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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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占領戦

 視線が痛い中、俺は飯を食う。

色々ご機嫌取りをしてみたものの、

皆不機嫌な顔を崩さない。

生憎お土産も無いので、取り付く島も無い。

リムン様もお怒りで困った。

レンは端の方で我関せず飯を食っている。

こういう時に空気を読まずに来る奴だと

思っていたが、どうもレンは母子家庭で

この世で一番怖いのが母親だという。

なので女性が機嫌が悪い時は極力近付かない、

近付く時は土産の一つも持って行くらしい。


「出陣!」


 俺の掛け声で皆は大地が唸るほどの

雄叫びを上げた。飯を食った後、

イシズエにナルヴィそしてノウセスと計り、

兵士たちを城の外へ集めて隊列を組んだ。

今回は俺の意向で時間を掛けず一気に

制圧する事に決めた。後方にはシンラと

ナルヴィそして内政官を控えさせている。

勿論制圧後の統治を円滑にする為もある。

が、俺とレンが先制攻撃したことで、

恭順を申し出る領民もいるだろうから、

それで行軍が妨げられないようにという対策でもある。

また夜間の行軍になるため、篝火を最小限にしつつ

隊を間延びさせないよう各部隊固まって行動するよう

指示してある。


「ま、まってくれぇ!」


 陽が暮れた頃、北の領地との間の

見張り矢倉の近くに来ると、

人だかりが出来ていた。横で走っているレンが

俺の前に出る。レンは結局部隊には配置せず、

俺の戦場での身辺警護に配置した。


「陛下」

「ああ、手筈通りナルヴィが指揮して検めさせてくれ。

俺たちはこのまま行軍を続ける」


 そう指示すると、本体からナルヴィと内政官、

親衛隊の一部隊百人が分離して、見張り矢倉を囲む。

俺たちはそのまま通り過ぎる。

それを横目に見ていた人だかりは、

俺たちを追おうとしていた。


「王」

「しかしあんなので足止め出来ると思っているなら、

よほど舐められていると見えるな」

「全くだ。俺が言うのもなんだが、貧困は人の心も頭も

貧しくさせるが、裕福だと人の心と頭を太らせるんだな」

「良い例えだ。なら痩せさせて丁度良くしないとな」

「おうともさ。最も痩せる程度で済むかどうか」

「開発局の者たちに連絡を。恐らく可動式矢倉が

必要になる。弓兵達にも準備をさせてくれ」

「心得た!」


 レンはゆっくりと下がり、親衛隊の一部隊に配置されている、

開発局の者たちに伝達に行った。

 レンはスパイだあくまでそれは忘れてはいけない。

が、やはりアーサーが解せない。

ここで初めて会った時からどうにも

自分の頭の中での収まりが悪い。

セイヨウで再会した時もそうだ。

俺と決着を付ける、これは本心だろう。

だがどうもそれだけでもない気がする。

それが何か分からないからもどかしくはあるが。


 合間合間に歩兵に合わせて休憩と仮眠を挟んで、

なんとか夜明けと共に北の街に辿り着いた。

行軍しながらだと大よそ二日程度のだが、

今回は強行軍で来た。


「改めて勧告してやるからよく聞け!

コウ王に降るなら今が最後!

これより先は一切構ってやれぬ!

その首を落とすまで我らは戦い続ける!」


 ノウセスは前に躍り出て、相手に最後通告をした。

が、騒ぐのみで門も開かず返答がなかった。


「王」

「よし、全軍ここを落とすぞ!

可動式矢倉全機起動!」


 唸りと共に五機の可動式矢倉が、

この街の周辺に組み上げられる。

相手が混乱していて矢が少量しか飛んでこなかった。

俺はそれを黒刻剣(ダークルーンソード)で叩き落し、

レンや弓兵もそれに続く。

更に守備隊が工兵を守っている。

工兵たちも日頃の訓練の見せ所と手早く可動式矢倉を

組み上げ、稼動させつつ車輪を付けて動かした。

それに弓兵や工兵守備隊が乗り込み、

下から皆で押して塀に押し付けると、

塀を占領する。


「弓兵たちよ! 一斉に矢を放て!」


 俺の合図で塀から下へ矢を放つ。

更に工兵たちが手を回し、

この街の奥にある。

砦の後ろの門を除いて全て開いた。


「突撃せよ!」


 俺は黒隕剣を掲げて号令を掛けると、

一斉に街へ雪崩れ込む。


「目指すは一番奥の砦!

一番槍にして一番手柄は俺が貰った!」


 レンは煽るように馬を躍らせ前に出るが、

負けじと兵士たちは走ってそれを追い抜く。

レンはそのまま下がり俺のところへ戻ってきた。


「良いのか?」

「ああ、俺は王と朝存分に楽しんだ。

あんまり上の奴ばっかり楽しんじゃ恨まれちまうから。

それより王は良いのか?」

「俺も同じだ。兵士たちの食い扶持や夢を奪ってまで

楽しもうとは思わない。それより目を光らせないと

ならないのは……」

「分かっている。強姦や略奪があれば、

情け容赦なく俺はどんな立場であれ首を撥ねれば

良いのだな?」

「その通りだ。そこは硬く戒めているはず。

守れぬとあらば敵兵より容赦する必要なく処断せよ」


 レンは爽やかに笑うと、わざとらしく恭しく礼をして

手を差し出して俺を導こうとする。

俺は無視してすれ違いざまにレンの馬の尻を軽く叩いた。

何事かと馬はくるりと回る。

俺はそれを見て笑いながら先行した。

 兵士たちは日頃の訓練を生かし、民家は軽く見回った後、

終わるまで外へ出ないよう告げて次に移動する。

それを区画で小隊長が管理しているので、誰か一人でも

女性を襲っていれば直ぐにわかるし、略奪していれば

直ぐに分るシステムになっている。

中国の歴史に見るように、押さえの利かない兵士は

勝ったのに任せて略奪などの行為に走る。

それはその後の統治の妨げのみならず、

国家存亡に関わる行為だ。

 

「王!」


 レンの声に視線を向けると、

騒ぎになっているところがあった。

急行すると、今回の占領に文句が言いたいらしい。

俺は彼らと少しだけ話をする。

ここの領地以外はそれまで言うほど豊かではなかった事、

俺の国が幾ら協力を求めたり、組する事を求めても

返事すらしなかったこと、

反対の意思があるなら戦えば良い事を告げた。


「そんな事言ったって俺たちには何も出来ない」

「何故だ? あの領主に意見したら駄目なのに、

俺たちには食って掛かるのか?

それは違うだろう。領主に付きたくもないが

俺たちには文句を言いたい。先行きが見えないし

不安だからな。我が国では皆で学び、

良い点を伸ばし悪い点を直して行こうと

日々過ごしている。ただ何もせず享受してきた

上での結末に文句を言う事は的外れだと思うがな」


 俺は話しても納得はしないだろうとは思ったが、

一応言葉を交わしてその場を皆と後にした。

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