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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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未来へ向く国

「しっかし陛下も辛抱強いなぁ」


 落ち着いたレンの羽交い絞めを解いて

席に着く。レンも席に着き肩を窄めてそう言った。


「そうでもない。王様だからってのが

無ければ斬ってたかも知らん」

「気遣いどうも」

「こちらこそ」


 レンは怒っていただろうけど、

俺に代わって怒ったって

いうのが正解だろう。


「一息吐いたら会議を始めようか」

「了解。外を見てくるわ」

「頼む」


 じっとしているより動いた方が

レンは気分転換になると思って

促してみた。

 暫くして皆入ってきたが、

一様に顔は険しく怒りを隠していた。

皆辛抱強くて何よりだ。

ただここであの使者を生かして返したか?

などを尋ねたが最後、噴出しそうな

勢いではあるのでスルーした。


「現在我が国は戦勝に沸いております」

「それは良かった。良いニュースが

多いに越したことはないし

盛り上がるのも良い。

だがその陰に今回に尽力し

命を落した者の

事を忘れてはならない。

俺の名を記し明日にでも布告する」


 国内は戦勝で盛り上がっており、

出兵した兵士たちも労いを受けている。

その事で今回控えに回っていた

兵士たちもやる気を出しているようだ。

何より領土も広がってきている。

その事で入隊希望者が大勢押し寄せており、

カトルとトロワオンルリオを中心に

入隊検査を厳しくしている。

其々の適性を判断し、

より力を発揮できる場所へ

配属する狙いがある。

 戦場で死者ゼロとはいかない。

今回も残された家族には手厚いフォローを

していくと共に、

死者を弔い哀悼の意を表する式典の予定を

入れている。

城のすぐ外には、戦死者の

冥福を祈る石碑を建て公園も作った。

発展する国を見守れるようにと考えて。

今はもう術は使えないものの、

巨人族の司祭の末裔が祈りを捧げ

疫病の事もあって火葬している。


「陛下のご指示通り、明日の早朝から

式典の準備をし、正午前に陛下のお言葉を。

正午と同時に黙祷という流れになって

おります」

「プログラムは見た。あれで構わない。

今この日を迎えられるのも、

亡くなった者たちの奮闘もあってこそだ。

祈る事と感謝する事しかできないが、

せめてキチンとしよう」


 こういう式典は特に年長者たちから

称賛の声を頂いている。

国が新しい時代に急速に向かっていても、

大事な事を疎かにせず出来るだけ汲み上げたい。

そうあってこそ、俺の寿命分くらいの

平和が望めるのだろうと考えていた。

 それから予算の話などをし、

朝の会議は終わった。

俺は書類の決裁を暫く続け昼食を食べた後、

治水局を訪れ治水の状況を聞く。

排水路をトイレと生活、農業などに分けているが、

中でも最近は生活の排水路が

油が増えてきてそれをろ過するのが難しいようだ。

幸い今のところ食べ物を流すものは

少ないようだ。俺の名前入りで食べ物を流し

水を汚さないよう注意喚起もしている。

それでも無いわけではないので、

注意喚起をし続けると共に、水路の掃除を

区画内の家庭で持ち回りでさせるように指示をだし、

労いの言葉を掛けて局を後にする。


「相変わらず王様は落ち着きが無いのぅ」


 ファニーが空から舞い降りてきた。

意地悪そうに笑いながら言うが、

なんというか安心感というか懐かしさもあって

少しホッとした。


「な、なんだその顔は」

「いや別に。それより調べ物は良いのか?」

「調べものばかりでは退屈なのでな。

少し街の中を動きつつ、出来ることを

しているまで」

「出来る事っていうか対僕の仕掛けを

して回ってるようだね君は」


 ロキが家の陰からじわりと現れる。


「そっちも順調のようだ」

「皮肉が凄いね。まぁでも良いさ。

本当に順調だから。次ふざけた真似を

したら、軍まるごと消し飛ばしてやれる

仕掛けを作った。君を貶めるような事があれば、

更に強く月まで吹っ飛ばせる仕掛けをね」

「それは頼もしい」

「まさかロキがまともに働く姿を見られる日が

こようとはな……」

「ふん。誰の息がかかってるのか知らないが、

お互いコウが勝つ為に動いている事は

間違いない。何しろ僕はアーサーじゃないんでね。

そう敵対しされても困る」

「そうであったな。もし貴様が要らん真似をした時は、

我の仕掛けを持って焼き尽くしてくれん」


 なんか嫌な予感がするな。


「あ、あの……」

「なんだイシズエの子か。どうした」

「何か問題でもあるのかな前王女様」

「それ、お二人の仕掛けがかちあって

不発になるっていう可能性は……」


 そう言われて二人は腕を組んだり

手を顎にあてたり首を捻ったりし始めた。


「手の内は明かさない程度に話し合ってくれ。

結果が出たら知らせてくれよ」


 俺は二人の間を通って次の場所へと行く。


「あらコウ王陛下」


 ユリナが配属されている教育局へと足を運ぶ。

ここは言うなれば次世代の国そのものを

左右する大事な場所だ。女性男性入り混じって、

子供たちにどういう教育が必要か

日夜頭を使いそして現場を視察して考えている。

国は結局人だ。人が荒れれば国も荒れる。

冷静になって物事を見て判断し、

生きやすい世の中を皆で支え合い

一緒に作ってほしい。

そういう俺の願いを念頭に置いて活動して

くれていた。


「ユリナ、調子はどうかな」

「はい。日々積み重ねてより良い未来に向けて

皆さん頑張っております。私も負けないよう

奮闘しております」

「ユリナの優しい感じで奮闘と言われると、

やはりそれほど難しい事なのだな」

「ええ。何かに固まってはいけませんけど、

私たちも聖人ではありません。

そしてそれが正しかったかどうかは

直ぐには解りませんから」

「矛盾を抱えたまま、か。

難しい仕事だとは思うが、

その分兵役を避けてもらい予備兵として

登録だけしてもらっている者もいる。

生涯をこの仕事に掛けるつもりで

頑張ってほしい。

少なくとも俺とユリナは皆の働きを

見ているから」


 俺は職員に向けて言葉を掛けた。

力強く頷く人たちの目に諦めなどは

微塵も無い。書類やペンを片手に

俺を見る眼差しは、仕事に燃えている

ように見え頼もしく感じた。

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