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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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セイヨウに潜入せよ!

 二泊三日の行程を強行し、

一日と半日で到着した。

小さな山の丘には案の定兵士が居たが、

俺たちで倒し縛っておいた。

内情は喋らないというので、

放置する事にした。ハンゾウ曰く、

頑張って解こうとすれば、一日位で解けるらしい。

十五人なんで一人解ければ何とかなるだろう。

殺せと言われたが、面倒だから嫌だと断った。

 それから俺たちは警戒しつつ、

セイヨウ近くの湿原を通る。

回り道になるが、相手にとってもこの場所は

戦には不向きだし兵を配置するのに向かない場所だ。

警戒はしているだろうが、毎時間見回るほど

人員に余裕があるとは思えない。

 歩きながらこの湿原の泥を採取する。

この湿原は可笑しい。生物が全く居ない。

更に言えばこの水は何処から来ているのか。

オレイカルコスの降水雨量はそう多くは無い。

なので蒸留技術が発達した。

維持をするほど降らない雨でどうなっているのか

調べたい。


「陛下」


 ハンゾウの声に採取する手を止めた。

前から数人の足音が聞こえる。

こちらに気付いていないようだ。

武器を構えて待ち構える。


「カウント」


 俺がそう小さい声で告げると、

各自身構えた。俺は近くにある

伸びた草を撫でる。

1回、二回、三回、四回。


「ゴー!」


 俺を基点に各自散開。

方円の陣を敷く。前方のみならず、

俺たちに気付いた時に対処する為だ。

前方は相手を斬る伏せる。

すり抜けたのを俺が斬る。

 どうやら巡回の兵士だったようだ。

五人組の彼らを縛り上げ、

一応聞いて見たが何も答えない。

構う暇も無いのでここに放置する事にした。


「ま、まってくれ!」

「何だ。悪いが構ってやれない。

騒ぐなら口も閉じてもらう」

「そ、それだけは勘弁してくれ!」

「五月蝿いなぁ」

「こ、ここは嫌だここだけは勘弁してくれ!

湿原以外なら何処でも良いから!」

「そ、そうだ!」

「なんでだ?」

「そ、それはいえない」

「なら知らん」


 俺は皆に合図して縛った者たちに

目もくれず前進する。


「わ、分かった! 喋る、喋るから!」

「良いだろう。喋ったものだけ助けてやる」


 俺は何で湿原に置いていくのが嫌なのか

知らんけど、効果があると思いそう告げた。

すると元気良く洗いざらい喋ってくれた。

今セイヨウには俺を裏切った者たち以外に、

カイヨウの将アンジとその兵、合わせて三百が

駐留している事。

俺を裏切った者たちはモンテクリスに協力し、

それぞれ役割を持っている事。

トロワとカトルは防衛の任務に。

センリュウとヨウトは内政。

ヤマナワにはセイヨウの兵と元々の兵の

面倒を見させている事。

俺を追い返したことで、気が緩んでいる

そして俺の本拠地を攻める為の準備に

勤しんでいるので、警戒が緩い事。

協力を拒否した兵士たちが、

真ん中の砦の牢屋に居る事を教えてくれた。

喋りすぎだろ……どんだけ嫌なんだここが。


「最後の質問だ。ここに何が居る?」

「わ、わからねぇ。おらこの辺のもんだけど、

昔から夜になると、何かが動いていて、

地響きがするんだ。特に最近は人が消えたりもして、

おっかなくて誰も近付かないんだ」

「昼は無いのか?」

「き、聞いた事は無いけんど、

こんなところに近付かねぇもんよ!」

「俺たちはカイヨウの者だが、

街のものからもここには近付くなと言われている」

「そうか……それは興味深いな。

知っての通り俺は悪い王様だが、

大地の再生とその生態に興味がある王様でもある」

「……嘘だべ……喋ったでねぇか!」

「そんな軽々しく喋る奴を誰が信用するんだ」

「そんな事いったっておらは仕事が無いから

兵士になったけんども、見回りしかさせてもらえないから

何がどうこうわからねぇもの!」

「お、俺たちも見回りを指示されただけで、

自分たちの身を守る為には自分で調べて情報を得るしかなく」

「そのアンジとかいう奴。中々酷いな」

「無口で表情を変えず。自らの武を鍛える事にしか

関心が向かないお方だから」

「レンの親戚か何かか?」


 俺がそういうと、兵士たちは目を丸くした。


「そ、そうだが何故そんな事を」

「ああ本人から聞いた。だから俺はここに来たんだ。

それに聞いた話と少し違うので疑ったのだ」


 勿論嘘である。だが相手はそれを信じ、

不満の表情を露にした。やはり俺の国は有利なのだ。

他から見れば沢山の食べ物があり仕事も多く活発。

それは給料日前にステーキ屋の前を通るのと同じ位

強烈なものだ。漂う匂いと出てくる人入る人。

全てに感情が揺れる。碌な食事を取っていない時は

尚更だ。


「おい、縄を解いて返してやれ」

「よ、宜しいのですか?」

「本当か!?」

「宜しいし本当だ。バンリにも自分たちだけが

美味しいものにありつくのは申し訳ないから、

なるべく兵士や住人には寛大にと頼まれている」


 その言葉に兵士たちは喜びの表情から

怒りを帯びている。俺が少し融通したとは言え、

兵士三百に更に住人を養って裕福であるはずが無い。

他の領土にも配っているだろうし、

何しろカイヨウの兵士は腹を空かせてきているはずだ。


「バンリもレンも腹を壊さねば良いがな」

「そうで御座いますな。心配です」


 ハンゾウも乗ってきた。そして兵士たちを解き放つ。


「さぁ帰って良いぞ? 出来れば俺から聞いた話を

味方にしてやるが良い。何しろ裏切ったものは

暖かい場所で美味しいものを腹一杯食べて寝ているんだからな。

お前たちは真実を回りに教えてやるだけで良い」


 兵士たちは顔を見合わせ頷き合うと、

そのまま振り返りもせず町へ帰った。


「陛下」

「構わない。そう時間があるわけでもない。気付いたところで

どうしようもないだろう。丘の兵士たちが

帰還する頃には、こちらの部隊も到着するはずだ。

一日でどの程度まで効果があるか分からんが、

元々セイヨウとカイヨウでは住人の性質も違うだろうし、

そんな話が広がればどうなるか見ものではある」

「この後は」

「潜入しよう。どうやらさほど警戒はしてないようだ。

混乱が起こるかどうか、間近で見物させてもらおう」

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