 政務に精を出す日々が続いていた

ある日の朝。面倒な事から始まった。

簡単に言うとスカジから布教の申し入れがあった。

それに一瞬言葉を失った。

当然国内に入る事は出来なかったのだが、

完璧という訳にはいかず相手にとって幸運が、

こっちにとっては不運が重なって

首都まで来てしまった。

サワドベからどうしたら良いかと

連絡が俺のところに来て、

皆騒然となった。


「追い返せ。……ロキ」


 俺が追い返すようサワドベに告げた後、

ロキに視線を向け声をかける。

眉間に皺を寄せながら目を瞑り

席を立つロキ。

運不運だけでは片付けられない。

よしんばあったとしても、

相手にとって百年振りレベルの

奇跡でなければならない。

失態もいいところだ。

 その者は国に帰れば英雄になる。

こっちが処刑しようと変わらない。

厳しい目を掻い潜りフリッグさんの

為に奇跡を体現し信仰を示したと。

そうなれば次から次にスカジから

うちの国に突撃してくるし、

それを追い返すだけでも時間と労力が

取られる。そして何より信仰に

触れる事になる長時間。

そうなれば洗脳という手段が取れる。


「何事も下から崩すのが上策だよな」


 俺の言葉に皆が頷く。

俺の知る限り宗教と政は密接に

絡むと解けなくなる。

一つが絡めば後から後から絡みつき、

ついには解けなくなって雁字搦めになる。

解く時には身を割く覚悟で

やらなければならない。


「あまりやりたくなかった手だが」


 俺は一つの提案を出した。

それは偶像崇拝の禁止といかなるものの

布教も戦争時においては禁ずるという

法案だった。

国民を信じてはいる。

が、何か起こってからではなく

起こる前に打てる手があるなら

可能な限り打ちたいと思っている。


「ここは陛下の国です。

陛下の思うようになさるの事が

我らの意思でございます」


 イシズエが育てている

更新のドノヴァンが淀みなく

俺を見て胸を張り言った。

筋骨隆々で髪はオールバック、

口髭を蓄えた剛腕の戦士。

政治や事務処理も出来る、

次の将軍候補の一人だ。


「気持ちは有り難いが、

暴君になる気はない。

以前もいったように、

何れこの座は誰かに渡すし、

なるべく国民主体で

思うように生きられる

そういう国にしておきたい」


「この国に陛下の気持ちに

寄り添わぬ者など居りませぬ。

そういうものはとっくに

出て行っております」

「感謝しなくてはな。

皆の気持ちが一つである事は

本当に大事にしたいと思うし

それに報いる政策をしたいと

思っている」

「我が命もまた陛下と共に」

「良い加減にせよドノヴァン」


 イシズエに言われ

無表情で席に着く。

俺は苦笑いして話を進めた。

密告などがあっても

慎重に調査し確実に証拠を

抑えてから国外追放に

する事をきつく言い渡した。

 

「国境警備の面も見直してくれ。

やはり国境周辺の整備、

思った以上に人員を割かなければ

ならないようだな……」


 会議の後ナルヴィとイシズエが

部下たちと話し合い、予算や人員の

配分について纏めた書類の作成に入った。

ロキをリーダーとして

サワドベ、オンルリオ、カムイが

部下たちを総動員してフリッグ教への

対策に大急ぎで入った。

 嫌な予感というのは当たるもので、

一人目を帰した後に数日経たずに

フリッグ教信者が突撃してきた。

予想はしていたがこれはしんどい。

攻撃ではないだけに捕まえては放しの

繰り返しだ。

話を聞いてもフリッグ教の布教のみ。

壊れたプレイヤーのように

同じ部分を繰り返し再生している

気分になったそうだ。

その薄気味悪さを目の当たりにした

者たちも多く、恐怖を抱き始めている。


「不味いなぁ。戦い以外でこんなに

キツイ手を打ってくるとは……」


 更にそれだけでは飽き足らず、

関所近辺でもフリッグ教信者というのを

隠して布教したり国内に入り

布教したりと蟻に集られている

気分になる。

それに時間と人員を取られて

文化レベルの上昇を妨げていた。


「陛下、このままではジリ貧です」


 ナルヴィの言葉に会議に参加する

者たちは皆頷いた。


「多くの国民はフリッグ教に

恐怖を抱き、そのうち魔女狩りさながらの

地獄絵図が国内に蔓延しはしないかと」

「そうか。禁止するだけではダメという事だな」

「現状国境の塀建設も阻害されており、

全てにおいて妨害を受けております」


 閉口せざるを得ない。

どうあってもフリッグ教を受け入れろと。

これは我慢の限界だろうなぁ。


「俺は殊更宗教を目の敵にはしなかった。

が、国内に強引に入ろうとしたり、

純粋な取引に宗教を持ち出したりと

手段を選ばなくなった。

なら仕方ない。以前あった無礼と

そして戦争中である事、

仕事を阻害された事を大きな文字で

書いた旗を広げ

近寄るなら容赦無く攻撃を加えるしか

無いだろう」


 事ここに至ってはもう仕方がない。

あくまで俺は国民を護るものだ。

宗教の守護者じゃない。

腹を括るより他無い。


「陛下、よく決断して下さいました」


 ナルヴィは力強く頷いた。

お父さんか。


「陛下、僭越ながらこのドノヴァンに

フリッグ教防衛の任をお与えください。

必ずや陛下のお役に立ってみせます!」


 鼻息荒くドノヴァンが名乗りを上げる。

ホントま元気だなぁ。

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