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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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年の瀬の占領戦終了と処理

「ノウセス、戦況はどうか」


 ツキゲを走らせすぐ砦前まで着く。

指揮を取るノウセスは俺に気付くと、

向き直り左胸に拳を当てて頭を下げた。


「申し訳御座いません。降伏勧告を

した後暫く待っていたのですが、

弓矢で返答してきましたので

乱戦に突入。現在開門まであと一息

と言った所です」

「相手も存外粘るな」

「そうですな。ここに篭るという事は

それなりに利権にあやかっていた者たち。

是が非でも降伏する訳にはいかないでしょう」

「確かにな。カイヨウ出身者の部隊はどうか」

「セイヨウの件もありまして、奮闘しております」

「期待している」

「王、このまま時間を掛けて不甲斐無いなら、

この俺が先陣切って崩してこよう」

「そうだな。それも一計だな」

「……レン、貴様大きな口を叩くじゃないか

スパイの分際で」

「そうか? 飢えから抜け出せたにもかかわらず、

王に忠誠も示さずこの程度なら、

本国との戦いでは凡そ物の役にも立つまい。

ましてや指揮する将軍がこんなに時間が掛かっているのに

奮闘している? 五、六歳の童を称えているのか?」

「レン、止せ」

「王がそう言うならその程度なのだろう。

将軍の基準が低ければ低いほど、俺にも機会がありそうだ

から有難い」


 レンは鼻で笑いながら槍を弄びつつそう言った。

ノウセスは鬼のような形相でレンを睨んだ後、

俺には真顔で頭を下げて前線に出て行った。


「おいおい」

「せめてもの同郷の情け。お許し願いたく」

「神妙だな」

「あまりの不甲斐無さに。実際見て

俺も人の事がいつか言えなくなるのかと思うと、

寒気がしてきて」

「飢えからの生への渇望こそがカイヨウの

動力源か」

「はい。それ故にこれは」

「同じもの同士の対決でもある」

「試金石として見られているのでは?」


 レンの問いに俺は答えない。

戦況は思わしくない。可動式矢倉の

移動に手間取っている。門を大木で

叩きつけて開けようとしているが、

堀との間を渡す橋にもなるものなので

破壊をする他無い。

 あまり口出しをするのもなんだと

思って黙っているが、これ以上被害が増えれば

数で上回っているにもかかわらず、

戦に勝って勝負に負けた状態になる。


「そろそろ潮時かなぁ」


 ノウセスは弓兵に指示して射っているが、

下から上へ放つのでは威力が違う。

城壁を登ろうにも初動で手間取り失敗していた。

怪我をした兵士達を周りの兵士が連れて交代し、

控えと入れ替わる。このままジリ貧になれば

ヘタをすると住民から反乱を起こされ、

ここに閉じ込められる事になる。


「レン」

「どうされますか?」

「門を崩す。あまりやりたくない手ではあるが」

「……致し方ありません。心得ました」


 俺は黒隕剣を引き抜き星力を素早く通す。

切っ先を門へと向けて構える。


「前方! 王の前をあけよ!」


 レンは自分の槍を背負い、

近くにいた兵士の槍を取り上げて回る。


「王の閃光(アナラビバシレウス)


 黒隕剣の切っ先から青白い光が放たれる。

門はその光に貫かれ、大きな円を開けた。

それと同時にその奥の砦にも穴が開く。

俺はそのまま突入する為、ツキゲの手綱を

引いた。嘶き前足を上げた後、走り出す。


「どけどけどけえええ! コウ王の参上であるぞ!」


 レンは俺の前に出て兵士達から取り上げた

槍を次々に相手の兵士に突き刺していく。


「親衛隊! 前へ出ろ! 領主達を取り逃がすな!」


 俺は黒刻剣(ダークルーンソード)も抜き放ち、

兵士達の武器や鎧を破壊していく。

最初は向かってきていたものの、それほど腕自慢の者や

好戦的なものはいないようで、徐々に距離をとり

そして逃げ出し始めた。俺を追って入ってきた親衛隊は

散開し、領主達を探すべく砦の中を攻略し始める。

 俺はそのまま砦内に居て兵士を無力化しつつ、

レンを伴い領主を探し回っていた。


「レン、逃げるとしたらどこかな」

「今なら穴の開いた後方から他へ逃げるかと」

「なら散歩でもするか」

「仕方ありません」

「まぁ今回は仕方が無い面もあるよな。

俺達としては負けられない一戦でもあり、

それはカイヨウの軍との事でもある。

余裕があれば……」

「そう考えられている時点で問題外です。

ノウセスも理解しているのであれば、

死に物狂いで攻め落とさなければならぬところ。

うちの最初の大使の事もあって、

是が非でもカイヨウ出身者で取らねば

顔が立たぬ一戦。陛下の思し召しであり、

またご配慮を通常のものと捉えた愚か者自身の

至らなさ。何一つこれ以上のお情けは要りますまい」

「手厳しいな」

「以前のノウセスであれば、このような真似は……。

地位を得ればこうも情けなくなるものかと……」

「地位が上がればそれだけやる事も多く責任もある。

何より戦は長い。セイヨウの件もある。俺が圧勝した

という知らせが国内には必要なのかもしれない」


 それから俺とレンはのんびり馬を歩かせながら、

敵の兵士達を無力化しつつ裏手に回る。

親衛隊や精鋭部隊も後ろから駆けつけてきた。

俺は皆に後方の捜索と、捕らえたものに褒美を

出すと伝えて先に行かせる。

 暫くして領主達を捉えた。

最初に見た時は二人とも小奇麗な顔をしていたが、

今は恐怖と不安と絶望で、悪鬼羅刹のような

顔をしていた。来ている服もぼろっとしている。

形振り構わず逃げていたのだろう。


「何か言いたい事はあるか?」

「何れ貴様もこうなる! そうなる日が来るよう

地獄で祈り続けてくれるわ!

我が夫と共に絶えぬ恨みの詩を永遠に詠い続けてくれる!」

「おうともさ! 貴様が悶え苦しみ死ぬよう纏わり付いて

くれようぞ!」

「そうか。連れて行け」



何やらその後もわんわんと罵詈雑言を言っていたが、無視した。

そして縄を引っ張りながら領民達に刑を告げる。


「皆の者良く聞くが良い!

コウ王陛下より、元領主達の処分が下された事を

申し伝える!

コウ王陛下以前のドゥルオ将軍の功績で

領民が護られた事を評価し、その息子と妻である

代理領主に対し本来であれば死罪であるところを、

私財一切を領民に還元し所払いを命じる。

今後一切領地及びコウ王陛下の本国への

立ち入りを禁ずるものとする。

この温情を踏み躙る事があれば、極刑をもって

それに報いるであろう!」


 必要最低限のものを持たせて、

領土の外まで親衛隊達に連れて行かせた。

何度もキツく立ち入りを禁じた事や、

破った際の事を伝えて離したという。

彼らは殺されなかった事や、最低限のものを

持たせてもらえたこと、ドゥルオ将軍の

墓を参る事は許可された事に、何か複雑な顔をして

北へと向かったそうだ。

まぁ行くならカイヨウ以外だろうとは

思っていたので驚きはない。


 俺は遅れてきたナルヴィとシンラ

そして内政官たちを迎え入れて

早速内政部分から梃入れを始める。

不正を働き私服を肥やした者には、

自ら名乗り出て財を差し出せば

今回については罪に問わないとお触れを出した。

また親衛隊たちには砦と街の修復を、

開発局の者たちと工兵総動員で行うよう指示。

守備隊は検問に東西南北の門前に配置した。

 レンはそのまま俺に付いているので、

今は暇そうに欠伸をしつつ、うとうとしていた。

暢気で良いなあとは思ったが、

暢気なのが一番良くもある。

戦闘は一段落した。ある程度布いて落ち着いたら

本国へ戻ろう。何とか戦績を五分に戻して、

恵理やリムン、エメさんやガンレッドたちと

年を越せそうだ……。

皆が良い年越し、そして新年を迎えられるよう

祈りつつ書類仕事に精を出した。

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