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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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ファニーと散歩

 翌朝、日課を終えて御昼前に

一息吐く時間が出来たので、

書置きを残して少し街を散策する

事にした。

周りに人が居ると目立つ。

勿論警護は必要ではあるが、

少しの時間だけ単独行動を

取る時間をもらっている。


「何をしておる王様」


 城から抜け出し塀から

屋根伝いに街を見て回っていると、

竜の羽を羽ばたかせた

ファニーが空から舞い降りてきた。


「散歩」

「散歩とは暢気だな」

「暢気というか気分転換だよ」

「人の生活を盗み見るのがか?」

「盗み見るとは人聞きが悪い。

普段皆がどんな生活をしているか、

困っていないか酷い犯罪が無いかどうか。

自分の目で皆の今をみたいし聞きたい」

「立派な事を言ってみても良いところ

のぞき見だがな」

「辛辣ぅ」

「お節介も大概にせぬと、頼りきりに

なってしまうぞ?」

「やり過ぎないように気を付けてるよ。

神様でも正義の味方でも無いけど、

出来る限りはな」

「そうだぞ? 口や頭の中では神様とは

違うと思っていても、やってる事が

それと同じになったらなんの意味も無い。

人間とは不完全なもの。

特にお前は元々引き篭もり。

やりがいを感じで奮起するのは良いが、

やり過ぎて他人を置いていかないようにな」


 そう言われながら街を見て、

改めて考え直す。


「なるほどな。俺が見ている、なんてのが

良い例なのかもしれない。

軍の者たちも見回っているし、

法務官もいるし」

「せめて起床時間の何割を割くとか

考えておくが良い。

お前に身近で尽くしてくれている

者たちにも気遣ってやる時間は必要だぞ?」

「ファニーとか?」

「勿論だ。それに関しては山ほど

言ってやりたい事がある。

また恵理やリムンなどもそうだぞ?

それにアリスたちも。

王様には王様にしか出来ない事がある。

何でも王様がやってしまっては

何れお前の精神的な部分が変化してしまう

かもしれない」


 俺は屋根の上に腰を下ろして街を眺める。

自分の心の内に尋ねてみた時、

引き篭もった俺の様な見過ごされた人間が

居ないようにしたかったのかもしれない

そう思った。


「頑張りすぎたかなぁ」

「何事も程々に、な。

程々にやる事がお前にとっても

国にとっても良いと思うぞ?

急になくなればそれはそれで

悲しむ者も居ろう」

「そうだな。じゃあ散歩を続けよう」

「我も共に行こう。

直接現状を見る事で

改善点もあるだろうし、

何か犯罪や企みを潰す事も

出来るだろうし」


 その後ファニーと二人で

街を見て回っていた。

基本的に大きな問題は無い。

皆笑顔が多く見られて良かった。

俺は文明がここより発達している

世界から来た。だからこそ

発達していく上で出る弊害などを

なるべく排除できるようにした。

ただ学も無く知識も無いので、

出来る範囲でしか出来ないけど。


「金色の絨毯とでも言おうか。

この小麦の景色は素晴らしいものだな」


 ファニーとこの国の一つ目の城壁の

上から塀の中にある小麦畑を見る。

ユグさんのお陰で土地の栄養を

回復させつつ、小麦を早く収穫

出来るような状態になっている。

ちなみに常時ではなく、

期間を開けて土地を回復のみ

行う時期と収穫の時期を分けていた。

回復には海で浮いていた海の生き物の

死骸や、海藻を取ってきて

土に混ぜ込んでいる。

国の後ろの海への道は

セイヨウ確保後に働き口を

求めてきた人たちと共に、

道を整備して今では輸送ルートは

安全な道になっている。

更に塩害もすくないので、

酷く暑い日には浅瀬ではあるが

砂浜で遊んだりもしている。

そしてその近くに家や商店が

立てられたりもしている。


「今度海とやらに行こうか」

「ファニーは海は見た事が無い?」

「そうさな。私の記憶がはっきりあるのは、

お前と出会った頃の事のみだ。

それ以前の記憶は長い冬眠状態で

ほぼ忘れている。が、仇を忘れたりは

せんぞ?」


 ファニーは眉間に青筋を立てて

微笑んだ。


「いきなりアーサーに殴りかかりそうだな」

「どうやら懲りもせずあやつは

王などをやっているようだな」

「どうも俺には良く分からないんだよなぁ。

あの頃のアーサーは自らを維持する為に、

人を取りこんでいた。

だが国は歪ながらも暴動を起こすまでは

行かなかった。

そして今またアーサーは王になった。

あの気難しそうなカイヨウを

上手くコントロールしてるんだろう。

ノウハウとかあるんだろうか」

「言いたい事は解るが、

自分の言葉を思い返せば答えは

出てるんじゃないか?

人を取り込む為に上手く気付かれず

国を長年運営してきた。

物書きとしては優秀だったんだろう。

今度は人を取り込む必要は無い。

お前を倒す為……というより

一対一になり決着を付ける為、

それだけの為に全力を傾ければ

良いだけだ。何も後ろめたい事も無く。

それがどれだけ楽かは推して知るべし」

「やっぱ一日の長か」

「全て見た訳ではないがな。

優秀な物書き特有の上手くいかなかった場合

癇癪を起すかもしれんが」

「俺は癇癪を起さないから優秀じゃないかもな」

「国を書く物書きとしては

大分落ち着きが無い上に、全て順調ではない。

経験値としてはそう負けたものではない。

それにお前には前から我を含め

知っている者も多くいる。

後はアーサーがどれだけの仲間を

得る事が出来たか。そこが問題かもしれん」


 物書きだとするなら、

アーサーはスカジとの戦の結果を

どう考えているのだろうか。

 ファニーと小麦畑を暫く見つめた後、

揃って城へと戻った。

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