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冒険者、王に本気を出させる

王座の間で繰り広げられる斬り合い。

そして現れるのは?!

「そらそらそら!どうした引きこもりで無職のおっさんとやら!偉ぶったわりにはその名の通りではないか!」


 王は素早く振り被り重い斬撃を繰り出してくる。

息は合ってきた。

相手の呼吸と斬撃のクセを見抜けてきた。

ただ前に出てくるので下がらない訳にはいかない。

円を描くように薙がないように、

少しずつ方向を変えて、王座の間を巧く使う。


 こいつのスタミナは無尽蔵なのか?

だとすれば、これは下作だ。


「アンタスタミナ切れとか無いのか?」

「あれば良いな。だがお前もそうだが我も大した力を出しておらん。まぁ多少疲れはするがな」

「そうか、よ!」


 俺は小さな隙間を突いて腹に蹴りを入れて距離を離す。


「ふむ……しかし本当に斬れないな。我を見切ったと言う事か」

「さぁな。アンタがそこまで本気じゃないなら、見切れて無いだろう」

「なら全力で行こうではないか、互いにな」


 王はニヤリと笑い、大剣を左肩に置くように構える。

見透かされているのはお互いに同じ。

そして切り札を持っているのも同じ。

なら隠しても無理か。


「了解だ。真剣勝負と行こうか」


 俺は剣を振り上げて腰を落とす。


「フン!」

「はぁっ!」


 剣と剣とがぶつかり合う音が王座の間に響く。

流石ラスボスの本気だ。

どれも一撃必殺と言える。

俺も鍔から剣身が三つ又になり光の刃を作る黒隕剣を、

力の限り斬りつけて行く。

 お互い全力を出しつつ、隙を窺っている。

気を抜いたらやられる。

息を吐くにも相手のタイミングに合わせて、

足捌きも合わせてズレずに斬りあう。

 

 しかし向かい合っていると、王が本当に強い事を実感する。

これを相手に俺がまだもっているのは、

少しは体力もアップしていると言う事なのか。

黒隕剣には一旦魔力を吸われた後、残りの俺自身の魔力と

合わせながら、インパクトの瞬間のみ力を解放するように

なっていた。

 そういう意味では本当に省エネに徹した戦い方が

完成している。

恐らく隙を見せた時に放たれる一撃、

隙を見つけた時に放つ一撃、

防ぐも護るも同じ力を放つ事になる。

その時どの程度消耗するのかは予想が付かない。

 まさに切り札。

切った後には何も残らない可能性がある。

その為にイーリスとアリスは控えていてくれる。


「しかしお前の器用さにも呆れるな。我の攻撃や動きの全てに合わせてくる」

「アンタが一番強いからな。アンタの動きは参考になる」

「……何と言えば良いのかなこの感情は」

「頭にきた、だろ?」


 王は眼を見開き特大の一撃を大振りで加えてきた。

俺はそれを黒隕剣と共に防御する。

まだだ、まだ削りが足りない。


「確かにな。そう頭にきた。我は誰よりも強い。お前もそれに類する者だと見つつも、我はお前を見下していた。それがここまで食い下がるどころか、良い様に手玉に取られている感に頭にきた。互いに切り札を残しつつ斬り合うこの状況は想定外だ」

「アンタは予想外の出来事に弱そうだな」

「そうだな。しかし良い様に人の手のひらで踊らされるのも気分が悪い」

「だがそれは仕方が無い事だ。アンタと俺じゃタイプが違う。解り易く例えるなら攻と守。俺もアンタの一撃をまともに受ければ死ぬ。だからこそギリギリの勝負を挑んでなるべく有利に進めないとね」

「攻と守か。だがお前は我を消し飛ばせる切り札を伏せている」

「それは過大評価だろう。しかしアンタは一人で戦っているが、俺には有り難い事に背中を任せられる奴らが居る」

「で、今度は何をしようというのだ?」


 王は殺気を放ちつつ構える。


「取り合えずアンタの余裕が消えるまで、俺と斬り合ってもらうだけさ」

「……」


 王はそれを聞くと、構えを解き顎に手を当てて考え込む。

有り難い。

これで消耗した体力を回復できる。

俺はゆっくりと息を吐きつつ、体に行き渡るように息を吸う。


「ならそれもお終いだ」


 王がそういうと、足元には魔法陣が現れ紫の光が立ち、

王を円柱状に囲む。


「ここまで五分の力しか出せなかったのは、人の形をしていたからだ。お前を消し去るには、この姿では気がつかぬうちに力を抑えてしまう。そのたがを外そう。ここからは正真正銘の全力だ」


 王がそう語るうちに、王の頭の両端には悪魔を象徴する角、

背中にはコウモリの羽、先の尖った尻尾に紫の肌へと変わる。


「何で今までその姿にならなかった?」

「何が言いたい?」

「アンタには未練があるんじゃないかと思ってさ」

「未練?」

「そう、人で居たいと言う未練だ。アンタは悪魔に魂を売ったようだが、どこか心の隅では罪悪感に捕らわれているんじゃないか?」

「ならその未練を捨ててやろう!」


 衝撃波が俺達を襲う。

あまりの強さに目を瞑ってしまった!

黒隕剣が防いでくれたが吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


「こうなったらもう手加減を出来ん。死を覚悟せよ」


 王の言葉を聞きつつ、俺は口から出た血を拭う。

内臓がやられたのか。

手が震えつつも、俺は斬りかかる。


「遅い」


 王が握る剣の柄で鳩尾を打たれた。

続けざまに顎を蹴り上げられる。

俺は体が浮き、意識が薄れそうになるも、

何とか意識を繋ぎとめ、体を回転させて薙ぐ。

しかし王はそれをかわして俺の胸に蹴りを入れた。

またしても壁に叩きつけられ、ズルズルと床に降りへたり込む。

咳き込む度に血が出てくる。

 まったくエライ化け物が誕生したもんだ。

霞む視界に王が剣で俺を突き刺そうとしてきた。

寸での所で顔を横へ向けかわすと、

何とか力を振り絞り王の腹へ黒隕剣を叩きこむ。

斬れない。

だが態勢がくの字になった。

俺は出た顎を黒隕剣で斬るべく薙いだ。

斬れはしなかったが、吹き飛ばす事に成功する。

 

「死に体だと思ったのだが、存外やるな。だがそれを今から計算に入れる。お前に勝機は万の一つも無くなった」


 これは参った。

体力だけじゃなく、体全体が悲鳴をあげている。

迫り来る王の姿がスローモーションで映る。

切り札を伏せたまま、相手に切り札を出させないまま

やられるとは。

 後もう一歩と言う所まで追いつめたと思ったが。

ここまでか……。

俺は覚悟を決める。

すまない……ファニー、リムン、姫、ダンディスさん、

リードルシュさん、ビッド。

今一歩及ばずだった。


「残念賞だったな王様よ!」

「そう、よくぞここまで持ちこたえてくれた」


 懐かしい声が耳に届く。

一瞬幻聴かと思ったが、王が併撃され防御し

後退させられると、俺の前に頼りになる背中が二つ立っていた。


「ダンディスさん……リードルシュさん」

「待たせたな。雑魚は片付けたぜ!」

「少し休んでいろ」


 二人は俺にそう言って構える。


「……今さらお前らの出る幕ではあるまいに」

「さてどうかな。あの時はこっちも勘が戻って無かった」

「そう、色々錆ついていたのでな」

「あんな小物を倒した所で我を倒せるとでも?」

「倒す必要なんかないさ」

「その通り、時間を稼がせてもらうぞ?」


 ダンディスさんとリードルシュさんは王に向かって斬りかかる。

レッサーデーモンを退けたダンディスとリードルシュが駆け付け、

窮地を逃れたコウ。

ここから先の展開はどうなっていくのか!?

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