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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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欲深きもの

 ジグムの言う例の処分とは、

内通者に関する処分だった。

以前から内通者は居たが、

大使の一件から勢力的には

衰えているというか壊滅状態だった。

誰も彼もが夢見て来た国を、

それまで居た国が支配する

などという事は想像したくないらしい。

 が、ここ最近トウシンの

商人群が中々賑やかで、

儲けが出ているのは構わないが

それを使ってトウシンに対し、

技術の移植や苗の移送、

人材をトウシンに派遣したりと

やりたい放題だ。

 ある程度自由であるべきだとは

思うが、国で開発したものや人材を

秘密裏に敵対国に出すのは

最早国に叛く行為そのものだと思う。

何よりそれで儲けているのは商人だけだ。

税金も俺が民に還元するため低くしているが、

それは商人も同じだ。


「そうだな。やろう。週始めから

そんな暗い処分を伝えたくは無いが……」

「ですがこのままでは国が傾きましょう。

豊穣の地もいつまでも枯れる事が無い訳では

ありません。それを我々巨人族は知っています。

トウシン倒すべし、これはこの国のみならず、

巨人族の危機感に寄るものだとお考えください」

「せめて大地を蘇らせる事に尽力してくれれば

良かったのにな」

「残念ながら彼らは毟り取るのが性とでも申しましょうか、

自ら育むという事は二の次三の次」

「未来への投資という言葉もあろうに」

「悪貨良貨を駆逐すると申します。

貧困がそれを成し、生き残ったのは悪貨。

ウルシカ殿はそのうわずみ。

だからこそ我が国にいらっしゃるかと」

「なるほどな……俺はついてる」

「ええ、ウルシカ殿はこの大地稀に見る良貨です。

是非大切に起用なさるが宜しいかと存じます」

「それもそうだがジグムがこの国に流れ着いて

登用出来たことも、だ」

「勿体無きお言葉……」

「早速で悪いが、ジグムの草案を出してもらおうか」

「はい。今日中に完成させてお持ちいたします」


 こうして解散し、俺は街をこっそり二時間ほど

探索する。この世界に来て能力が上がっているお陰で、

屋根から屋根に飛び移ったり人から見え辛い位置から

見たりする事ができるので有難い。

基本的に会議と臨時案件以外では、自分の方針を

纏めたり、試案を作成したり決裁がたまっていれば

処理したりする時間だ。

 恐らく外交部分が殆ど無い事や、

直接俺に人がそのまま来たりしない事も、

時間ができる要因だろうと思う。

王様は暇な位が平和で良い。

もっともこれから領内最後の領地である、

東の領地を収めに行くから暇では無くなる。

東の領地手前の忍びの里は、

親衛隊の一部隊を俺が直接指示を出して、

本日警護に向かった。これにリクトも随行する。

更に年が近い所為か仲良くなったヨウトも

付いていくという。少しでも足しになれば

と思って許可をした。

くれぐれも掻き乱さないようにと付け加えて。


「シンラ、カムイは居るか?」


 俺は街を見回りつつ、ある一軒家に赴いた。


「陛下!……おいシンラ!」

「んあ……」


 机が幾つもあり、何人もの人間が

忙しなく動き回っていた。

俺の登場で一瞬動きが止まった。

これからの戦術についての

提案をする為に俺が立てた戦術局。

城からは近くも遠くも無い場所に作ったのは、

いざという時にここを拠点として使う為だ。

誰にも内緒で細工も施してある。


「良い良い。カムイだけでいいから少し良いか?」

「は、はっ!」


 俺はカムイを連れて奥の部屋に移動した。


「で、早速だがセイヨウの状況はどうか」

「はい。ハンゾウ殿から知らせを頂いて、

陛下から教えて頂いている情報を元に精査しております」

「結果はどうかな?」

「現状落ち着いており、陛下への忠誠にも領民は

問題ないかと思いますが、何より隣がカイヨウ故

迂闊に動くことは」

「ハンゾウは動かせない、と」

「はい……」

「カムイよ」

「はっ」

「現状維持は構わないが、上がってくるものが芳しくない。

東の領地に関するものも不鮮明。

これではまた現地で一からやり直しだ」

「申し訳御座いません」

「謝らなくて良い。何が足りない何が必要だ。

お前達も知らないわけではあるまい?

軍に対する不満は増えていく一方。

戦績は連勝状態にあるのに、だ。

死者も居らず領土は広がっているんだ。

これでは現場で戦う者たちも浮かばれまい。

戦術局。言わば戦場からは遠い場所で、

戦場での死者などのマイナス要素を廃し、

どれだけ貢献できるかに問われている。

現在の状況では、お前達の方が

オンルリオより皆の評価は下だ」

「……言い訳のしようも無く……」

「陛下、失礼致します」


 部屋に寝癖を付けたままの

シンラが入ってきた。


「悪いな寝ている所を起こして」

「いえ、申し訳御座いません」

「昼寝をする権利は誰にでもある。

俺も昼の時間1時間くらいは昼寝をしたい」

「陛下がその様な事をされているのは

見た事が御座いません」

「昼寝でないにしても、皆が起きている時

寝ていた事がある。

そう、寝ないで帰って来た時は

起きれなかった」

「……陛下、何かお気付きで?」

「カムイが地道に進めるなら、

シンラは奇策を探す。両者に共通点が

あるとするならそれは地道に進めるという

出発点だとおもうが」

「参りましたな」

「俺の方針を伝えた後、二人とも静かだったので

気になってはいた。平気なフリをして

一番気にしぃなのもシンラだしな」

「陛下の爪の垢にすら及ばない……

それが今の戦術局の評価で御座います。

せめて年も若い分陛下よりも努力しなくては、

ただ飯食らいも良いところ」

「そうだな。味方の犠牲者が出ない事が

俺が出陣している事で成り立っているなら、

俺が分身しなくてはならない」

「陛下がカムイをこの局の責任者にして頂いた

お陰で、俺は自由に出来ます。

陛下がそこに居るかのような速さで攻略し

統治する。その為に時間を見つけて

駆け回っております」

「そうか、楽しみにしていよう。

だが勘違いして貰っては困るぞ?」

「何がでしょう」

「責任者は次はお前だシンラ。

カムイだってストレスが溜まっている。

次のトウシンなどの攻略にはカムイが

自由になる番だ」


 その言葉にシンラはゲンナリし、

カムイは顔が晴れやかになった。


「元々三人が先頭だってやる事。

順繰りで皆を纏め上げ、今の評判を覆してくれ。

頼んだぞ」

「「はっ!」」

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