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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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会談の終わり

「我々の能力について、簡単に言うなら

私の能力を使って選ばれた者に与えたもの。

そしてそれは一つの事のみに限定されている。

これは私が神ではないものの、

異世界から来た者としてあちら側で

所有していた能力を元に最初からあったものだ。

それはコウ王が一番よく知っていると思う」


 そう、アーサーの能力は自ら書いた

設定やシナリオを元に、一定の空間魔力を使って

形成し有利に展開させるというもの。

空間形成能力とでも言うべきだと思う。


「私は魔族へ転生したが、人の部分もあった。

葛藤もあり二つに分け生きてきたが、

今は元の一人に戻った。

その上何故か魔族では無くなったものの、

魔力だけは内から生成されている。

だがこの大地は元となるエーテルが一切ない。

私が出来るギリギリの一二の能力を

精製し渡している」


 要は分割して渡したってことか。

恐らくレンの槍とかがそうなのだろう。

聞けばかなり明かしてくれたように見えるが、

レンと話して聞いた感じからして

何となく想像は出来たので驚きは無い。

だがアーサーの事。

本気になれば三百は出来るだろう。

それをしないのはやはり俺と一対一で

ケリをつける為に温存していると思う。

生成は今現在はどっちとも取れる言い方だ。

ただ場を形成し有利に運ぶのは難しいだろう。

それには膨大な魔力を必要としている。

魔族で無くなっているのが本当なら

更に難しいはずだ。

 全て想像だが、更に俺は

アーサーが能力を使って自分自身の

体の内側に場を形成し強化していると

思っている。前と同じかそれ以上か。

やり難いのは変わらないようだ。


「この情報量でどうだろうか」

「問題無い。ならば以前の問題の

一つをこれで解消としよう」

「そうか。なら話を進められるか?」

「勿論」

「休戦協定は受け入れて貰えるだろうか」

「協議をするのは構わないが、

受け入れるかどうかはそちらの態度次第だ。

宣戦布告とも受け取れる大使の問題が

まだ残っている。先ほどの事で

エムリスの先日の開催催促の無礼は

不問に付すが、一度目のエムリスの

使者としての暗殺に類する

行為に対する問題もあるし

どう解消する?」

「どういう事だ……?」


 アーサーの空気が変わる。

主導権は渡さない。

このまま休戦協定を結ぶ気はない。

エムリスが強気の態度に出ている事で、

両軍の対抗意識を煽っている事は

間違いない。

それは潰さなければならない。

潰すとなればそれ相応のものでなければ

アーサーは動かない。

あの時イシズエに触らせなくて良かった。

狙いは俺じゃなくても潰したのは俺だ。

暗殺と言えなくもない。

アーサーにとって俺と一対一で

ケリをつける事は、最大の目的だと

俺は疑っていない。

となればこの話、そのままにしておく事は無い。

切るのは今だろう。


「どうやらこちらの不手際は

想像以上のようだな……」

「気にするな、とは言えない。

俺一人なら意にも介さないが、

国の代表なのでな一応。

休戦協定も国と国との約束。

信頼し信用できる相手とでなければ

出来ない。俺の所有物ではないしな」

「なるほど。検討してくれるだけ

有り難かったと言う訳だ。

参ったな。ワンマンで力任せに

国を動かした事しかないと、

自分が思うように動くだろうと

錯覚していた」

「それだけじゃないだろうが、

中々曲者が多いようだ」


 俺はエムリスたちを見た後、

レンを見る。エムリスは完全に

バツが悪そうに視線を逸らし

レンは苦笑いをしていた。


「……どうやら都合良く

性急過ぎたようだ。

冷静に状況を把握すれば、

こんな事がまかり通る事自体

我が不徳と能力の低さを

物語っているな」

「卑下するのは似合わんが、

部下の者たちには良い薬に

なっただろう」


 殊勝な態度を見せているが、

情で動いては危うい。

こちらとしてはカイヨウに

スカジの対応を任せられれば、

トウシンに専念する事が出来る。

スカジに押し潰される様な事になれば、

俺たちも危うい。

戦力を元以上に引き上げる

支援をしたいのは山々だが

エムリスたちの態度では藪蛇になる。

強敵を育てるようなものだ。

戦略的には生かしておいてトウシン打倒後、

カイヨウを併呑しスカジに対抗が

最高のシナリオだ。


「今回は潔く検討してもらう、という

結論で引き下がる」

「そうか」

「だが私は諦めていない。

俺の目的は何一つ変わらないし、

その為ならあらゆる事をするつもりだ」

「俺もそれについては譲るつもりはない。

お前をもう一度倒すのはこの俺のみの権利だ」

「言ってくれる……ならばそれに俺も答えよう。

後日是非我がカイヨウで二回目の会談を

願いたいが」

「そうだな。誠意が見えれば応じる用意はある」


 その後アーサーたちを国境付近まで見送り、

ホクリョウに戻る。


「陛下、宜しかったのですか?」


 領主室に戻った後、カムイに問いかけられた。


「最上だろうな。あれ以上こちらが望む事は無い。

要求しすぎれば逆にこっちが不利になる」


 そう例えば能力の全公開を要求すれば、

それに見合う対価を払わなければならない。

国の肝であるだろうし、無礼を不問に付して

休戦協定を結ぶところまで譲歩せざるを得ないだろう。

あの場であの感じではそれは不味い。


「ファニーは大丈夫か?」


 俺はファニーに声をかける。

大分大人しく我慢してくれたようだ。


「大丈夫だ。殴りたい気持ちを我慢したがな。

殴りがいがありそうで何よりだったが」


 悪い顔をしてニヤリと笑うファニー。

何か複雑な経緯がありそうだ。

洞窟に閉じ込めたのはアーサーの片割れ。

ファニーはどこでどうやって竜になり

洞窟に閉じ込められたのか。

何れ明らかになる時がくるだろうか。



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