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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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東の領地の斥候

「陛下失礼します」

「ただいま」


 ガンレッドとエメさんが

部屋に来た。視察した感じだと、

里に不穏な感じは無い。

エメさんの話だと環境も良く、

元々質素な暮らしをしていたので、

大地の荒れ方も他より酷くなく

良いようだ。

ガンレッドは住民達を見ても、

兵士が来た事によって不安というより、

寧ろ安心している印象を受けたと言う。


「そうか……という事はひょっとすると

スパイの一人や二人いるかもしんないな」

「調べて見ますか?」

「そうだな。俺たちが斥候に行っている間に、

調べるだけ調べてもらおう。ただし怪しいって

だけで捕らえて来ないように念を押してな」

「あ、はい」

「どうした?」

「わ、私も連れてって頂けますよね……?」

「まぁ一人くらい問題ないだろう」

「あ、有難う御座います!」

「よし、なら皆急いで行こう。

出来れば夕方までには帰って来たい」


 皆頷いた所で支度を開始した。

アシンバノウセス、ヨウトグオンさんシンラ。

其々に事情を説明し中々納得してくれなかった

が、最終的に押し通して出発した。


「で、何でお前は付いて来たんだ」


 俺はツキゲに乗り、他の皆も馬に乗って

東の領地の首都まで掛けている。

俺と併走しているのはいつもの槍使いだ。


「陛下が居るところが俺の居るところだ。

死ぬ時もまた同じ」


 槍を担ぎつつ渋い決め顔でそう言った。

本気で言ってんだろうなこれは。


「桃園の誓いじゃあるまいし……。

一宿一飯の恩義は凄いな」

「おうよ。陛下も知ってると思うが、

アーサー王以前のカイヨウはお世辞にも

良い国とは言えない。だからこそ、

うちの国にはカイヨウからの移住者が

多い。あのジグムのような一族で

体を悪くしている者を救う術も無い。

陛下にこんな事を言うのも身内びいき

くさくてなんだが、カイヨウから来た

人間は基本信頼しても良いと思うぞ?」

「最初に使者として来た時とはエライ違いだ」

「当然だろう。裏切ったノウセスに対して

恨みもあったしな。陛下に待たされている間、

お目付け役の人らと国を見て思ったのさ。

どうしたら良いのかってな。

そこで考えた訳だ。陛下と見て回って見るかと。

今もノウセスは嫌いだけどな」


 まぁ皆この貧困から抜け出したいのは

変わらない。ただし前々王の事もあって

カイヨウは俺たちに組しなかったし、

トウシンは俺たちを下に見ていて、

スカジは独自体制を引いていた。

俺たちの国が変わったと言っても、

直ぐには信じられないのも無理は無い。


「で、アンタ役に立つの?」

「ん? ああ勿論だ恵理王妃。

いざとなれば我が身を盾にして

皆を護るくらいは出来る」

「そんなんじゃアタシたちと

一緒に居ても邪魔になるわよ?」

「解ってるって。でも前に首を狙われた時、

多少は認めてくれただろ?

陛下も腕を見て俺を置いてくれてる。

本気の俺を見てくれたら

手放さなくなる自信はある」

「ホントかしらね」


 恵理は呆れつつ俺の顔を見た。

てか王妃ってなんだ納得するな。


「なんかレンのおっちゃん、

不思議な感じがするだのよねぇ」

「やっぱ解るかリムン王妃。

でも内緒にしてくれよな?

俺にはその一芸しかないんだから。

何れバレるにしても誰も知らない方が、

相手の意表を突ける」


 こいつ女性に対して王妃って

つけるのは口癖なんじゃなかろうか……。


「レンは大地と不思議な縁を持っている

気がする」

「……内緒にしてくれって言ってるだろ? 

エメラルド王妃。

先祖代々受け継がれたもんだから、

詳しい経緯は知らんけど悪いもんじゃない。

だけどそうしょっちゅう使えるもんじゃない

って事だけは教えておくぜ?

当てにされすぎるのも困るが、

他の奴よりは役に立てるはずだ」

「それはアーサー王の騎士たちも

持っているのですか?」

「ガンレッドの嬢ちゃん、そいつは

幾らなんでも言えないなぁ。

仲間は売れない。例え元仲間であっても。

ただ察してくれ」

「何で私だけ嬢ちゃん……」

「何か言ったか?」

「いえ……」


 がっかりしたガンレッドを余所に、

レンは俺を見た。なるほどね。


「まぁレンはそれが無くても

付いて来そうだがな」

「当然。奇妙なものの一つや二つ、

俺の槍の前では些事さ」

「それにしても皆レンと面識があるとは

余程俺が留守の時暴れたとみえる」

「んなこたぁないよ。ただ王妃達は

心配性なだけだ」

「違うわよ。偉そうで物騒な奴が

槍を片手にうろうろしてたらそりゃあ

あるより無い方が良いでしょ?」

「あの頃のレンのおっちゃんは

物騒だったから仕方ないだのよ」

「今も物騒」

「そうかなぁ……今はそうでもない

と思うんだけど、王妃達が言うなら

そうなのかもしんないな。

なるべく気をつけるよ」


 そんな話をしつつ、東の領地が

見える丘に辿り着く。


「皆どう見える?」

「霧が覆ってる」


 そう、東の領地を仕切っている

街には、霧が発生していた。

今は昼間で陽が高く、

霧が発生する訳も無い。

霧が出るくらい水気が多いなら、

もっと大地は潤うはずだ。


「何が狙いなのやらな」

「見えなくする以外の目的があるって事?」

「だろうな。俺や陛下に対してだけじゃなく、

兵士も弓兵を多めに配置して且つ可動式矢倉を

置けば、ほぼ平行更に上から下に矢が放てる。

ガンガン矢を放つっていう不経済な面はあるが、

それプラス篭城でうちには勝てないだろう」

「でもそれを相手は知らないかも

しれないだのよ」

「リムンの言う事はもっともだが、

恐らく例の追放者達が情報を売ったのだろう。

生きる為には止むを得ない事だ」

「陛下の言う通りだな。となるとやはりここは

トウシンにとっての捨て駒、時間稼ぎと視て

間違いないだろう」

「トウシンはどこかと繋がっている」

「そう、エメさんの言う通り。

霧を撒かれた時点で後手だなぁ。

足も止められたし」

「となるともう私達の国の情報は

トウシンにほぼ筒抜けですね」

「陛下、急いだ方が良い。

ヘタをするとトウシンの兵が来る」

「だな。皆急いで戻って夜戦の支度をしてくれ。

今回は皆で出る。霧対策もあるし、

恵理達も準備してくれ」


 皆が頷くのを見てからツキゲを

走らせる。

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