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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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フリッグさんの使者と商人の使者

「陛下、次は北のフロストから使者が」

「先のカイヨウと同じように代表者のみ」

「はっ!」


 この大陸のものではないのに

皆新年の挨拶に律儀に来るなんて、

真面目というか何と言うか。

俺みたいな引き篭もりのおっさんには

新年とか関係なかったしな。

えぶりでぃ休日。えぶりでぃ生きてる。

そんな感じ。


「陛下」

「あ、すまんすまん」


 自分で言ってて面白すぎたので

噴出してしまった。なんだよえぶりでぃ生きてるて。

そんな感じってなんだ。

 王の間に入ってきたのは、白いローブに身を包んだ

褐色黒髪の体格の良い女性だった。

手を組んで一礼すると、両膝をついて更に頭を下げた。

俺は彼女が喋りだすまで黙っていた。


「明けましておめでとうございますコウ王陛下。

ご機嫌麗しゅう。我が名はエチノイ。

フリッグ女王神の使いで参りました」

「明けましておめでとう。女王にも宜しく伝えてくれ」

「陛下におかれましては神を信じておいでですか?」

「無論。だが今を生きるものが語る神など俺は信じない。

ましてや人が神などと恐れ多い上に不遜な寝言を

言うような者など信じるはずも無い」

「では陛下にとって神とは」

「己の内の中にいるものだ。誰かから何が良い悪い

言われるのではなく、己の中に住まう神のみが

俺にとっての神だ。他人に信仰を強制する事も、

救われる事を強制される事もない。

そして何よりお布施を強要される事もない」

「目の前に立つ者は皆偽者、と」

「俺は、な。他人にそれを強制するつもりもない。

だが俺も強制される事は無い。

仮に信仰を武器とし我が国を犯そうというなら、

容赦無く根絶やしにする。

それは最早信仰ではなく呪いだ。

神の名を語る呪術者達など、俺の内なる神が

生かしては置くまいよ」


 別に今まで生きてきて、信仰すべき神が

どうとか考えた事も無い。

何しろこれまでの人生を考えてたらそう思うのが

自然だろう。救われる為に祈ったところで

救われた事はなかった。結局は自分なんだと

マイナスの意味で前は思ったし、

今はプラスの意味で思っている。

 前に両親も弟も居ない時

執拗にチャイムを鳴らされて

宗教の勧誘に会ったことがあるが、

神を信じていないというと、また執拗に

神は居る神を信じるべき信じない者は愚かだと

長時間俺は否定された。

 その経験からこういう人間に対しては、

神は自分の中にいる、誰かと分かち合うものではない

と言ってきた。割と効果があった。


「分りました。ですが何れ貴方も知る事になるでしょう

神の偉大さを」

「神は偉大だと思っているがね」


 彼女は膝を突いたまま頭を下げた後立ち上がり、

更に手を組んで一礼して退室した。

俺も王座から立ち上がり一礼する。


「王、信仰を禁止しますか?」

「いいやその必要はない。信じることを強制しない限り、

信じないことを強制する事もない。

自分で知って自分で信じる事は自由。

何よりそう言った事を拠り所にしない国作り、

人々の心の強さが持てる国を作る事が俺に出来る事だろう」

「重臣が信仰した際は如何致しますか?」

「戦争状態の今信仰したいというのであれば、

北のフロストへ行かせてやるのが良いだろう。

信仰する者と戦う事は出来まい。

今更言う事でもないが、それは布告したほうが良さそうだな」

「はい。私の経験からして、この大陸の有様を理解して

信仰しようと思う者がいる事の方が驚きですが、

一応布告致しましょう」


 そう、ラグナロクの変わりに神であるオーディンが行った

隔離と大地の死滅という仕打ち。それを知って尚信仰しよう

という事に至ったのであれば、それは最早理解し得ないものだ。

どうする事も出来ないし、交わる事も無い。

フリッグさんはそれを理解した上で今北のフロストに居る。

身も心も巨人族を蹂躙してまで彼女は何をしたいのか。

解る日が来るのだろうか……。


「さて、次は東のフロストかな?」

「はい」

「では同じように通してくれ」

「はっ!」


 次に入ってきたのは煌びやかではあるが

気品に溢れる身だしなみ、長いくるっとした髭に

整った顔立ち垂れ目。細身の体を優雅に揺らしながら

俺の前で一礼した。


「コウ王陛下、新年明けましておめでとうございます」

「ああおめでとう」

「私は貴方達が東のフロストと言っているであろう、

新号トウシンの商官オッサムでございます。

以後お見知り置きを」

「こちらこそ宜しくオッサム殿。

いつも心地良い取引をしてくれている事には

感謝している」

「いえいえ、この国が食料を流して下さらなければ

我々は立ち行きませんので」

「上手い事を言う。だがそちらに以前のような旨みが

無くて申し訳ないな」

「恐れ多い事で御座います。コウ王陛下がその気になれば

我々は息の根を止められますので」

「解ってはいるが組しない、と?」

「はい。我々は我々ですので。何者にも犯されることを

望みません」

「我々も同じだ。時に前の使者は君達の与り知らぬ事

だったのかな?」


 俺が以前来た失礼な使者に関して問いただすと、

オッサムは止まった。


「何故答えぬ? 当然言われる想定内の質問であろう?」

「……失礼致しました。使者の無礼、お許しを」

「許せぬから戦争になっているのだが」

「……確かに」

「商人の国であるのに大損だな。

こちらを下に見ていた国民性が仇となったわけだ。

これからは使者には気をつけるが良い。

俺という人間の下見が済んだのなら帰るが良い。

次は戦場で会おう」


 オッサムは一礼して去って行った。

随分あっさりと引き下がったが、

俺が思うに俺という人間がどういう者なのか、

実際に見て会話して感触を摑みにきたのだろう。

オッサムが商人で重臣なら、少しでも

自分達に有利に運ぶよう死に物狂いで交渉に

来るはずだ。自分でも言っていたが、

こちらが食料などの流通を止めてしまえば

直ぐではないにしても、次の年を迎えられるか

微妙なラインなのだ。以前トウシンが商売上手で

栄えていた為に人口が集中し膨れ上がった。

我が国よりも多い。


「東の領地を押さえた後、彼らがどう出てくるか」

「はい。もしかすると東の領地に何かしているかもしれません」

「そうだな」

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