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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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非嫡出子

会議の後書類仕事や街の巡回を終え、

就寝し次の日の朝。

日課を終えた王の間に今日も早朝から

客が着ていた。


「陛下、お呼びにより参上仕りました」


 目の前に居たのは黒髪で背は小さいものの、

筋肉は通常の巨人族よりがっしりしているが、

無駄なものをそぎ落としたような体型をしている

青年だった。着ている物は一見ベーシックな

布の服に見えるが、明らかに品質は上質なものに見える。

また端整な顔立ちに全く合わない庶民デザインが

ちょっとイラっときた。

 

「よく来たな。用件は察しは付くか?」

「さぁ……」


 ニヤ付きながら俺を見る目は試すような目。

細い釣り目は自分以外下に見ているようだった。



 話は少し前に戻る。セイヨウの攻略前の事。

ジグムとウルシカが俺に報告に来た。

商人の間で派閥争いが激化しているとの事だった。

切磋琢磨をする事は良い事だ。

何しろ商人と言うのは利で動くもの。

ただ金を巻けば良いというものではなく、

また少ない財布では恩を売り切れない。

欲が強く機転が利くのが商人。

それを纏めて派閥が出来る人間。

そこに俺が欲している人材が居る。


「暫く泳がせておいてくれ」


 俺は書類決裁をしながら、ジグムとウルシカに

そう告げた。二人はあまり良い顔をしなかった。

ウルシカは特に目に見えない派閥を作る

人間からすると、露骨でいやらしいかもしれない。

ただそれは万人が出来る事ではない。

ウルシカだから、の一言で済んでしまう。

ともするとそれはシステムとして不完全だ。

勿論完璧には行かないだろうが、

長い目的目標の一つとして人の差は在れど、

安定した経済の循環を素早く布けるものを

資料として作りたいと思っている。

 今は簡単に言えば善からの視点のみだ。

悪、と言ってはなんだがもっと冷徹で

生々しい視点も必要だと思っていた。

そうであってこそ、俺自身がこの大地で王として望む、

俺の人生プラスアルファくらいの平和が

望めるのではないかと考えていた。

 恐らくこの大地が開かれ

他の大陸と交流するようになれば、

物資は自ずと満たされてくる。

そうなれば抜け道を探してやっきになる。

当然出来はするだろうが、

それを見越した行動はしておきたい。

その為に必要な人材かもしれない。



「何故仲間を売った?」


 時は王の間の朝に戻る。

目の前の青年は、俺の言葉に目を見開いて口を少しあけた。

その後寂しそうな顔をし鼻で笑いながら言う。


「本気で聞いてらっしゃるなら何の事やら

身に覚えのない事です」

「ジグムとウルシカへそれとなく伝わるように

仕組んだであろう。役人真っ青の書類を添えてな」

「……陛下の部下は皆優秀です」

「優秀なものばかりで国は立たん。

実直に出来る事をしっかりこなすものが多い事は

王として自慢ではあるがな」

「何処が気になったのです?」

「あまりにも簡潔且つ裏付けされたデータだ」


 俺はシグムとウルシカから渡された、

先日追放された商人達の事が書かれた

書類を少年に手渡してから王座に戻る。


「この国の人間がこういうのを作るには、

もう少し時間が掛かる。それに筆跡。

これは書いたものは一人だが、

この情報を集めたものではないな?

字は綺麗ではあったが、

その内容に自信が無いのか恐れたのか

迷いが見えた。

恐らく報告の形式を一本化し、

書き入れるだけで良いようにしたんだろう。

それにしてもよく出来ている」


 その言葉が少年に火を点けたのか、

目が輝くのが見えた。


「それと私が何の関係が?

ウルシカ殿の教育の賜物ではありませんか?

我が国は稀に見る成長期。

誰も彼もが出し抜こうと知恵を絞って居りますれば」

「お前もだろうロシュ」


 名を呼んだ瞬間、目から輝きが潜んだ。


「……私のような者の名前も

知っておられるのですか?」

「血筋良し容姿良し運動能力良し。

更に機転が利く。戯れに尋ねたいが、

何故国を取ろうとしなかった?」

「……何のことやら……」

「ちなみに俺は誰から聞いたとかではないぞ?

自分で調べた。お前も解っているだろうが、

情報は情報だ。そこから人の感情で取捨選択され

俺のところに上がってくる。

捨てられた情報と上がってきた情報の、

僅かな隙間に秘密があった。

俺は別に前の王の血筋について

過度な待遇をするような事はしていない。

あっちもそう暴れてはこなかったし」


 俺は青年、ロシュの動きを見ていた。

一見表情は変わらなかったものの、

血筋、と言う言葉に頬骨の辺りが少し動いたのを

見過ごさなかった。


「イシズエから聞いた事があったんだ。

いざ国が乗っ取られたときに、

仮に王族が滅ぼされても後に復興できるよう

その旗頭として作られた非嫡出子が居るかもしれない、

というのをな」

「私がそうだと?」

「ああ。貴賓あふれる教養というのは残念ながら

俺のような庶民出にはない。

特にこの大陸では食が勝る時代が続いたと思う。

だのに歩く姿喋る言葉視線。溢れ出るそれは

貫き続けてきたのだから、抑えるのには無理がある」


 そう言うと少し頭を下げ表情を隠した。

追い討ちを掛ける事も出来たが、

そんな無粋な真似をするような相手なら、

元から俺を攻撃してきただろうし。


「王、コウ王に一つ問いたい」

「なんだ」

「罪は俺一人にある。後は無罪放免にして欲しい」

「お前も無罪だ。ただし条件がある」

「なにをお望みで」

「妹と弟を差し出してもらおう」


 その言葉に顔全体で怒りを露にした。

資料では知っていたが、横に居たら刺されてるなこれは。


「解っているだろう?

生きる事だけで精一杯だった者たちは、

今ゼロから知識を身に付け知恵を出している。

ロシュよ、その教養無駄にするな。

それは責任でもあるぞ?」

「い、妹と弟はまだ」

「偽装するにも無理があるだろ……。

手は込んでいたがな。会って話せばバレる」


 以前までは無かったが、

今は住民調査のついでに国には似顔絵付きで

資料がある。ロシュはそれにコネを使い

小さな修正を重ね続け、

妹と弟の顔を偽装。経歴も通常ありそうなもの

且つバレてもバレなくても良い程度に修正を

していた。


「……どこの世の中に庶民の間を歩いて回る

王がいると言うのだ……」

「俺が居る」


 ロシュは大きな溜息を吐いた。


「兎に角人が足りないんだ。これ以上日和見を

続けて裏の支配者を気取るなら、嫌々だが

俺初人に対して勅令を出す事になるが良いか?

良いのか? 未来永劫人に対して発した

勅令の第一号になるんだぞ?

更に家の前で大々的に内容を読まれて城で暮らすんだぞ?

どうする? 目立つぞ? お祭りとか祝日にするぞ?

何世代先か解らないレベルまで残るぞ?」

「じ、地獄だ……」

「まぁ諦めて国の為に尽くせ。重臣の列に並ぶもよし、

街から城を見るも良し。だが力は貸してもらう」

「どうするつもりだ」

「まだこの大陸は全く持って安定していない。

特に大地の再生、生態系の回復が最優先であり、

独り占めは避けなければならない。

だが褒美と未来が無ければそこに発展は無いだろう」

「コントロールすると言う事か」

「雁字搦めにせずに、な。

何れ俺の手から離れるとき、恐らく世界は

自由競争の波に飲まれる。それまでに皆が

経済について知恵と知識を養ってもらわないと」

「王は真面目に誰かに譲るつもりなのだな……」

「当然だ。お前でも良い。必ず譲る。

俺は一日だって引き篭もる事を諦めた事は無い。

まぁもうちょっと無理かなぁとは思ってるし、

それが目的じゃないって気付いてるんだけどね。

俺なんで引き篭もろうとしてるんだっけ?

引き篭もって何をしたいんだっけ?

とか最近ふと思うわけ」

「諦めてるじゃないか」

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