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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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元王女たちの今

それからユリナと少し離れた喫茶店で

近況を聞く事にした。


「で、どうかな」

「はい。陛下が登用して下さったお陰で、

私たち家族も普通に出歩く事が

出来るようになりました。

本当に感謝しか御座いません。

我ら兄妹は陛下に絶対の忠誠を

お誓い申し上げます」

「それは有難い。ユリナ達兄妹の力を

貸してもらえるなら百人力だ」


 ユリナ達はイシズエ達とは違い、

言わば国家の非常事態の為に

生まれた存在だ。

不自由無い暮らしは出来ていたものの、

それこそ誰も触れられず

そして通常時には反乱を起こさないよう

加担しないよう監視される立場にあった。

教育も賢くなりすぎず下品になり過ぎず。

国家が揺らいだ時に交代出来るよう、

ほどほどの正義を旨に箱入り状態で

育ってきた。

 ロシュはその境遇に反感を持ち、

目を盗んでは国の中を歩き回り

生きた知識を身に付けて行ったようだ。

そして俺へ譲位され国が

生まれ変わり始めると、

乗り遅れないよう行動を

起こした。


「ロシュは運が良いなぁ。

下手をすれば捕らえられて利用されたかも

しれないのに」

「はい。私達も気を揉んでおりましたが、

どうやらお付きの方たちも尽力して

下さったようで」


 影となり見守った者たちも当然居た。

彼らからすれば長い間見守るうちに、

彼女たちこそと思う事もあっただろう。

一蓮托生という考えもあったと思う。

ロシュ達を登用した後、

諜報部隊を使って捜索した。

人数にしてたった十人。

十人だけが俺が探すまでずっと

彼女たちを見守り続けていた。

俺は彼らも登用し、彼らも胸を張って

堂々と護る事が出来るようにした。

ただし途中で離れたりした者には

名乗り出てきたが、特に何もしなかった。

陽の目を見る事は無くても、

最後まで彼女たちを守ろうと尽くす。

その心意気を王としては護りたかった。


「俺の後の王が誰になるかは

今は解らないが、

恐らく人となりなどが問われるだろう。

そうなれば誰にでもチャンスがある。

俺としては俺の寿命以上に責任は持てない。

その後の事はその後の世代に任せる」

「それは大変ですわね」

「そうか? 俺みたいに好戦的で

前に前に出る王じゃ皆心配だろう。

与し易しと思って使者に喧嘩は売られるし、

次は強く大きい者が

王に選ばれるんじゃないか?」

「私の予想ですが、そうはならないような

気がしています」

「そうなの?」

「はい。私達は壊滅状態から復興へと

進んでいる状態ですが、陛下の様に無欲で

細かい所にまで目を向け

声を掛けられている。

一般の間の諺に、コウ王の目を見ろ、

というのが御座います」

「どういう意味なのかな」

「王は必ず見ているという事ですわ。

良い事をすれば奨励し、悪い事をすれば

地位に関係なく処罰されるという」

「そんな完璧じゃないんだけどなぁ」

「勿論そうでしょうけど、私たちでは

到底目が届かないところまで、

陛下は布告なさったり表彰したりと

驚きばかりですので、そうであったとしても

なんら不思議だとは思えない、

と皆考えている事の現れではないかと」


 個人的にはこの大地を開放し、

オーディンに対抗するまでの王だと

考えている。なのでゴールはちゃんと

見えているからこそ走れるというのも

あっての事だ。

今やってる事を何十年とやれと言われたら、

出来る気がしない。

恐らく統一となれば、

一個の王一個のカリスマで支配するような

事は無いと思う。連合体のような

存在になると。

王様は何れ象徴としての存在に

なるかもしれない。


「まぁ何にしても俺は引き篭もりたいから、

この大地が俺の寿命分くらい平和を謳歌

出来るようになったら即引退するからな」

「引き篭もりって楽しいんですか?」

「……そうだなぁ。誰の目も気にする事無く

寝たい時に寝て起きたい時に起きて、

動きたい時に動く」

「あまり陛下は楽しそうには見えませんが」


 そう言いながらユリナは笑っている。

しかし終始ガンレッドは固い顔をしていた。

ユリナ達に負い目があるのは解る。

何よりガンレッドが街中を動いていたのも、

ユリナ達の事を探す目的もあったらしい。

探してどうしたかったのか問うと、

答えに窮していた。

申し訳ないという思いが先立って、

何をどうするという事は

思いつかなかったのだろう。

今はガンレッドも冷静に考え、

それは危険な行為である事は解っている。

だからこそ更に気まずいのだろうけど。


「まぁガンレッドも兄と姉が増えた事で、

少しは気楽になっただろう」

「私も妹が出来てとても嬉しく思いますわ。

常にお兄様の後ろに居ましたが、

私の後ろに妹が居ると思えば張り合いが

出ますもの」


 ユリナは手を上げて肘を曲げ、

力こぶを作って頬を膨らませた。

俺はその可愛らしさに微笑む。

ガンレッドは苦笑い状態である。


「何を畏まっているんだガンレッド」

「いえ……」

「陛下どうかそのままに。

私の愛らしい従妹は内気なのです。

思う事の一番大事な事は言葉に出来ません。

ですので私も陛下も彼女と心を通わせる

その積み重ねをせねば」

「確かに」

「ところで陛下、お世継ぎは?」

「世継ぎ? さっきも言ったが

俺は一代限りだ」

「ではご結婚は?」

「今のところ何も考えていないなぁ。

前は収入も仕事も無くて有り得なかったが、

今は収入があっても暇がないし。

暗い話題が続いた時に考えなくもない」

「お相手は?」

「そう言われると困る」

「今周りには沢山女性がおられますが」

「冒険者時代から着いてきてくれている。

大切なのは間違いない」


 そう俺が言うと、

ユリナは眉間にしわを寄せ

唸りながら首を傾げた。

なんか変な事を言ったかな。


「……なるほど。これは重傷ですわね」

「そうか?」

「ええ。これは相当の難物だと

私確信いたしました」

「そうかなぁ」

「そうです。お兄様もそうですが、

陛下も大分患っていらっしゃいます」

「そんな事無いと思うけど」

「……あくまでお認めにならないと?」

「いえす」

「なら今度私とデート致しましょう」

「え!?」


 ガンレッドの馬鹿でかい声で

耳がキーンてなった。


「何だなんだ」

「え、あ、いえ」

「兎に角陛下。私への褒美として

是非御一考くださいませ」

「分かった考えよう」

「え!?」

「……なんださっきから」

「あ、え、はい」


 ユリナは意地悪そうな顔をして

俺とガンレッドを見ていた。

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