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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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帰国の途に就く

口には出そうだったのを抑えつつ、

今回の会談内容と今後の対策を

資料として纏め、それを紙に書いて

会議で重臣たちに配る為の準備をした。

重臣たちに手渡すものは手書きで

写したもので、俺の印章が押してある。

法など国民に配布するものは

資源が少なくなっているので

かなり内容を煮詰めて修正の必要が

ほぼ無いようなものにして配布している。

この場合手書きではなく、

粘土質の土を固めて乾かし

一字一字ひらがなに該当する文字を

掘った物を使っている。

 俺も文系なので印刷機械には全く詳しくない。

インクについてもどうやって

作るのか知らなかったし、

紙もこの環境でどうやって作るのか

途方に暮れていた。

あるものをだましだまし使っていて

いつ無くなるかひやひやしていた。

 が、やはりこう言う時に知恵を

絞っていると名案が浮かぶものも居て、

採掘部から貰った石炭を使ってインクを、

紙はスカジから輸入していた毛を使って

紙に仕立てていた。

紙が貴重な物には変わりがないが、

今サトウキビに似たものを

広く栽培しているのでそのうち再利用も

視野に入れられるよう開発されていくと思うし

指示している。

 一度後退させられた文明も

腹を満たす事で知恵が出て来た。

何れ俺の想像もしなかった事が起こるだろう。

そうした時にどう対処するか。

縛りすぎるのも進化を阻害してしまうが、

ダメなものはダメだと言っておかなければ

無軌道で破滅的な事になってしまう。


「そういう点で宗教ってのは楽だよな」

「なんだ藪から棒に」


 俺は間の抜けた顔をして

ファニーの顔を見る。

纏めをしながらつい口から

考えが漏れていた事に

ファニーの言葉で気付いた。


「いやぁこれから進化が進んでさ、

皆が今は良いと考えていても

先々を見通した時ダメだった場合

どうやって説得しようかな、と」

「……また難しい事を考えているな」

「まぁね。進化が早過ぎる気がして」

「そうか? 元々巨人族も一時代を

築いた種族だ。これくらいのポテンシャルは

当然だと思うがな。生きるために

巨躯を生かし力を伸ばしていたのが、

今は文明文化に割ける余裕が出来ただけの事。

他の大陸の人間とは違うから、

そう近々でコウが心配するような

自体にはならんだろう」

「確かにね」

「お前は彼らを知らないだろうし

異世界に来て強化されてるから

どうしても下に見てしまいがちだが、

引き篭もりより優秀だ」


 図星である。

王様なんてやってると勘違いしがちだが、

元々無職引き篭もりのおっさんより

この世界の人たちの方が有能だ。

ここに来た時そして色々な出会いで

俺は強化されている。

戦いでも負ける気がしていないが、

強化を抜かせば一撃で死ぬだろう。


「謙虚さを忘れたら駄目だなぁ」

「謙虚過ぎるのも問題だがな。

それと宗教が便利というのは

為政者の意見だし、それを踏まえて

フリッグは使った。

アーサーは王の経験から来る読みと

己の能力を、お前は成果を出す事で

支持を得ている。

存在するものと不可思議なもの

違いはあれど行きつく先は

似ている。要は巧くコントロール出来るか、

それが破滅するか発展するかの

違いだと我は思う」


 流石竜だけあって聡明だ。

俺も思えばお札になってるくらいだし

そう言われればそうだ。

宗教と謳うかどうかの違いなのかもしれない。


「兎に角それを利用して人を動かそう

管理しようなどとおこがましい。

神のように振舞っていた者の

やる事に相応しいという事だ。

人の振り見て我が振り直せ、だぞ?」

「はい」


 俺は背筋を伸ばして纏めに戻る。

確かにその通りだ。信じる信じないは

人の自由。それを強引に勧めたり

それに属していなければ生き辛いなど

あってはならないと俺は思う。

また政治に利用する事もあってはならない。

見え辛くとも見つけて明確に禁止する

必要がある。

が、人は誰も弱いものだし俺もそうだ。

何かに頼りたい時もあるだろう。

そういった時に支え合える隣人が

常にいるような国にしたいと思った。


「では一旦本国に引き揚げよう」


 カトルを代理領主から領主として

任命し、正式に辞令を下した後

俺たちは帰国の途に就いた。

夜には本国に到着し直ぐに城で

今回の会議について報告し

意見を交わした。

案が色々出てそれを纏めて

今後の対策に生かす事で

全会一致し夜も遅いので

解散となった。

その後恵理たちとご飯を食べつつ、

留守中の国の話を聞く。


「例の再利用コンテストなんだけど、

フェメニヤさんとユズヲノさんにも

私たちの纏めた開催内容の書類を

見て貰って賛同してもらったの」


以前話に出た例の再利用コンテストについて

内容が纏まったらしい。

恵理が恐る恐る俺に話す。


「特に害が出るような事もないだろうし、

禁止行為も定めているようだし

書類を見つつ話を聞いてからだけど、

恵理たち主導でやって良いよ?

後審査員として参加したいから、

日程は早めに決めて教えてくれると

嬉しい」


 俺がそう言うと、恵理やリムン

エメさんやガンレッドはほっとした様子だった。


「そんなあからさまにほっとする事でもないだろう。

恵理たちから提案された事は協議する事はあるが、

却下した事は無かったと思うけど」

「いやぁでもさぁ、今国がこんな状況だし、

アーサーとの話し合いがうまくなくて、

そういう雰囲気じゃないかと思って」


 恵理たちは気恥ずかしそうに笑い合っている。

国としては色々慌ただしく、

そんな中でやったら不興を買うのではないか、と。


「いや寧ろこう言う時こそ気分を和らげる意味でも

是非やろう。ずっと張り詰めたままでは疲れるし」

「ありがとう!」


 恵理たちはきゃっきゃと盛り上がった。


「良い良い」


 ファニーは生きた分の貫録を見せて頷いた。

あえて何とは言わないが、生きた分の貫録である。

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