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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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セイヨウの酒場にて

 俺とハンゾウたちは兵士たちを見送った後、

湿原を抜けてセイヨウを囲む高い塀の前に着く。

鈎爪にロープを括りつけたのを一斉に投げて、

塀の上へと登る。矢倉がある場所のみに兵は

配置されており、中には欠伸をしているものも

居る。うちでは考えられないほど暢気だ。

まぁそのお陰で潜入できたわけだが。

 その後様子を見て街の中へ降りる。

物陰を見つけ、この街の人間の多くが身に着けている、

スカーフのようなものを身に着けた。

どうやらこれと腰に小さな袋と布を括りつけた

格好で、選別しているらしい。

随分ざるなように見えるが、田舎特有の把握力も

相まって高い効果があるようだ。

 ハンゾウたちはそういった部分も調べ上げている。

こういう部分もハンゾウたち以外の偵察部隊が

追いつけない理由でもある。欲を掻くことなく

事実を事実として客観的に見て、しっかり調べる。

それを余談を交えず伝える。求められれば答えてくれるが、

そうでなければ余計な事は言わない。

 俺が里の人たちに薬剤の生成や紙幣の生産を任せているのも、

そういった里の人の性質があるからこそである。

 故に俺は東の護りを硬くした。

忍びの里を容易に急襲出来ないように。


「いらっしゃい」


 俺たちは街の酒場へと出向く。

俺も顔に紋様をつけ、更に背の低い巨人族に見えるよう、

細工を施している。酒場に居た客全員が俺たちを見たが、

暫くすると自分たちの会話に戻った。

 俺たちは土地の酒だという物を注文した。

この土地でも価値のある小麦の小袋と交換で。

テーブルに着くとそれを一口飲んだが、

ホント俺の国は皆頑張ってくれていると実感する

飲み物だった。泥かこれは。

 そんな俺の顔を察して皆が首を横に小さく振る。

いやごめん。そういいそうになるのを堪えて

耳を澄ます。


「そういやぁさっき帰ってきたのが可笑しな事を

触れ回ってたな」

「あああれか。でもありえない話じゃないだろう」

「そうなのか?」

「俺はあの国を一度訪れた事があるが、

こんな不味いものはどこでも出てこない。

仕事も山のようにあり食いっぱぐれる事もない。

更に怪我をしても治してくれるところがあるし、

悪い事をすりゃあ捕まるし、悪質なら即国の外へ。

あんな良いところ、今のここに比べたら万倍マシだぜ」

「おい、あんまり大きな声で言うなよ。兵士が来るぞ?」


 俺たちのほうに視線が向く。まぁ今着たばかり出しな。

ここは一つこの流れに乗って見るか。


「そういえばレン将軍とバンリ殿は随分と心地良さそうに

塀から見下ろしていたな」


 俺がそういうと、ハンゾウたちは周りを見る。

どうやら俺たちの話が周りは気になるようだ。

スイッチが入ったのを確認したように、

ハンゾウたちも話し始める。


「あまり大きな声では言えぬが、

あの国の王がバンリとレンの家族を連れ去る為に

兵士を寄越したと言う」

「そういえばカイヨウ出身が将軍になっているな」

「そうだ。どうもあの将軍とレンが馴染みらしく、

それを通じてバンリもおこぼれを預かったらしい」

「あいつめ旨い事やりやがったなぁ。通りで嬉しそうに

国を出て行ったわけだ」


 俺たちの適当な会話だけが酒場に聞こえていた。


「そうそうあの兵の数も余裕だからというのではなく、

コウ王に対して攻撃の意思が無いのを見せる為だったらしい」

「レンのカイヨウは貧しい国。あんな豊かな国を知れば、

今までと同じにはならないだろう。馴染みが居れば尚更よ。

この街に来たカイヨウの兵士たちを見ただろう?

コウ王を裏切った兵よりも意地汚い。

友好関係を築こうと言うよりは、コウ王から支給された

食い物を奪いに来たようなもんじゃないか」

「おいやめろやめろ。それは皆思っているのだから」

「第一なんで領主様はあんな奴らと手を結んだのだ?!」


 シーンと静まり返る酒場内。

暫くして


「領主様の悪い癖が出たんだ」

「格好つけて両方を様子見し、一番美味いところを

頂こうと言う魂胆だろう?」

「領主様の奥方たちを見れば分かる。

このご時勢にあんな多くの娘を」

「コウ王も多いと聞くぞ?」

「あの王様の奥方たちは皆働いている。

この国の奥方たちが始めて働いたのは、

コウ王から頂いた物資を多めに掠め取る

働きをしただけじゃないか」


 という話が聞こえてきて、最後の部分で

爆笑に包まれた。俺はそれどころではない。

俺に奥方などというものは居ないぞ!?

 それを察したのかハンゾウたちは笑うよう

両掌で頬を持ち上げた。今のお前らの動きは面白いがな!


「おやおや盛り上がっているようではないか」


 その声に笑いが止む。

酒場に来たのは着飾ったモンテクリス卿だった。

愛想笑いをしながら嫌々皆は挨拶する。

俺は奥の席に居たのでその様子をじっと見ていたが、

やはり実際見るまでは分からないもんだな。


「そろそろコウ王打倒の為に出陣する。

それまで良く飲んで食うが良い」


 そう言い残し去って行った。

去ったのを確認し戻ってこないであろう時間が

経つと


「何が飲んで食えだ。こりゃ俺たちが稼いだもんで

更に言えばコウ王のもんじゃねぇか」

「全くだぜ。カイヨウから幾らもらったか

しらねぇがホントけち臭い領主様だぜ」

「コウ王ならこういうときは振舞ってくれるらしいぜ?」

「だろうな。こないだも戦前に盛大に国中に奢ったらしい」

「酷い落差だよなぁ……ホントなんでこんな事になっちまったんだ」

「今更嘆いても仕方ないがよ、コウ王の兵とか言うのがいたら、

協力すればなんとかなるんじゃないか?」


 と言う話が出てくる。これはこれは。

やはり酒場は良い。俺はその話を黙って聞いている。

出来れば酒場以外でもこういった話が漏れてくれると、

より一層やり易くなるんだが……。


「あっ!」


 入り口に近い場所で声が上がる。

それは不味い、というような声だ。

俺たちは注意深く見る。

そこに居たのはカトルとトロワだ。

どうするかな……俺たちは互いに顔を見合う。

まぁいきなり襲い掛かるわけには行かないので、

頃合を見て逃げるように、俺は指を天井に向ける。

それに頷く一同。皆腰の袋を俺に見える位置に

上げた後元に戻した。何か入れているようだ。


「おいお前たち」


 カトルとトロワはまっすぐ俺たちの元まで来た。

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