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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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帰国と厄介者と

 俺は気持ちを切り替え、ハンゾウと共に

街に出て、領民たちを見て回る。

いきなり反旗を翻していきなり俺が攻めてきて

いきなり終わって、といきなり続きで

領民は落ち着かないだろう。

アインスとツヴァイには領民を大事に

落ち着かせることをメインに指揮を執らせよう。

ナルヴィに内政官を選ばせて派遣すれば、

当面は何とかなるはずだ。

落ち着いてきたら採用を含めて進めよう。

それ以外に大きなてこ入れはせず、

食料を持ってきて配り安心させよう。


「では任せた」


 俺は皆が立てた予定をこなし

一頻り見て回るのが終わると、

ヨウトリクト、カトルトロワと共に

首都に引き返す。ハンゾウは安全の為に

少し遅れて帰還させる。

大事は無いと思うが連れて来た兵と

元居た兵を入れ替え、セイヨウには

百人ほどの兵を置いてきた。

 猶予はそう無い。

アーサーは何も気にすることなく

引き上げていったが、こっちはセイヨウから

直ぐに引き上げられなかった。

気は焦っているが、味方も少し混乱している

状況だ。敵を騙すには味方から、を実践した

ので兵士たちも少しふわふわしている。

引き締めの為にカトルとトロワに激を入れさせ、

行軍も早めにした。


「陛下、お休みくださいませ」

「後でな。今は急いで差配しないと」


 俺たちは寝ずの強行軍で戻ってきた。

兵士たちには家に帰って休み、

後日兵舎へ戻るよう告げた。

指揮はカトルとトロワに一任し、

この後の調整も後日にした。

 だが俺の仕事は残っている。

これからの戦略の修正もしないといけないし、

何より使者をとっとと帰さなければならない。


「よくも俺たちを謀ったな……!」

「悪いがお前たちとくだらない話をする気は無い。

命はくれてやるからとっとと帰れ。

モンテクリスも一族を率いてカイヨウに渡った」


 俺は早速王の間にレンとバンリを呼び出し、

そう書類を見ながら告げた。元々武器防具の損傷は無い。

ただ馬に無理をさせたので、治療や休暇が思いのほか必要だ。

こうなれば歩兵のみで行くしかないかもしれない。

獣医が居るわけではない。厩舎で様子を見つつ、

髭お爺先生とグオンさんで手探りでやってるような

状況だ。兵士の治療と健康管理にあたっている

ユズヲノさんからの報告では、特に今のところ

PTSDなどの心理的症状は無く、

負傷者も回復しているとの事。

ただし次の戦には外した方が良いとの意見が付いていた。


「貴様は俺たちに屈する為に国民に話をしたい、

と言っていたではないか」

「話した結果駄目だった。セイヨウにも聞きに言ったが

皆反対だった。それをアーサーにも伝えた。御終い」

「わ、我々はアーサー王とモンテクリス卿の指示でここに」

「ご足労ご苦労だった。兎に角お前たちとは一兵に至るまで

戦う事になった、以上だ。生かして帰してやるから

即刻立ち去れ」


 ウルシカからは国内の経済や国民の精神状態の報告が

上がって来ていた。元々経済はうちの国内メインで

回しているので、それほど問題は無い。

国民も高揚しているが、やはり他国民への視線に

注意が必要らしい。という事はノウセスなどを

前線に出してその態度を示させた方が良いような気がする。


「我々に対して無礼であろう!」

「無礼も何も無い。敵同士雌雄を決するのみだ。

握手でもしてやろうか?」

「要らん!」

「ならさっさと去れ。それ以上無いぞ?」

「このままただで帰れるものか!」

「知らん。なんだったら食い物の一つくらい恵んでやる。

アーサーも喜ぶぞ?」


 そういうとレンは明るい顔をした。

んなわきゃないだろ。アーサーは苦い顔をするだろうし、

他の兵は疑うだけだわ。何だコイツは純粋かっ。


「満足したなら帰れ。こっちは忙しい」

「他を攻める気か」


 俺はもう疲れてる所に更に追い討ちを掛けてくる人間を

これ以上相手にしたくないので、横に居たイシズエに

視線を向ける。が、イシズエも疲れていた。

……やっかいな奴を使者にして寄越したなおい……。


「いいから帰れって。何で敵にそんな事まで

教えてやらねばならんのだ」

「我らを欺き恥をかかせたのだ。それ位は罰が当たるまい」


 ……疲れる。イシズエはよく頑張ったよこんなのを相手に。


「あーはいはい分かった分かった。そうだねその通りだね。

これで良いだろ? さっさと帰れって」

「何処を攻めるのだ」

「調子に乗るなよ……さっさとこいつらを摘み出せ!」


 俺は声を張り上げたいのを我慢しつつ、

だが語気は強めに言うと、親衛隊も入ってきて取り囲む。


「どうせ国に帰っても周りから浴びる視線は冷たいもの。

使者の御遣いもまともに出来ぬ慮外者と罵られるのが関の山」

「だからなんだ」

「一宿一飯の恩義もある。俺は残る」


 ……誰か助けてくれ。こいつ何を言ってるんだ……。

俺は頭を抱える。しんどいわぁ。


「恐らくお前たちの軍も人が減っているはず。

当面は我が国と矛を交える事もない」

「当面はな。だが交えない訳ではない。

敵を懐に入れて戦うほど愚かではない。

俺の寛容を安く見るな。哀れと思って命はくれてやるんだ。

黙って帰れ」

「俺はこの大地一の槍使い。

俺が居れば我が国以外の戦においては百人力は間違いない」

「なんだ就職希望か?」

「言ったであろう恩義を返すだけだ」

「お互いに感情が、情が無ければそれも良かろう。

全てを切り捨てて戦えるなら良しともしよう。

だがそうではない情はあっても戦わねばならぬ。

お前が馴染めば馴染むだけ、互いに傷が増えるだけだ。

一宿一飯の恩義があるなら黙って帰れ」

「俺は俺の故郷と家族を守る為に戦う。

それ以上でもそれ以下でもない。それがこの国にも出来るなら

それは良い」

「……俺はアーサーと雌雄を決するのだ。

お前の事情には考慮してやれない」

「良いぞ。俺はそこに手を出す事はしない。

恩を果たせば帰る」


 これは駄目だ話にならない上に頑固だ。


「お前の兵士やそこのバンリとも話して決めたのか」

「いや俺のみが残る。他は関係ない」


 鉄砲玉来たこれ……。何がしたいんだアーサー。

このまま押し問答をするには今は案件が多すぎる。

ナルヴィもイシズエも無反応に近いしロキは居ない。


「ともかく帰れといっている。俺も忙しい。

数日以内に帰れ。以上だ」


 俺は手を横に払うと、親衛隊たちは

二人に触れぬよう俺との間に立ちふさがった。


「俺は一度言ったら曲げぬ男! うんと言うまで

何度でも来るからな!」


 何とも言えない呪いの様な言葉を言いながら

去っていく。


「リクト」

「はい」

「悪いがあいつらの監視を里の者たちで頼む」

「心得ました。頭領がお戻りになるまで

僭越では御座いますが、代行させて頂きます」

「楽しみにしている」


 気が重いったらありゃしない。

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