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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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対アーサー会議

 ロキからの詳細な報告書を見つつ、

午前の会議は始まった。

会議ではロキもファニーも大人しい。

冷静に議論を交わしたし、

二人とも積極的に発言するよりも

聞き役に徹し不明な点を解説したり

する役割をしてくれた。

説明に不足があれば互いに問いかけ、

キチンとキャッチボールが出来ている。

特にロキは容姿はちょっと意地悪そうな

細身の黒尽くめ優男というだけじゃなく、

最近はその諜報活動の凄さもあって、

一目置かれている。

ロキに対して突っ込む事は、

俺以上に憚られる様な雰囲気があった。

それをファニーの存在が中和してくれた

ような感じになり、盛り上がった。


「アーサー対策と言うのは具体的に

何が必要だと思う?」


 昼食後、午後一発目の会議は

重臣の中の重臣のみで会議をした。

この日はアーサー対策と言う事もあり、

ホクリョウから久し振りにナルヴィが

戻ってきていた。

入れ違いに親衛隊のカトルが

ホクリョウの代理領主となった。

カトルとトロワと相談し、

オンルリオの仕事ぶりや

思想、精神的な面も

安定してきており今のところ

問題無いと判断したので

カトルの派遣となった。

アインスがセイヨウを統治し、

カトルがホクリョウ。

ツヴァイは現在親衛隊の

取り纏めをしていて要で抜けず、

次はトロワをと考えている。

 親衛隊は武もさることながら、

多岐に渡って学び一般兵よりも

責任が重く学び続ける日々を送っている。

人を纏める仕事が多く、

それを上手く出来ない者は

降格していっている。

なので代理領主として先ず適当である

と考えて全会一致になった。


「個人的な考えを申し上げれば、

アーサー王とは先ず何も無しに

対峙なさるのが宜しいかと」


 ヨウトはそう俺に言った。

その意見に場はざわめく。


「敵対国の王に対して

何もせず挑めと?」

「挑むというより今回は

会談です。あって話すだけ。

こちらから急ぐ理由は無いですから。

陛下としてはトウチ方面の安定に

重きを置きたいでしょうし、

我が軍的にはセイヨウに

アインス卿とハンゾウ殿を置いて

対策を施しておりますし

今一番薄い面を強化し地盤を固めるのが

良いかと」


 ヨウトの意見に頷く者が多い。


「カイヨウは放置しても問題ないと?」

「いえそうではなく、

下手に身構えて対応するよりは、

先ずは会って相手の出方を見極める。

我が方としては我慢に我慢を重ね、

現在も正式な謝罪どころか

二度目の使者による不敬な訪問も

問わずにきっちり接待をし、

何事も無く返すのが周りに対する

アピールにもなるかと」


 俺は少し吹いてしまった。

確かにそう言えばそうだが、

逆にアーサーが俺の出方を

窺っているように見えている。

俺以外を揺さぶった挙句

どう出てくるのか。

そう考えた場合、対策なしで

ご丁寧に接待するのは

格上の国に対するのと変わらない。

無条件で両手を上げているに等しい。


「陛下、何か御考えがおありで」

「皆随分と我慢強いな。

俺なら二度も侮辱された挙句

ご丁寧に接待するだけの会に

意味は無いと思う。

それにアピールするのなら

トウシンやスカジの情報が

明るみになる前だ。

今はアピールする必要はない。

今アピールするべきは

我が国の姿勢そのもの。

それが侮辱してもなんら対応しない国

というレッテルが貼られれば、

攻めやすいと思われるだろう。

三国に責められるのも無し。

スカジトウシンに攻められれば、

カイヨウは易々と我が領土を

攻めてくる。まさかカイヨウが

攻めてこないなどと思ってはいないな?」


 俺の言葉にヨウトはメモを取りつつ

頷いている。他の皆はその通りと

同意した。


「で、ヨウト的にはそれらを加味して

どう会談に向かうのが良いと考えている?」

「はい。敢えて雑談で終わらせて

帰ってもらうというのは、均衡が保てていれば

それで良かったのですが……」

「確かに」

「この状況で不確かなスカジトウシンに

期待するよりも、やはり解ってる部分が

少しでも多く与しやすいカイヨウと

同盟なりを結べるよう、こちらから

取引を持ちかけるのが最上かと思います」

「あっちは足元を見てこないかな?」

「はい。仮に見てきた場合は、

こちらは直ぐに手を引くのが良いかと。

ロキ殿の資料にもあるように、

あちらは今手痛い失態をしたばかり。

こちらが絶対にスカジトウシンと

組まないという保証は誰にもありません」

「馬に対する人参は何が良いかな」

「やはり食料提供と技術協力が良いでしょう」


 その言葉に周りはざわめく。

手札を二枚も渡すとなると、

更に二枚切り札を持たなければならない。

この場合ヨウトが切る手は、

かなり大きなものになる。


「相手に理が大きすぎないか?

同盟というだけで別に我が方には

具体的な利益が無い。

カイヨウはただ同盟するというだけで、

食料と技術が手に入る。

そんな虫のいい話はないだろう」


 ジグムの言葉にヨウトは頷く。


「然り。そこでそれらを相手に渡す代わりに

食料提供技術提供を直接行うのを条件とし、

諜報部や軍部の人間、戦術局の人間を

混ぜてカイヨウを探りカイヨウの国そのものに

対して我が国に好印象を植え付け、

戦争を起こしにくくするのはどうかと」

「それは随分と気長な話だな」


 レンが口を開く。


「カイヨウって国は皆知っての通り、

塩害が酷くて食料も海のものの限られたものや、

小さい川から取れるものが主だ。

生産も蒸留技術が発達しているが、

それも特定の部分においてのみ。

言わば武こそが誇れるもの。

それがスカジにやり込められた。

勿論やり返そうという思いはあるだろうが、

あのカイヨウの兵たちが半壊する。

その事実を知って俺はカイヨウの

兵士たちがスカジと進んで戦おうと

思っているとは考えられない」

「なるほどな。矜持を折られたのと

同じだからな」

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