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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
無職のおっさん戦国記

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宵闇の中で

「早いな」


 前方に黒尽くめの集団が馬でこちらに近付いてきた。

まだここは相手の領内。


「陛下、ご無事で!」

「ハンゾウ、早いな。流石だ」

「いえ、いいえ。決してそのような事は御座いませぬ!

御身を危険に晒した事、このハンゾウの不始末。

どうか処分下されますよう」

「冗談を言うな。一等早く駆けつけてくれるような、

真に俺に仕えてくれる人間を処罰してたら俺に味方は居ない」

「陛下……」

「感激しているところ悪いが、寝ずに走り続ける。

ついてこれるか?」

「地獄までお供いたします。我らは陛下のみにお仕えする

臣であれば何処へなりとどのような状況であろうと、

付き従いまする」

「分かった分かった。案外ハンゾウも心配性だ。

ところでロキは?」

「これより伝令を走らせます。半日ほどでここより

中間地点に自軍が着ましょう」

「そうか。ロキも予想外か」

「はっ。私の勘で着ましたので。五つの地点に

一部隊ずつ我が部下を置いております。

一部隊が状況を伝えると、そこから走りというのを

繰り返しますので、一人で駆け抜けるより早く

また襲撃されても絶える事はないようにしております」

「万全だな。ハンゾウありがとう」

「勿体無いお言葉」

「大地の再生が済んで更に忍びの里の先を平定した

暁には、忍びの里に更に重要な役割を持たせる。

その為に給金も領地も弾もう」

「そのような事、身に余る事で御座います!」

「忍びの里は俺に仕えてくれるのだ。

俺も報いたい。よく里の者たちにも伝えてくれ」


 併走しながらハンゾウたちは俺に向かって

頭を深々と下げた。頭を上げた彼らと逃げてきた兵を

纏めるイシズエと共に、日暮れまで走り続けた。

そして夜が来る。人を乗せて走り続けた馬たちも

限界が近い。このままでは足をやられてしまうし、

騎馬兵以外の兵士たちとの差が広がるばかりだ。


「陛下、お一人だけ急がれては」

「いや、兵士あっての俺だ。歩兵で遅いものは

騎馬兵が乗せてやってくれ。馬が疲れたら

部隊に分けて休息をとるように。決して孤立してはならない」

「はっ!」


 兵を連れて逃走というのはそう速度が出るものでもない。

だがそれは追撃している相手にも言える。

何しろうちが一番豊かで畜産にも力を入れている。

馬がそうあるはずも無い。そしてセイヨウにも

馬はそんなに連れて行っていない。

貴重なものだからそうおいそれと置いてもいけないので、

攻略後直ぐに本国に戻させた。

今回はそれが幸いした。


「さてさてどうするか」


 俺はツキゲから降りると、ツキゲに眠るガンレッドを乗せて、

山道を歩く。襲撃するならこういう山道は絶好の機会。

特に開けた道はそう多くは無い。

ここも来る時通った道だ。


「陛下」


 ハンゾウの声に身構える。

ハンゾウの部下たちはハンゾウの合図で散らばる。

俺は後ろに来ている兵士に手を上げて構えを取らせる。

緊張が夜よりも冷たく場と体を包む。


「やぁ」


 その声は聞き覚えのある声だ。

俺はホッとすると手を下ろした。


「随分と早いなぁ」

「嫌味かい?」


 暗くても分かるロキの憎悪による気。

それが揺らめきながら夜の空と繋がってる様に

見えて、兵士たちが悲鳴にも似た声を上げる。


「怖がらせないでくれ夜道で」

「この程度を怖がる程度の親衛隊なら組みなおしだ。

ハンゾウたちは普通だ」

「ハンゾウたちは鍛錬の賜物だよ。

俺だって夜道で急にその状態を見たら驚く」

「嘘付け。君は驚く顔をしてどう対処するかもう考えてる。

で、どうする?」

「そうだな。取り合えず無事の報告と労いの言葉を掛けて

一旦帰って寝たいので落ち着けという」

「軽口が叩けるなら十分だ。ここから先はもう何も無い。

ゆっくり観光しながら帰ってくれ」

「なら一緒に帰ろう」

「駄目だね」

「良いから」

「良くない。オンルリオも見逃してやったんだ。

今回は許せない。あの領地諸共世界から消してやる」


 ロキの赤く光る目に、兵士たちは身を震わせ

逃げたい気持ちを押さえ込んでいた。


「まぁまぁ。ちょっと耳を貸しなさいよロキさん」

「嫌だね。僕ともあろうものが二度も失態なんて。

このままだと僕もオンルリオやイシズエと同じになる」

「……ロキがそうなってるっていうのが俺は怪しいと思うがね。

前もそうだし」

「……どういう事だい?」

「ロキはロキだ。本来後れを取るよりは

寧ろ仕掛ける事の方が多いはずなのに仕掛けられてる。

何よりフリッグさんが降りてきているのが証拠だ」

「なるほどね……」

「神様がそのまま降りてくる事は出来ない。

何より今この大地には魔力が無い。俺が魔法を使わないのも、

結局オーディンの力を借りてるのに等しいからだし」

「そうだった。そういえば前に君の仲間に

オーディンを崇拝する娘が居たね」

「居たな。懐かしい」


 懐かしい話を思い出そうとしたが、

それを遮る様に伝令が来た。

追撃の兵が来たそうだ。恐らくモンテクリス卿に

組した国、ノウセスのフロストの兵士だろう。


「さてどうするか」

「僕に任せてくれよ」

「良いけどセイヨウには手を出さないでくれよ?」

「釣りをするんだろ? 分かったよ今来てる相手の

兵を好きにして良いなら」

「構わない。夜に紛れて何かあっても俺に被害が無いなら

知る由も無い」


 そう言うと、邪悪な笑顔をしながらロキは消えていった。


「伝令ご苦労。隊に戻ってくれ。

皆も休憩を取りつつ本国まで戻るぞ!

着いたら寝れるからな! 頑張ろう!」


 俺の掛け声に答えて動き出す。

休みを挟みながら山を越え、更に湿地帯を越えて日も超えて。

そうこうしているとナルヴィが率いてきた

部隊となんとか合流し、俺たちは帰国した。

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