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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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王様の休日

 暫くハヲノと遊んでいたが、

ハヲノがうとうとしてきたので

そのまま就寝となる。

 翌朝、いつも通りの時間に

目が覚める。今回は俺が真ん中で

脇にハヲノが居たので誰も近付いてこない。

割とぐっすり寝れた。

 ハヲノに布団を掛けて、

こっそりベッドを抜け出すと

畜産局の施設まで移動。

皆に声を掛けつつ、状況を確認。

飼育は全て順調ではないにしても、

ユグさんの協力もあって徐々に

餌の改善もされて来ており、

健康な感じに育ってきている。


「陛下……」


 畜産局の視察と書類決裁をし、

方針を伝えて激励を終えた後、

一人裏庭で鍛錬を暫くしていた所で

声を掛けられる。


「久しいな。元気だったか?」


 振り返ると底にはオンルリオが居た。

状況は端的に聞いてはいたが、

目の前に居たのは髭を蓄えたおっさんだった。

背丈や体つきが違うが、この世界に

初めて来て暫く経った時の

俺のような顔をしている。


「はい。自らの愚かさを恥じ悔いて

居りましたが、体はどこも無事です」

「そうか。体を動かしながら、

己を見つめなおしていた、と」

「本日は陛下にお願いがあって参りました」

「なんだ?」

「私めは陛下の御恩により兵長として

纏め練兵を行ってまいりました。

ですがその勤め果たせず、多くの味方に

犠牲を出し、あまつさえ叛旗を翻す

原因を作ってしまい仇で返す結果に

なってしまいました」


 確かに反旗を翻しやすく、

そして周りが納得しやすい状況を

作ってしまったが、

それが最大の原因ではない事は今解っている。

それを人伝に聞いているのも知っているが、

今は鍛錬をしつつ黙って聞く事にした。


「このまま生き恥を晒すよりはと

親子共々自らを罰す覚悟でしたが、

周りの方々の優しさにより

そんな自分達が成すべき事は何であるかを

考えるに至る事が出来ました」

「そうか、お前らしい所に戻れたか」

「……はい。陛下のお心遣いではと

思ってはいましたが、そうまで我が身を

気に掛けてくださるその懐に我が身命の

置き所と改めて決意し、この国の方達の

為にこの命尽きるまで尽くしたい所存で

御座います」

「で、どうしたい。お前のすべき事を

俺に教えてくれ」

「先ずは一兵卒から出直したく思いましたが、

ただでさえ今まで仕事を他の方達に押し付けて

居り、私の我侭でこれ以上他の方達を

困らせるような事は言に反する事になります。

恥を知っておりますが、改めて陛下のご意思が

変わらず、そして不肖我が身をお許しいただけるなら」

「オンルリオ」

「はっ」

「人は誰でも失敗するもの。

だが失敗を生かして成長し汚名返上するのは

お前自身でなければ出来ぬ事。俺がしてやれるのは

お前の一度の失敗に対して悔いていた期間を

謹慎処分とし、現場復帰を許す事のみ」

「陛下……」

「先ずは身形を整えてから兵舎に出向き、

カトルとトロワと引継ぎをして戻るが良い。

今後の働きを期待している」

「はい!」


 身を震わせながら地面に膝を付け、

肩を震わせて頭を下げたオンルリオ。

俺はオンルリオの気が済むまで

そのままにさせ、鍛錬を続ける。

二十分くらい経った頃、

オンルリオの涙も尽きかけたので

一緒に鍛錬するよう告げて鍛錬をし、

晴れ晴れとした顔で去って行った。

 これからではあるだろうけど、

一件落着かな。俺は一息吐いた後、

風呂で疲れを癒し着替える。

その後皆で朝食を食べ、

お散歩に出かける。

たまの日曜くらい一歩も動かず

過ごしたい気持ちはあるが、

それをした日が思えばない。

したらしたで何もしなかった

絶望感が襲ってくるのを知ってるから

ってのもあるけど。


「先ずは何処に行くのかな?」

「先ずはねぇ、新しく出来た森を見に行くだのよ!」


 リムンとハヲノと手を繋ぎながら先頭に立ち、

皆と共に散歩に出かける。

大名行列ぽくなるのを嫌い、

あくまでお忍びで散歩という形をとっているので、

俺たち以外には引継ぎを終えたカトルと

リクトヨウト、シンラカムイ、そして精鋭隊から

五人が選別されて同行している。

 俺としては自分自身と相棒二振りに

恵理とリムン、エメさんにガンレッドが居れば、

二千人に襲撃でもされない限り大丈夫な

気はしていた。が、それじゃ駄目って事で

イシズエから依頼されて護衛が付いた。

更に仕事に関しての話は絶対に駄目だと

言いつけられているらしく、

何だか話したそうな顔をしつつ我慢している

護衛陣。

 俺としては多少なら構わない気がしていたが、

そういう話をしようとすると女性陣から

鋭い視線を浴びてしまったので直ぐやめた。


「徐々に大きな森になってきているな……」


 南側に出来た雑木林は日を浴びて

すくすく育っていた。本来であれば

長い年月を掛けて成立するのだが、

生命の盛り返しの為ユグさんにより

促進させていた。

 俺はこの現象に関して

生命の反撃であると国の皆には告げていた。

何れ生命が大地に蘇れば落ち着く、

オーディンに壊滅された大地からの

反撃の狼煙に我々も今は驚く前に

尽力しよう、と。

 そういう事もあってか、

この国で神を信じるものはあまり居ない。

そして自然を大事にし

無闇に草木を採取したりもしない。

自警団も見回りをしており、

国としても自警団を奨励して強化している。

自発的に護ろうと思って行動してくれるのは

本当に有難い。

そこから軍にスカウトしたりもする。

俺は意地が悪いので、正規ルート以外にも

何処から登用されるか解らない状態を

作っている。

絶対にある訳ではないが、絶対に無い事は有り得ない。

それが少しでも日々を懸命に生きる糧に

なってくれればと思っている。


「ちょっと聞いてんの?」


 雑木林でシートを引いて寝そべっていると、

恵理が顔を覗き込んできた。

リムンハヲノエメさんガンレッドも覗き込んでくる。

それも真顔で。


「あ、はい」


 引きつり笑顔で答えるが、

皆真顔で見るのを止めない。

ホラー怖い……。


「起きなさいよ」

「はい……」


 寝てないのは解ってるだろうが、

仕事の事を考えていたのもバレてるんだろう。

強制的に起こされた。

それから女性陣の取り留めの無い話に

耳を傾け相槌を打ちつつ、木漏れ日を浴びていた。

癒されたわぁ……。

 それからのんびりして海岸に出る。

海岸付近では塩の生成施設だけでなく、

海産物の採取と育成をしている施設がある。

それを皆で見学しつつ、取れたての

新鮮な海産物を頂いた。

勿論兵士達にも食べさせた。

 夕暮れをこないだエメさんと一緒に見た

丘から眺めつつ帰路に着く。

商店で服などを見ながら歩く。

夕食として皆で食べ歩いた。

兵士達の分も俺が出した。

皆恐縮していたが、経済促進の為に

俺の金も使わないと駄目だから言って

無理やり渡した。

こうして充実した休日は終わりを告げる。


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